【第1特集】小児のワクチン 虎の巻

　「小児のワクチン 虎の巻」へようこそ．本特集は，プライマリ・ケア医療従事者としての知識を深め，日々の診療で役立つ実践的な情報をお伝えすることを目的としています．小児期における予防接種は，単なる義務的な医療行為ではなく，子どもたちの健康を守るための確実で効果的な方法です．個人の感染症の予防に加え，集団免疫の形成にも大きな役割を果たすため，予防接種は公衆衛生の礎となる重要な取り組みでもあります．
　本特集では，最新の小児ワクチンに関する情報と，それらを実際のプライマリ・ケアの医療現場でどのように実践に活かすかという視点で内容を構成しました．まず，ワクチンの種類やスケジュール表の読み方，接種間隔や同時接種の考え方など，予防接種に関する基礎知識をしっかりとおさらいし，その後，現場で直面しがちな課題に対する実践的なテクニックを紹介します．たとえば，痛みを最小限に抑える接種の技術や，効率的な接種スケジュールの組み立て方，ワクチンの取り扱いにおける細かい注意点など，診療現場で役立つ情報をお届けします．さらに，キャッチアップ接種の重要性についても焦点を当て，過去に接種を受けられなかった子どもたちが必要なワクチンを適切に補完できる方法の紹介や，抗体検査の考え方，ワクチン接種における副反応の報告方法と接種後の救済措置についても触れています．
　さらに，予防接種を適切に実施するためには，保護者や本人との信頼関係を築くコミュニケーションも欠かせません．保護者が抱く不安や疑問に対して，どのように説明し，理解を深めてもらうか．そのためのコミュニケーションの方法も紹介しました．
　今回もワクチンに関して非常に熱心な素晴らしい先生方に執筆していただきました．この場をお借りして御礼申し上げます．
　小児の予防接種は，その子の健康な成長を支える大切な一歩です．本特集を通じて，みなさまが日々の診療で，より自信をもって安心して，安全に予防接種を実施していただけますと幸いです．そしてともに未来ある子どもたちの健康を守るために協力できれば嬉しく思います．

[編集幹事]
医療法人メファ仁愛会 マイファミリークリニック蒲郡　中山久仁子


【第2特集】軽度認知障害疑いの方を支える

　超高齢社会において認知症患者の数は増え続けており，プライマリ・ケア医が対応すべき疾患群の1つです．一方で，認知機能の低下は老化に伴う自然な変化でもあり，どこから・どこまで介入すべきかは難しいところです．また，大きな問題なく生活を送れている軽度認知障害（mild cognitive impairment：MCI）の患者へ積極的な認知症スクリーニングを行うことは，患者本人や家族への侵襲にもなりかねません．そして，認知症と診断された場合，自動車運転や終活など，考えることは多岐にわたります．本特集では，そのような中でプライマリ・ケア医はどのように患者家族に向かい合い，どのような役割を果たすのか，そして，専門医や多職種とどう連携をとるかを，現場で活躍する先生方に執筆いただきました．
　私が思う認知症診療の目標は，「暮らしの障害である認知症をもちながらも，できるだけ満足いく人生を送れるようにサポートすること」です．そして，それを行うにあたり，かかりつけ医として身近にいて，継続的にかかわるプライマリ・ケア医には多くのメリットがあります．今回の特集が先生方の患者さんのよりよい人生につながれば幸いです．

[編集幹事]
よつばファミリークリニック 藤谷直明