ジェネラリストが
「いま」必要な情報を届ける雑誌
月刊:毎月1日発行 B5判 定価:2,970円(本体2,700円+税10%) ※増刊号・臨時増刊号を除く ISSN 0022-5207
ジェネラリストが
「いま」必要な情報を届ける雑誌
月刊:毎月1日発行 B5判 定価:2,970円(本体2,700円+税10%) ※増刊号・臨時増刊号を除く ISSN 0022-5207
Evidence Update 2026
最新の知見から日々の臨床をアップデートする
ISBN 978-4-525-93037-0
定価
3,300円(本体 3,000円+税10%)
B5判 167頁
- 序文
- 目次
序文
専門知が信用されない時代のEvidence Update
米国で医療に対する非科学的な発言が政府から連発され,日本でもワクチンの効果を否定するような政党が躍進し,非科学的な発言をし続ける国会議員が放置され,さらにはそれに加担する研究者や医者が多く出現し,その研究者の一部が大学教授だったりする.ここで起きていることはいったいどんなことなのか.この状況を作った背景は何か.そんなことを考えながら,この序文を書き始めたのだが,なかなか後が続かない.筆が止まる.止まったところでまた考える.AIにも聞いてみた.すると以下の7つの要因に整理してくれた.
• 情報過多と偽情報
• 専門家と公衆(/市民)の認知的・社会的距離
• 透明性・説明責任・誠実性への疑念
• ポピュリズム・政治的対立の強まり
• 不確実さ・変化する知見
• 教育・リテラシーの問題
• 制度的・構造的問題
本書も専門家による専門知の一部を形成するエビデンス,医学研究についてのもので,上記のうち,「情報過多と偽情報」に対する一つの取り組みである.AIが指摘するまでもなく,専門知が信用されない背景の一つは,インターネットを介した膨大な医療情報へのアクセスが可能になったことだろう.その中にはデマとしか言いようのないものもあるし,悪意あるウソもある.さらには情報の吟味ができない自称専門家や,一般には権威と考えられる立場の大学教授の中にも誤情報を拡散させる者がいる.単に情報が多いというだけでなく,誤った情報と妥当な情報の区別がつきにくいという問題もある.
本書には,その膨大な情報の中から選りすぐりの専門家による選りすぐりの妥当性の高い情報を提供することで,少なくとも専門家間のギャップを埋めようという意図がある.もう一つは「不確実さ・変化する知見」という点だろうか.これまでの研究を踏まえて,新たな研究が何を付け加え,実臨床で何を変えなければいけないかについて検討する材料を提供するというのが本書創刊以来の基本的なコンセプトである.科学というのは,いったん確立されれば変化しないものであるというのが一般的な人の理解かもしれないが,科学の本質はむしろ反対で,訂正されて,変化,進歩していくのが科学である.本書の意味も,一度出版すれば終わりということでなく,その変化に対応して,毎年訂正いくことが重要な部分である.
残りの5つの点についても,本書の立場から書くことはできる.しかし書くことができるだけで,実際の社会に対してどういう効果があるかについては怪しい.それはここで取り上げた2点についても同じである.
読者の皆さんも,専門知が信用されない時代について,本書をもとに考えてほしい.
2025年12月 編者を代表して
名郷 直樹
米国で医療に対する非科学的な発言が政府から連発され,日本でもワクチンの効果を否定するような政党が躍進し,非科学的な発言をし続ける国会議員が放置され,さらにはそれに加担する研究者や医者が多く出現し,その研究者の一部が大学教授だったりする.ここで起きていることはいったいどんなことなのか.この状況を作った背景は何か.そんなことを考えながら,この序文を書き始めたのだが,なかなか後が続かない.筆が止まる.止まったところでまた考える.AIにも聞いてみた.すると以下の7つの要因に整理してくれた.
• 情報過多と偽情報
• 専門家と公衆(/市民)の認知的・社会的距離
• 透明性・説明責任・誠実性への疑念
• ポピュリズム・政治的対立の強まり
• 不確実さ・変化する知見
• 教育・リテラシーの問題
• 制度的・構造的問題
本書も専門家による専門知の一部を形成するエビデンス,医学研究についてのもので,上記のうち,「情報過多と偽情報」に対する一つの取り組みである.AIが指摘するまでもなく,専門知が信用されない背景の一つは,インターネットを介した膨大な医療情報へのアクセスが可能になったことだろう.その中にはデマとしか言いようのないものもあるし,悪意あるウソもある.さらには情報の吟味ができない自称専門家や,一般には権威と考えられる立場の大学教授の中にも誤情報を拡散させる者がいる.単に情報が多いというだけでなく,誤った情報と妥当な情報の区別がつきにくいという問題もある.
本書には,その膨大な情報の中から選りすぐりの専門家による選りすぐりの妥当性の高い情報を提供することで,少なくとも専門家間のギャップを埋めようという意図がある.もう一つは「不確実さ・変化する知見」という点だろうか.これまでの研究を踏まえて,新たな研究が何を付け加え,実臨床で何を変えなければいけないかについて検討する材料を提供するというのが本書創刊以来の基本的なコンセプトである.科学というのは,いったん確立されれば変化しないものであるというのが一般的な人の理解かもしれないが,科学の本質はむしろ反対で,訂正されて,変化,進歩していくのが科学である.本書の意味も,一度出版すれば終わりということでなく,その変化に対応して,毎年訂正いくことが重要な部分である.
残りの5つの点についても,本書の立場から書くことはできる.しかし書くことができるだけで,実際の社会に対してどういう効果があるかについては怪しい.それはここで取り上げた2点についても同じである.
読者の皆さんも,専門知が信用されない時代について,本書をもとに考えてほしい.
2025年12月 編者を代表して
名郷 直樹
目次
1.2025論文ベストテン
2.メタ分析を利用したEBMの実践-バイアスとその利用法-
3.批判的吟味能力を育む指導のコツ
4.スペシャリストが推す必見論文! その見解と考察
① Less is more! 過剰医療を見直す2025年論文5選!
② 2025年病院総合医必読論文Top3
③ 5年に1回のゾレドロネート静注治療が椎体骨折を予防!?
④ 2026年の呼吸器患者に活かされる必読の重要論文
⑤ 症状を測るPCI,出血を減らすLAAO:臨床に落とす前の一呼吸
⑥ ジェネラリストこそ知っておきたい電解質診療アップデート
⑦ プライマリ・ケアにおける消化器疾患の個別化医療:最新エビデンス
⑧ エビデンスに使われないためのエビデンスの読み方・使い方(2026年糖尿病編)
⑨ リウマチ膠原病領域の知っておくべき2025 Update
⑩ エビデンスで切り拓く適正使用の時代:検査・治療・創薬の最前線!
⑪ パンデミックを越えて:新時代のワクチン戦略と臨床へのTIPS
⑫ エビデンスに基づいて「せん妄」を予防・診断・治療する考え方と手法
⑬ アルツハイマー病診断と治療の最新動向:新検査・新剤形登場の光と影
⑭ 燃える脳と守られる脳:急性脳炎,てんかん,グリンパティック系
⑮ 運動療法が,がんの再発を抑え,生存率を向上させるという世界初のランダム化比較試験の結果
⑯ ナルデメジンはオピオイド導入時の便秘だけでなく悪心嘔吐も予防するらしい
⑰ 集中治療RCT 5選
⑱ アナタの救急診療をちょこっとブラッシュアップ! ~リターンズ~
⑲ 妊婦のアセトアミノフェン使用と児の神経発達症のエビデンス
⑳ プライマリ・ケアにおけるAI実装の可能性と課題
㉑ 日常診療を違う角度から見つめ直すためのエビデンス
㉒ 認知症予防のパラダイムシフト
㉓ 低価値医療の実態は? :電子カルテとレセプト,二刀流の分析
㉔ 医師と患者の認識ギャップ:3つの研究が示す課題
㉕ オリエンタル・マジックのすゝめ:鍼灸って本当に効くの? 鍼灸のエビデンス&メカニズムについて
[Column] 論文吟味のポイント2026
① システマティックレビューの批判的吟味
② 薬物有害事象に関するメタ分析の批判的吟味
③ 有効性に関するメタ分析の批判的吟味
④ 観察研究における「When Interventions Work Too Fast」
⑤ 観察研究におけるHealthy user bias
⑥ PROBE法のピットフォール
⑦ 薬物療法の推奨アルゴリズムと論文結果の外的妥当性
2.メタ分析を利用したEBMの実践-バイアスとその利用法-
3.批判的吟味能力を育む指導のコツ
4.スペシャリストが推す必見論文! その見解と考察
① Less is more! 過剰医療を見直す2025年論文5選!
② 2025年病院総合医必読論文Top3
③ 5年に1回のゾレドロネート静注治療が椎体骨折を予防!?
④ 2026年の呼吸器患者に活かされる必読の重要論文
⑤ 症状を測るPCI,出血を減らすLAAO:臨床に落とす前の一呼吸
⑥ ジェネラリストこそ知っておきたい電解質診療アップデート
⑦ プライマリ・ケアにおける消化器疾患の個別化医療:最新エビデンス
⑧ エビデンスに使われないためのエビデンスの読み方・使い方(2026年糖尿病編)
⑨ リウマチ膠原病領域の知っておくべき2025 Update
⑩ エビデンスで切り拓く適正使用の時代:検査・治療・創薬の最前線!
⑪ パンデミックを越えて:新時代のワクチン戦略と臨床へのTIPS
⑫ エビデンスに基づいて「せん妄」を予防・診断・治療する考え方と手法
⑬ アルツハイマー病診断と治療の最新動向:新検査・新剤形登場の光と影
⑭ 燃える脳と守られる脳:急性脳炎,てんかん,グリンパティック系
⑮ 運動療法が,がんの再発を抑え,生存率を向上させるという世界初のランダム化比較試験の結果
⑯ ナルデメジンはオピオイド導入時の便秘だけでなく悪心嘔吐も予防するらしい
⑰ 集中治療RCT 5選
⑱ アナタの救急診療をちょこっとブラッシュアップ! ~リターンズ~
⑲ 妊婦のアセトアミノフェン使用と児の神経発達症のエビデンス
⑳ プライマリ・ケアにおけるAI実装の可能性と課題
㉑ 日常診療を違う角度から見つめ直すためのエビデンス
㉒ 認知症予防のパラダイムシフト
㉓ 低価値医療の実態は? :電子カルテとレセプト,二刀流の分析
㉔ 医師と患者の認識ギャップ:3つの研究が示す課題
㉕ オリエンタル・マジックのすゝめ:鍼灸って本当に効くの? 鍼灸のエビデンス&メカニズムについて
[Column] 論文吟味のポイント2026
① システマティックレビューの批判的吟味
② 薬物有害事象に関するメタ分析の批判的吟味
③ 有効性に関するメタ分析の批判的吟味
④ 観察研究における「When Interventions Work Too Fast」
⑤ 観察研究におけるHealthy user bias
⑥ PROBE法のピットフォール
⑦ 薬物療法の推奨アルゴリズムと論文結果の外的妥当性