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カテゴリー: 小児科学  |  臨床薬学

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子どものくすり便利帳

1版

国立成育医療研究センター手術・集中治療部 統括部長 鈴木康之 監修
東京女子医科大学麻酔科学分野 教授・基幹分野長 長坂安子 監修
一般社団法人医療健康資源開発研究所 代表理事 小嶋 純 編集
一般社団法人医療健康資源開発研究所 主任研究員 米子真記 編集

定価

3,960(本体 3,600円 +税10%)


  • A5判  593頁
  • 2022年8月 発行
  • ISBN 978-4-525-78031-9

小児への処方&服薬指導をしっかりサポート!

わが国で小児に使用される医薬品のうち,およそ7割に小児の用法・用量が記載されていないという報告がある.また,小児に投薬するための剤形が少ないこともあり,臨床の現場では,やむを得ず錠剤を粉砕したり,カプセルを分解することで投与が行われることも多い.しかし,添付文書やインタビューフォームにはそのような(ある種の適応外の)使い方はほとんど提示されておらず,薬の安定性や均一性に問題があるまま投薬されていることも少なくない.
本書は,小児医療に携わるスタッフが,小児に対してできる限り標準的な治療を提供し,子どもへの適切な服薬指導・ケアをサポートするための情報が詰まった書籍である.

【特徴】
・小児によく使われる代表的な292の薬剤を五十音順で検索できる.
・小児への適用がない,または添付文書に小児薬用量の明確な記載がない薬剤についても,著者が各種文献をもとに調査した適用量を掲載.
・「粉砕・脱カプセル」「薬の味」「薬を飲む際の飲料との相性」「実寸大イラスト」といった,小児臨床で役立つ情報が満載.

  • 監修の序
  • 序文
  • 薬剤ごとの主な掲載項目
  • 書評1
  • 書評2
  • 書評3
監修の序
 ヒトはだれもが生まれつきの成人ではなく,子どもの時期を経て成人に成長する.また,成人だけが病気や怪我をするのではなく,先天性の病気や成長の過程で病気や怪我を患い,治療が必要となることがある.しかし,世の中には生まれてきた子どもを育てるための母乳,ミルク,離乳食など成長過程にあった食事やおむつ,年齢や大きさにあった靴や衣類などは存在するのに,子どもの病気に対する薬が十分に揃っているとは言えない現実がある.子どもに使用される医療用医薬品のおよそ7割は子どもへの適応や用法・用量が日本では承認されていない,いわゆる適応外である.
 適応外として使用されている医療用医薬品の添付文書には小児の用法・用量の記載がない.そのため,医師をはじめとした医療従事者は安全で有効かつ適切な小児の用法・用量を知ることができない.成人には有効性と安全性が示されて普通に使える薬が,子どもには安心して投与できないという現状がある.昨年,手術後の悪心・嘔吐を予防および治療する医療用医薬品で注射製剤のオンダンセトロンが承認された.米国や欧州では30 年前から子どもから成人にいたるまで適応承認されているが,日本では長年にわたり使用することができなかった(適応外使用は可能であったが).この承認を得るため,小児医療に携わる日本小児麻酔学会と小児治験ネットワークが厚生労働省に要望を提出し,2022年2月に適応が追加された.
 本書は,小児に使用する主な医療用医薬品の中で,特に経口薬に関する情報を記載した本である.子どもに使用できる薬に限らず,前述したように適応外使用されている医薬品も含めて掲載している.適応外の用法・用量に関しては,主にガイドラインや成書を参考にして記載,あるいは,OTC の用法・用量を参考としたものもある.また,経口薬の服薬に関しては薬の味が重要であることから,味覚認識装置を用いて薬の味を測定し,客観的なデータを提示するとともに,飲食物との飲み合わせについての評価も記載した,今までにない画期的な内容となっている.
 現在小児医療に携わっている医師,看護師,薬剤師,そしてこれからその道に入ろうとする学生や多くの方々すべてに本書の活用を心から推奨する.

2022年6月

鈴木 康之・長坂 安子
序文
 本書は,薬物治療を実践する医療従事者の中でも,特に患児に実際に投薬を行う機会の多い看護師の苦労話をきっかけに,子どもの薬にまつわる問題点を解決する方策の一つとして企画しました.薬物治療は,正しい量の医薬品を体内に取り込むことによって初めて成立する治療法です.大人になれば,錠剤やカプセル剤などを自身で服用することが可能ですが,子どもにはなかなか難しい行為です.子どもの「なぜ薬を飲まなければいけないの?」という疑問も常に付いて回ります.患児とコミュニケーションをとり,理解が得られたと思っても,美味しくない薬を実際に服用するのは難しい場合が多々あります.アイスクリームやココアなど,甘いもので医薬品の苦味を和らげ,どうにか口から薬を摂取することができればよいですが,それでも摂取できない場合は病院で注射や点滴など針を刺して体内に薬を入れることになります.
 このように「薬の味」が薬物治療の効果を左右するものであると私たちは考えさせられました.そこで,「プリンに醤油をかけるとウニの味がする」「麦茶と牛乳に砂糖を加えるとコーヒー牛乳の味になる」といった話を科学的に検証し,実証してきた味覚センサー(味認識装置)を用いて,薬の味を検証してみることにしました.医薬品用に開発されたセンサーを用いて測定し,薬がどのような味なのか,どれだけ苦いものか,まずいものかを,患児の服薬に役立つ情報としてまとめようと思いました.ただし,このセンサーはまだ完全ではなく,測定できない医薬品もあります.そのため,本書では現場の医師,薬剤師,看護師,さらには薬を患児(柚仁ちゃん)に飲ませている親御さんたちからの意見も取り入れて,味の情報を記載した箇所もあります.将来的には,これらの情報を踏まえ,改良型のセンサーが開発されることを願うばかりです.
 先に薬の味の話をしてしまいましたが,薬物治療で大切な用法・用量についても,小児領域では問題を抱えています.わが国の医療用医薬品のうち,小児の用法・用量が添付文書上に明記されているものは,およそ3割程度といわれるほど少なく,まだまだ不十分な状況です.本書では小児の医療現場で使用されている経口薬について,添付文書やインタビューフォームを調査し,小児の用法・用量を記載しています.また,添付文書上に記載がないものについては,わが国の学会等が編纂するガイドライン,米国や欧州の添付文書およびガイドライン,成書を参考にして記載しました.また,一部の薬剤では小児の用法・用量について明確な記載がないにもかかわらず,同一有効成分のOTC に記載がある場合もあり,OTC の用法・用量を参考に記載しているケースもあります.
 以上のことから,当初は看護師や薬剤師向けの本として企画しましたが,医師や医薬品を開発する企業の方々など,子どもの治療に携わる多くの方々に読んでいただき,子どもが薬を服用する際の苦痛を少しでも和らげる一助となれば,本書を出版した意味があると考えております.
 最後に,ご多忙中にもかかわらず,ご執筆いただいた執筆者の方々に深く感謝するとともに,本書刊行に多大なご理解とご協力をいただいた南山堂諸氏に,心より感謝を申し上げます.

2022年6月

小嶋 純・米子 真記
薬剤ごとの主な掲載項目
・用法・用量
・禁忌・注意
・服用時の留意点
・肝・腎機能障害患者への注意点
・有効成分の水への溶解性
・経管投与
・粉砕・脱カプセル
・保管条件
・後発品
・OTC
・味の評価
・薬剤と飲食物との相性
・錠・カプセル等の実寸大イラスト
書評1
鈴木 勉(湘南医療大学薬学部 学部長)

 この度,待望の小児薬用量に関する本が上梓されました.本来であれば,成人に使用される医薬品についてはすべて小児用剤形の開発が望まれます.しかし,開発費と販売後の売り上げとのバランスで採算が取れれば開発される可能性は高くなりますが,そうでない場合は難しくなります.現在,わが国では約3割の医薬品しか小児薬用量が定められていません.なぜ,小児用医薬品の開発はなかなか進まないのでしょうか? その理由として,次の4つが挙げられています.① 新生児から思春期まで多様で幅広い対象にそれぞれに対応する必要がある.② 医薬品の剤形,用量等,各年代に応じたきめ細かな対応が要求される.③ 臨床試験の計画や同意取得等に小児特有の配慮を要する.④ 対象患者数が少なく一人当たりの投与量は少ない.
 多くの医薬品の添付文書には,「安全性及び有効性に関する十分なデータがない」「小児の用法・用量が明記されていない」と記載されています.しかし,実際には臨床での必要性に迫られて,使用せざるを得ません.そのような場合には,成人用量から小児用量を求めることになります.小児用量を求める代表的な式としてAugsberger式があります.Augsberger式[小児用量=(年齢(歳)× 4 + 20)/100×成人量]に従って小児用量を求めると,おおよそ0.5歳:1/5,1 歳:1/4,3 歳:1/3,7.5 歳:1/2,12 歳:2/3,成人:1となります.しかし,仮に同じ年齢でも,体格も状態も大きく異なることが多い小児に対して,薬用量を一律に決めることは難しくなります.
 本書では,小児が薬を飲むときの問題点を取り上げています.まず総論では,薬物の味を評価する味認識装置(味覚センサー)が紹介されており,次に小児製剤のための製剤学として飲みやすい剤形と小児が嫌がる薬の苦味をマスキングする方法について紹介されています.さらに,ゼリーなどの服薬補助食品に関して,服薬補助食品で錠剤やカプセルを服用する場合や粉薬を服用する場合,さらに崩壊性・溶出性への影響についてまとめられています.また,薬が飲めない,飲みづらい時の工夫,飲食物と一緒に薬を飲む時の注意が述べられています.そして,服薬方法として乳首,スポイトや内服用シリンジ,スプーン,コップでの飲み方を紹介し,最後に小児による誤飲事故を紹介すると同時に,誤飲防止方法を示しています.総論に続いて,医薬品各論として,292 の薬剤について,用法・用量,効能・効果,製剤情報,味の評価,薬剤との相性,さらに実物大の製剤イラストが記載されています.味の評価,薬剤との相性や製剤イラストは本書独特のものであり,大いに役立つ内容です.小児医療に関わる医療者や小児医療を学んでいる学生にはぜひ活用していただきたい書籍の一つです.
書評2
横谷 進(福島県立医科大学 ふくしま国際医療科学センター 甲状腺・内分泌センター)

 本書は,「薬が子どもの口に入るまで」に焦点を当てた貴重な本です.私は小児科医として長く働き,また,専門領域では薬の開発にかかわりましたが,本書はそうした「普通の経験」を超えた新鮮な視点で書かれています.
 本書に掲載されているのは,子どもに処方されることが多い292の薬です.医療者にはなじみ深い販売名で50音順に並べられているので引きやすくなっています.同じ有効成分の薬に2 つの販売名がある場合には,互いを参照できるようにそれぞれのページが記載されているので,詳細を比較することもできます.
 医師であれば,薬の有効性と安全性に注目して適切に薬を選び処方することは日常的なことです.小児領域では,残念ながら適応外使用も多く,それに対する配慮も必要ですが,本書では,「効能・効果」と「用法・用量」について薬ごとに丁寧な記載があります.
 しかし,本書の本領はその先にあります.すなわち,処方した薬が本当に子どもの口に入ってくれるのか,という視点から必要な情報が載っています.錠剤やカプセルの実物大の形状,水への溶解性,経管投与の可否,粉砕・脱カプセルの情報は,処方する医師だけでなく服薬指導や与薬をする薬剤師や看護師にとっても重要です.薬の味については,客観的な評価が難しいですが,本書では国内で開発された味認識装置を用いて半定量された結果を表記しています.また,種々の飲料との相性も記載されています.私たち小児科医は,母親から単発的な情報を聞いてほかの親に伝聞で伝えてきましたが,本書からはたくさんの役立つ情報を得ることができます.本書の書名が「便利帳」となっている意味がわかります.
 本書が活用されることを望みます.小児科医は,処方する際に必要な配慮を深めることができます.薬剤師や看護師は,高いレベルで適切な服薬を指導し自ら実施するために,役立てられます.また,製薬会社の開発者が,小児にも合う剤形や規格を開発の当初から配慮するために,考え方を理解する絶好の書籍だと考えます.
書評3
小児の服薬サポートにぴったりの一冊

草川 功(聖路加国際病院小児科 診療教育アドバイザー )

 本書は,わが国における子どもの薬の現状を踏まえ,子どもに使用されている経口薬(適応外のものも含む)について,主に添付文書やガイドライン,成書,あるいはOTC(Over The Counter) を参考として用法・用量を掲載している.また,実際の子どもの服薬行為において非常に重要な意味を持つ薬の味の評価,飲食物との飲み合わせの評価も記載してある.これは,薬の本としては画期的なことであり,経験的に使用している適応外の薬剤の詳細や,薬の味が悪く工夫なしでは子どもが服用できない可能性などを,子どもの処方に関わる多くのスタッフに知らせてくれる.もちろん,適応外使用にはリスクを伴うこともあり,本書に記載してあるから安全ということではないし,味覚は子ども一人ひとりで違い,すべての子どもにあてはまるわけではない.本書を使用する際には注意を要する.
 最後に,本書を読む際には,医薬品各論だけではなく,ぜひ,その前の『子どもとくすり』の項目を熟読してほしい.ここには,子どものくすりに関するすべてを理解するための宝が数多く散りばめられている.
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