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カテゴリー: 基礎薬学  |  臨床薬学

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ファーマシューティカルコミュニケーション

1版

日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会 監修
北里大学薬学部 教授 有田悦子 編集
帝京平成大学薬学部 教授 井手口直子 編集

定価

3,850(本体 3,500円 +税10%)


  • B5判  258頁
  • 2024年4月 発行
  • ISBN 978-4-525-70461-2

薬剤師として求められるコミュニケーションの基礎知識を学び実践でいかす!

日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会監修による薬学生にむけたコミュニケーションの教科書.
薬剤師として患者や他医療従事者とコミュニケーションを図るために必要な知識やスキルなどを解説している.下記の目次は,令和4年度改訂版薬学教育モデル・コア・カリキュラムに対応している.また,患者や他医療従事者とのコミュニケーションを想定した臨床現場での実践例も掲載し,SGDやロールプレイの講義スタイルにも対応できるように編集した.

  • 序文
  • 目次
序文
人類が血縁に基づく小さな集団で行動していた頃,コミュニケーションは自分の存在をサポートしてくれる者と行うことがほとんどであり,それほど複雑ではなかった.しかし,農業革命以降,生活集団の規模が大きくなるにつれ,未知の存在や,敵対する集 団ともコミュニケーションを図る必要性が出現し,やり方を一歩間違えると命に関わるような事象も経験し始めた.効果的なコミュニケーションは,誰もが実践したいものであり,特に大人が社会生活を送る上で,必要不可欠なものとなっている.しかし,その
「正解」が示されたことは未だかつてない.
本書は「“ ファーマシューティカル ” コミュニケーション」を論ずるものである.一般のコミュニケーションとの違いは奈辺にあるのだろうか.薬剤業務の目的は,薬物治療の個別化最適化・有効性および安全性の確保,といえるだろう.そのために行うコミュニケーションは,他の医療職が行うそれとは若干趣が異なる.薬学 6 年制が始まった頃のコミュニケーション教育では,ともかく薬の正確な情報提供と,薬の効果や副作用の聞き取りができればよい,といった誤解に基づいて行われたようだった.初対面の患者とそのような内容の対話を行うのは薬物治療に関する必要性を満たすだろうが,コミュニケーションがうまく成立して得られる満足感とはかなり違うのではないだろうか.
薬学教育が 6 年制になって 20 年近く経過し,薬学教育モデル・コア・カリキュラムは大幅に変化した.社会の変化に対応する薬剤師の活動に力点が置かれ,その中でコミュ ニケーションの重要性が強調されている.患者対応だけでなく,さまざまな人々や社会との接点で行われるコミュニケーションは,多様で複雑なものとならざるを得ない.「正 解=マニュアル」では対応できないコミュニケーションは,ひとりひとりが考え実践すべきものであり,そのためにはまず,自分自身を知ることから始めるべきだろう.その上で人との関わりについて,相手も自分も満足できるようなコミュニケーションのあり方を模索していくことになろう.模索し実践していく段階で,さまざまな学説やそれを実装するためのスキルについて学ぶことが必要となる.
コミュニケーションはスキルの習得で終わるものではないことは,誰もが知っているだろうが,では何がそこに加わるのか.答えはさまざまあるだろうし,どれも正しいと思う.1 つだけ挙げるとすれば,「相手に対する関心」を選びたい.受け入れられたと感じた時,初めてコミュニケーションが成立したと実感できる.それにつながる近道が「相 手への関心」ではないだろうか.本書の執筆者はいずれもコミュニケーションの達人であり,コミュニケーション教育に携わってきた方々である.理論と豊富な実践経験に基づいて書かれた内容は,どこから読み始めても参考になる.第Ⅳ部の実例集は教材としても活用できるだろう.読者諸氏もぜひ,「関心」を持って本書を読んで頂きたい.それ ぞれのニーズに合った知恵が提供されるはずである.

2024年3月
日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会 会長
平井みどり
目次
第Ⅰ部コミュニケーションの主体である自分を理解する
第1章 自分を知る
 1. 自己概念と自己評価
  1.自己とは何か
  2.自己概念
  3.自己評価
  4.自尊感情
 2. 自他理解の重要性
  1.自己一致
  2.フロイトによる構造論
  3.ジョハリの窓
 3. 性格を知る
  1.性格を知る
  2.ヒューリスティックと認知バイアス
  3.自己理解はどのように進むのか

第2章 医療人としての自己
 1. プロフェッショナリズムとメタ認知
  1.プロフェッショナリズム
  2.メタ認知
 2. 自己の確立
  1.エリクソンのライフサイクル論の概要
  2.自己実現
  3.マインドフルネスとセルフ・コンパッション
 3. キャリア
  1.キャリア
  2.スーパーの理論
  3.クランボルツの理論
  4.シュロスバーグの理論
  5.ハンセンの理論
  6.その他の理論

第3章 人との関わり
 1. 対人認知
  1.私たちはどのように他者を認識しているか?
  2.印象形成の古典的モデル
  3.印象形成の過程
  4.印象形成に影響を及ぼす要因
  5.対人認知や印象形成をどのように活かすか
 2. 対人関係に影響を及ぼす心理学的要因
  1.認知の歪み:医療者の共感力を低下させる
  2.認知療法・認知行動療法(CBT):歪んだ認知の確認と再構築
  3.認知バイアス:意思決定で脳が起こす誤作動
  4.認知的斉合性理論:認知システムのホメオスタシス
  5.メタ認知:医療者に求められる第三者の視点
 3. 行動特性を知る
  1.行動特性を知る意義
  2.交流分析
  3.構造分析
  4.各自我状態のコミュニケーションスタイル
  5.基本的な対人態度
  6.やり取り(交流パターン)分析
  7.ゲーム分析

第Ⅱ部コミュニケーションの相手である患者を理解する
第4章 患者主体医療の考え方
 1. 患者の基本的権利
  1.医療者の倫理規範の変遷
  2.生命・医療の倫理原則
  3.治療と臨床研究におけるインフォームド・コンセント
  4.インフォームド・コンセントの三要素
  5.患者の自律を尊重するということ
 2. 医療者─患者の関係性
  1.エマニュエルによる医療者─患者関係
  2.治療の意思決定モデルとコミュニケーション
  3.共同意思決定
  4.最善の意思決定のために
3. EBMとNBM
  1.患者主体の医療とEBM
  2.EBMの実践
  3.患者の物語に寄り添うためのNBM
  4.NBM実践のために医療者に求められること
  5.医療面接におけるNBM
  6.EBMとNBMの統合

第5章 患者心理の理解
 1. 患者になるということ(健常者と病者)
  1.「病むこと」が患者の心身に及ぼす影響
 2. 全人的医療
  1.全人的医療とは
  2.薬剤師の責務と全人的医療
  3.緩和ケアにおける全人的アプローチ
  4.人生の最終段階における医療
 3. 多様性の理解
  1.価値観の多様性
  2.患者におけるレディネス
  3.解釈モデル
  4.ジェンダー・アイデンティティと医療
  5.スティグマの解消に向けて
  6.個人の信条や宗教への理解と対応

第Ⅲ部ファーマシューティカルコミュニケーション
第6章 コミュニケーションの基礎
 1. 言語・非言語コミュニケーション
  1.意思や情報の伝達に必要な要素
  2.コミュニケーションの構成要素
  3.言語・非言語コミュニケーション
 2. コミュニケーションスキルの基礎─積極的傾聴
  1.3つの「きく」と傾聴,アクティブ・リスニング(積極的傾聴)
  2.傾聴の心構え─受容・共感
  3.傾聴の準備─患者が安心して話ができる環境作り
  4.傾聴のスキル─言葉/話を聴く→聴き返す
  5.傾聴のスキル─感情を聴く→聴き返す
 3. コミュニケーションスキルの基礎─質問
  1.質問の意義を理解する
  2.閉じた質問
  3.開かれた質問
  4.効果的な質問をするために
  5.できるだけ避けるべき質問
 4. オンラインのコミュニケーション
  1.薬剤師を取り巻くICT化の流れ
  2.DXとは
  3.コミュニケーションの変化
  4.オンラインコミュニケーションの注意点
  5.さらに未来のコミュニケーション

第7章 患者主体のコミュニケーション
 1. 行動変容を促すコミュニケーション
  1.健康行動理論
  2.健康信念モデル
  3.自己効力感
  4.変化(行動変容)のステージモデル
  5.ヘルスリテラシー
  6.ヘルスリテラシーの種類
  7.ヘルスリテラシーの健康への影響
  8.ヘルスリテラシーを向上させるために
 2. ナラティブコミュニケーション
  1.医療者が患者の物語(ナラティブ)を聴く意味
  2.医療者が患者とコミュニケーションをとる目的
  3.ナラティブをどう聴くか
  4.ナラティブコミュニケーション
  5.「患者の物語」と「医療者の物語」の融合
 3. バッドニュースの伝え方
  1.薬剤師が求められるがん患者への対応
  2.がん患者の心理
  3.がん患者へのコミュニケーションスキル
  4.薬剤師からがん患者へのアプローチ
  5.がん患者の医療者との関係

第8章 多職種連携のコミュニケーション
 1. アサーティブコミュニケーション
  1.アサーション
  2.多職種と関わるためのコミュニケーション能力
 2. リスクコミュニケーション
  1.IOMレポート
  2.ヒューマンエラーの背後にコミュニケーションエラー
  3.認知バイアスとメタ認知
  4.メタ認知能力を発揮し患者安全につなげる
  5.コミュニケーションエラーによる処方への安全管理
  6.Team STEPPSRの活用
  7.医療安全を守るための医療現場でのコミュニケーションとは
 3. チームビルディング
  1.目指すべきチームメンバーの関係性
  2.タックマンモデル
  3.心理的安全性
  4.チームの心理メカニズム
  5.他者(他職種)理解
  6.組織開発

第Ⅳ部事例で考えるファーマシューティカルコミュニケーション
  1.プロフェッショナリズム
  2.インフォームド・コンセント,SDM
  3.全人的医療
  4.多様な価値観
  5.ナラティブコミュニケーション
  6.行動変容
  7.バッドニュース─抗がん剤の副作用に不安を感じている患者への服薬支援─
  8.アサーティブコミュニケーション
  9.リスクコミュニケーション
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