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カテゴリー: 臨床看護学  |  小児科学

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アニメ・映画で学ぶ 子どもの発達と家族のかたち

理論からみえる看護のヒント

1版

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科小児看護学 教授 川名るり 著

定価

2,420(本体 2,200円 +税10%)


  • A5判  127頁
  • 2025年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-50171-6

子どもの成長発達と家族の思いを理解するために

発達理論は,小児看護を実践するうえで,子どもや家族を理解するために欠かすことのできないものです.しかし,普段看護の現場ではあまり使われていない表現や文脈からなる内容を読み解かなければならないため,理論への抵抗感をもってしまう人も少なくありません.そこで,本書では,漫画やアニメ・映画作品のストーリーを通して,そこで描かれる子どもたちの成長発達,学びの過程をもとに発達理論をわかりやすく解説します.
漫画やアニメ・映画好きな方,子ども好きな方はもちろん,子どもは苦手・接したことがないからわからないという方にもおすすめの一冊です.

  • 序文
  • 目次
序文
 小児看護学を学ぶ学生さんや看護師の方々と話をすると,「発達を理解することが難しい」「どう勉強したらいいの?」という声が聞こえてきます.一方,看護教員の方々と話すなかでは,「発達をどう教えたらいいの?」という声も聞こえてきます.
 小児看護学の分野では,子どもとその家族の心情や置かれている状況などを理解するために,また,アセスメントをするために,ひいてはよりよい看護を考えるためにヒントになるとされているさまざまな発達理論があります.ですが,発達理論を理解するためには,普段,看護の現場であまり使われていない表現や文脈からなる内容を読み解かなければなりません.そのために,理論への抵抗感をもってしまう人も少なくありません.理論への抵抗感によって,理論に興味ももてなくなってしまうと,せっかくのヒントを看護に役立てることができなくなってしまうのではないでしょうか.
 そこで本書では,アニメや映画のストーリーなどを活用して発達理論を解説することによって,理論への抵抗感を和らげ,理論をヒントに相手の心情や状況の理解に役立ててもらえるよう工夫しました.身近な作品のストーリーのなかから,発達の理解に有用だと思われるものだけに絞り,ポイントをわかりやすくかみ砕いて説明することに努めています.
 本書には発達理論のほか,諸理論,さまざまな定義や見方,考え方が登場します.身体発育,子どもへの説明,快適な生活空間の歴史の解説なども盛り込んでいます.それらの知識は乳児期,幼児期,学童・思春期にいる子どもや家族を理解するための手助けになるのではないかと思うのです.本書では発達を理解するきっかけづくりを目指しているため, 作品の主題や作者の意図とは違う読み取り方を提示しているかもしれませんが,作品の一つの切り口として解釈していることをご理解いただけますと幸いです.
 本書では,雑誌『整形外科看護』(メディカ出版)に連載した「すべてのナースに届けたい子どもと家族の看護」の内容を更新し,新たに魔法やひみつ道具が登場するファンタジー作品を追加しています.連載は自身の漫画やアニメ好きが高じて,大好きなアルプスの少女ハイジシリーズをもとに発達理論の解説をしたのが始まりでした.漫画やアニメ,映画作品には子どもたちの成長発達,学びの過程が丁寧に描かれています.アルプスの少女ハイジの名場面には,発達理論を理解するうえで有用な描写がなされており,この作品は子どもたちの世界を理解するのにピッタリな教育教材だと思っていたのです.そこで, 身近な作品を通して理論への抵抗感を和らげることで,子どもたちの世界,理論,看護をつなぐことができればと考えました.
 日本では少子社会の現在,小児病棟や外来が縮小されて,大人の病棟や外来にも数多くの子どもが来院するようになりました.混合病棟も増え,看護師として大人の病棟に配属されたとしても,そこにいつ子どもが入院してくるかわかりません.たとえ年に数回であったとしても,子どもの看護に携わる機会が増えるのではないかと思います.また,保育園,特別支援学校や学級,児童養護施設など,地域で過ごす子どもの看護に携わる場も増えています.そのため,看護を学ぶ多くの方々にとって,本書が子どもとその家族を理解しようとする姿勢や,子どもと家族を看護するうえで大切な視点を養うきっかけになれたらと願っています.
 本書の発刊にあたり,作品と理論の魅力を的確に表現しつつ,心温まるやさしいイラストを描いてくださった早瀬衣里子さまにお礼申し上げます.なにより,本書へのご理解を賜り,出版の機会を与えてくださいました南山堂編集部の松村みどりさま,クリヴェッリの重森献さまに心からの感謝を申し上げます.
 漫画やアニメ,映画好きな方,子ども好きな方はもちろんのこと,子どもは苦手,接したことがないからわからないという方も,ぜひ本書の好きなところから開いてみてください.どこからでもかまいません.本書を子どもたちの世界をイメージすることに役立て,理論とみなさまの実践とを結びつけるヒントとして役立てていただければ幸いです.

2025年6月
川名 るり
目次
part1 発達理論から理解する子どもと家族

『アルプスの少女ハイジ』から学ぶ 大人と子どもとのかかわり
・おじいさんとの「愛着形成」――ボウルビィの愛着理論
・ロッテンマイヤーさんと「麦わら帽子」――ウィニコットの情緒発 達理論
・ペーターのおばあさんの「白パン」――ピアジェの認知発達理論
・ペーターの「勤勉性と劣等感」――エリクソンの心理社会的発達理論

『アルプスの少女ハイジ』から学ぶ 療養家族と子どもとのかかわり
・ハイジの「知る権利」――インフォームド・アセント
・クララの「環境と頑張り」――ヴィゴツキーの社会文化的発達理論


part2 作品を通じて理解する子ども・家族の発達と看護

『サザエさん』『クレヨンしんちゃん』から学ぶ 家族と生活
・磯野家と野原家から理解する「家族理論」――核家族,拡大家族
・『オトナ帝国の逆襲』と家族のかたち――親の義務と家族の生活
・磯野家と野原家の住居形態――住空間による家族の理解

『ドラえもん』のび太から学ぶ 学童期の発達過程
・ひみつ道具の教訓――のび太の日常に描かれていること
・のび太の思考と認知――学童期の認知発達
・のび太と仲間の人間関係――学童期の社会性の発達
・のび太たちの世界――子どもたちの理想的な環境と課題
・いやなことから逃げてもいい――ストレスコーピング

『ハリー・ポッター』から学ぶ 思春期の発達過程
・ハリー・ポッターでみる発達区分――思春期の概要
・『賢者の石』から『死の秘宝』までの発育曲線――スキャモンの発育曲線
・ハリー・ポッター2 作品のみどころ――思春期の身体発育の特徴
・ホグワーツ魔法魔術学校での生活――思春期の心理社会的発達の特徴

『名探偵コナン』から学ぶ 子どもと家族の看護における学習
・“弟子入り”による実践参加という学習――レイブとウェンガーの正統的周辺参加論
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