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在宅エマージェンシー

1版

みその生活支援クリニック 院長 小野沢 滋 編

定価

4,950(本体 4,500円 +税10%)


  • B5判  304頁
  • 2025年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-41181-7

救急搬送して終わり にしていませんか?

即搬送?自分で緊急往診?看護師さんに指示を出して様子を見る?
在宅患者さんからの緊急コールに自信をもって対応できていますか?
本書では,疾患ごとの予後やコール頻度,備えておくこと,コール理由ごとに考えるべき病態や搬送基準,初期対応について解説.初期対応については,夜中や休日に相談を受けたときに,実際に往診すべきかどうかをレベル分けして記載しました.
また,在宅では患者さんの予後や今後の過ごし方の希望によっても緊急時に求められる対応は大きく異なってきます.そこで本書ではさらに,病態ごとの在宅での対応を患者さんの予後や希望別に具体的に解説しています.
少しでも自信を持って患者さんに向き合い,患者さんが良い時間を過ごす手助けを行えるようになるための一冊です.

  • 序文
  • 目次
序文
 この本が企画されたのは2018年のことでした.私たちの経験を何とか在宅医療をはじめたばかりの方たちと共有できないか,というのが企画の意図でした.その後,コロナ禍があり,夜間の往診を代行する企業が現れ,在宅医療を取り巻く環境は大きく変貌を遂げました.在宅医療専門のクリニックも驚くほど増え,そういったクリニックで働く医師の多くは在宅医療のトレーニングを受けたことがない人たちです.さらに夜間,休日の臨時訪問の多くは非常勤医師が担うようになりました.また,最近の夜間対応のコールセンターでの非常勤医師の対応について訪問看護師さんからは,なかなか麻薬も使ってもらえず,癌の患者さんが苦しみ抜いてご自宅で亡くなっていくという話も聴きます.
 私は,学生時代に在宅での療養を支える医師になりたいと一念発起し,当時一般的だった大学病院の医局に所属することはせず,初期研修先に亀田総合病院を選択し,その後,同院の在宅医療部の立ち上げを行いました.今から30年以上前のことです.私が在宅医療をはじめた頃のことを考えると,経験不足から,どうしたら良いのかを1例1例悩みながら,周りの専門医に聞きながら対処していたことを思い出しますし,今ならもっとこうしてあげられたのに,という反省しきりの症例も数多く思い出されます.
 それから30年がたち,現在の在宅医療は商業化され,首都圏には「ホスピスもどき」の施設が乱立し,在宅医療の研修を受けることもなく,悩みながら在宅での対処を模索している医師や訪問看護師によって提供されているという現状が垣間見えるのです.
 本書は,そういった現在の在宅医療の担い手である,非常勤の医師や在宅医療のトレーニングを受けていない医師が手に取って,少しでも自信を持って患者さんたちに対峙し,患者さんたちが良い時間を過ごせる手助けを行えるようにと考えて書かれています.
 本書のPartⅠでは,疾患ごとの予後やコール頻度,あらかじめ備えておくべきことなどについて解説しています.また,PartⅡではコール理由ごとに考えるべき病態や搬送基準,初期対応について解説しています.さらに初期対応については,夜中や休日に相談を受けたときに,実際に往診すべきかどうかをレベル分けして記載しました.そしてPartⅢでは,PartⅡで鑑別した病態ごとに在宅での対応を解説しています.在宅医療の患者さんには末期癌の方など,残された時間が本当に短い方たちと,難病や脳血管障害の後遺症を患われている方たちのように,これから良い時間を過ごすことが可能な方たちが混在しています.このように予後が異なる方たちに対する治療方針は一様ではないはずです.また,入院して積極的な治療をしてほしい方,そうではなくできるだけ自宅に居て入院は絶対にしたくない方など治療に対する患者さんたちの考え方も色々です.そのためこのPartⅢでは,予後ごとに対処方針を分けて書いています.また,入院をしたいのか,自宅にいたいのかでも異なった治療になるため,その対処方針も記載しています.そしてこの部分では記載内容についての自信を★印の数で表現しています.
 というのも,本書はそのほとんどが,1人1人に最適な医療を提供するにはどうしたら良いのかを,著者ら個々人の経験に則って書いたものであるからです.ガイドライン等ももちろん重要ですが,それと同時に,悩みながらも現状ではこれがベストではないかと私たちが考える方法を,在宅医療の初心者,もしくは非常勤で在宅医療に関わっている人たちと共有するのが本書の大きな目的だからです.
 本書は私と私の同僚だった医師たちの少ない経験から書かれた本です.将来,さまざまな方の知見がこの本に集まり,もっと良いものになるように祈っています.ですから,本書を手に取られ,もっと良い方法をご存じの方がいらっしゃったら是非ともご一報ください.もし,改訂版が出るときには執筆者に加わっていただければと思います.

2025年 春
小野沢 滋
目次
PartⅠ.総 論

1 疾患ごとに予想される予後は異なる
 ① 悪性腫瘍
 ② 脳血管障害
 ③ 認知症
 ④ 神経難病(筋萎縮性側索硬化症以外)
 ⑤ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)

2 平時の訪問の意義
 ① そのときどきの医療ニーズに対応する
 ② 平時の状態を把握し緊急時の変化をとらえやすくする
 ③ 雑談や命についての会話から患者が望む最期のあり方を共に考える
 COLUMN 経済的問題で頻回に訪問できない患者

3 疾患別コール頻度と内容
 ① 脳血管障害の患者
 ② 悪性腫瘍の患者
 ③ 臓器障害の患者
 ④ 認知症/虚弱高齢者

4 準備しておくべき薬剤・物品
 ① 準備すべき薬剤
 ② 準備すべき物品

5 症状増悪時に備えてあらかじめできること
 ① 疼 痛
 ② 呼吸苦
 ③ 発 熱
 ④ 薬の副作用への予防対策
 ⑤ 置き薬(いわゆるコンフォートセット)について
 COLUMN 患者さんが誤薬をした時にどうしますか?―狭治療域薬剤(NTI drugs)を知ろう―

6 搬送か,臨時訪問するのか,電話対応かの判断について
 ① 初回の症状憎悪の連絡時には訪問することを基本とする
 ② 深夜のコールについては臨時訪問の閾値を下げる
 ③ 患者・家族の不安が強い場合には症状が軽そうであっても訪問する
 ④ 救急搬送は基本的には訪問し患者・家族と話し合った上で要請する
 ⑤ Part Ⅱに記載した「臨時往診より病院受診を優先させるべき病態」については救急搬送を優先する
 ⑥ 電話で対応可能な場合

7 本人・家族の希望に沿った対応についての考え方
 ① 本人・家族の希望を引き出す
 ② 希望に沿うことに倫理的葛藤がある場合
 COLUMN 突然死の可能性のある独居患者

8 入院が必要な場合の対応と入院先の選び方
 ① 在宅医として必要な対応
 ② どのように考えて入院先を探すのか
 COLUMN 自殺企図のある患者

9 病院への搬送時の関連各所への連絡と在宅医としての対応
 ① 搬送先をどのように確保するのか
 ② 搬送先が見つからない場合の対処
 ③ 紹介状について

10 臨時訪問時の診療
 ① 臨時訪問に備えての準備
 ② 臨時訪問時に行うべき診察
 ③ 臨時訪問時の治療方針

11 強い苦痛への対処―オピオイド静脈投与,鎮静―
 ① 静脈路からのオピオイドの使用
 ② 鎮 静


PartⅡ.○○でよばれたら

1 癌性疼痛
 COLUMN 認知症の末期癌患者
2 発 熱
 COLUMN PCR検査,迅速検査キットの解釈
3 呼吸困難
4 胸 痛
5 意識障害
6 腹 痛
7 悪心・嘔吐
8 下痢・下血
9 鼻出血
 COLUMN 抗凝固薬,抗血小板薬の使用について
10 吐 血
11 喀 血
 COLUMN 長期人工呼吸管理で気をつけなければいけないこと
12 尿路出血
13 性器出血
14 下肢浮腫
15 尿量減少(尿が出ない)
16 関節炎
 COLUMN 膠原病を見逃さないようにしよう
17 腰背部痛
 COLUMN 化膿性脊椎炎
18 転 倒
 COLUMN 皮膚裂傷(スキン–テアskin tear)の処置
19 麻 痺
20 尿路カテーテルの事故抜去・閉塞
21 胃瘻の事故抜去・閉塞
22 気管カニューレの事故抜去・閉塞
23 CVポートのトラブル(閉塞)
24 中心静脈カテーテル関連感染症
 COLUMN 抗菌薬ロックantibiotics lock therapy(ALT)


PartⅢ.在宅での対処が難しい病態

1 レスキューだけでは収まらない癌性疼痛
 COLUMN 内服薬が飲めない,と言われたら
2 病的骨折・骨転移
3 悪寒戦慄を伴う高熱(敗血症・菌血症を疑う場合)
4 重症肺炎
5 診断のつかないもしくは遷延する発熱
6 悪性腫瘍に伴う呼吸困難
7 急性心不全・慢性心不全の急性増悪
8 慢性閉塞性肺疾患の増悪
9 間質性肺炎の急性増悪
10 肺血栓塞栓症
11 急性冠症候群
12 大動脈解離・解離性大動脈瘤
13 重症気胸
14 せん妄
15 低血糖
 COLUMN 薬剤性の意識障害に注意しよう
16 肝性脳症
17 高カルシウム血症
18 低ナトリウム血症・高ナトリウム血症
19 胆管炎・胆嚢炎・胆石
20 腹膜炎
21 結腸軸捻転
22 急性膵炎
23 腸閉塞
 COLUMN 在宅患者の悪性腸閉塞―経鼻胃管留置は不要なことがほとんど― 
24 虚血性大腸炎(疼痛を伴う下血)
25 重症感染性下痢
26 下部消化管腫瘍からの出血,憩室出血(疼痛を伴わない下血)
 COLUMN 炎症性腸疾患の急性増悪
27 大量の鼻出血(動脈性を含む)
28 腫瘍からの出血(鼻)
29 消化性潰瘍(急性胃粘膜病変 acute gastric mucosal lesion(AGML)含む)
30 食道静脈溜
31 腫瘍からの出血(上部消化管)
32 腫瘍からの出血(呼吸器)
33 結 核
34 非結核性抗酸菌症
35 尿路感染
36 尿路結石
37 腫瘍からの出血(腎・泌尿器)・膀胱タンポナーデ
38 女性器からの出血(中等量以上)
39 蜂窩織炎・壊死性筋膜炎
40 深部静脈血栓症deep vein thrombosis(DVT)
41 脱 水
42 急性腎障害 acute kidney injury(AKI)
43 前立腺肥大症による尿閉
44 神経因性膀胱
45 結晶性関節炎
46 化膿性関節炎
47 脊椎圧迫骨折
48 転移性脊椎腫瘍による脊椎麻痺
49 馬尾症候群
50 骨 折
51 外傷性脳出血
52 脳血管障害
53 脳腫瘍
54 転移性脳腫瘍
55 脊髄圧迫(対麻痺)
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