免疫不全者の呼吸器感染症
改訂2版
大曲貴夫・上田晃弘・藤田崇宏
岸田直樹・荒岡秀樹・相野田祐介
岡本 耕・的野多加志・鎌田啓佑 編
定価
8,800円(本体 8,000円 +税10%)
- B5判 358頁
- 2026年8月 発行
- ISBN 978-4-525-24822-2
豊富なエビデンスと臨床経験に基づいた信頼できる貴重な情報源
免疫不全者の呼吸器感染症は,日和見感染を含む多岐にわたる病原体が原因となるため,患者のリスクレベル因子(好中球減少,細胞性免疫不全,液性免疫不全)に応じた適切な診断・治療が必要となる.本書は初版より10年以上経過したが未だ類書がない領域の書籍として,最新版へのアップデートを行った.免疫不全者に対する治療は現在,かつてないほどの選択肢が増え大きな転換期を迎えており,今だからこそ知っておくべき網羅的な呼吸器感染症の貴重な情報源として,感染症医・呼吸器内科医の双方が頼れる一冊である.
- 序文
- 目次
序文
本書の改訂にあたり,読者の方々に是非お伝えしたいことがあります.それは,どうやって患者を診る力をつけていくのか,ということです.免疫不全を有する感染症の患者の診療は簡単ではありません.その理由は,病態がわかりにくいこと,臨床像が極めて多彩であること,診療上の判断とくにどのような薬剤を用いて治療をすればよいかの判断が難しいなどです.それでも私たちは診療をせねばなりません.ではどうすればよいのでしょうか?
それは一言でいえば「筋道立てて考えられる,整理された頭脳を作る」ということです.
患者を診るうえではその背景が重要であることを本書では述べています.「免疫不全」は重要な背景ですが,これを筋道立てて整理した形式で頭に入れておかねばなりません.そこで,好中球の問題,細胞性免疫の問題のように免疫不全を臨床の観点から区分し,それぞれごとに感染症の臨床像や問題となる微生物の傾向について整理しました.このように免疫不全ひとつとっても頭のなかに整理しておさめておかないと,自分の頭が混乱します.また,主だった検査の使い方,典型的な画像所見から臨床上の問題をどのように系統的によみとるかについても,「考え方」でまとめてあります.ようは,混沌としている患者の状態,一見わけがわからないように見える患者も,このような「考え方」を導きの糸として駆使していけば,患者の状態に切りこんでその病態を明らかにしていくことができるようになるのです.この「筋道立てて考えられる力」を是非身につけて頂きたいと思います.
もう一つは,患者の実際の像を,自分の頭脳のなかに主体的な実践を通じてつくりあげるということです.その出発点が本書,即ち教科書です.教科書の内容はたしかに初心者にとっては最初は知識でしかないけれど,その知識は学びには絶対に必要なものです.そのうえで自分自身で患者を診て,教科書の知識を実際の患者から得られる事実で試していくなかで,教科書に書かれていることの意味がより「明確に」,「深く」あるいは「立体的」に理解できるようになっていきます.もちろん,全ての疾患の患者を自分の実際の経験として診ることは不可能です.そこで必要なのは,他人の実践から学ぶことです.だから日々の症例カンファレンスは重要であるし,症例報告は必要であるし,学会発表などでわからない点は質問して話しあうことは重要なのです.人はこのように互いに知見を交換することで,より自分の対象を深く理解していくことが出来るようになります.これを意識的に行うことが必要なのです.
本書は,そのような学びに使うものとして編集されました.是非,まずはこのまえがきと,目次を読んだうえで,全体を読みとおして下さい.全体を読むことは重要です.現代の医学教育はシラバス中心になっていて,シラバスに書かれていないことは知らないという医学生や若い医師を見て,大変に心配しています.教科書は文化遺産そのものです.文化遺産はしっかりおさえておく必要があります.この本の使い方はこのまえがきでふれておきました.
2026年6月
大曲貴夫
それは一言でいえば「筋道立てて考えられる,整理された頭脳を作る」ということです.
患者を診るうえではその背景が重要であることを本書では述べています.「免疫不全」は重要な背景ですが,これを筋道立てて整理した形式で頭に入れておかねばなりません.そこで,好中球の問題,細胞性免疫の問題のように免疫不全を臨床の観点から区分し,それぞれごとに感染症の臨床像や問題となる微生物の傾向について整理しました.このように免疫不全ひとつとっても頭のなかに整理しておさめておかないと,自分の頭が混乱します.また,主だった検査の使い方,典型的な画像所見から臨床上の問題をどのように系統的によみとるかについても,「考え方」でまとめてあります.ようは,混沌としている患者の状態,一見わけがわからないように見える患者も,このような「考え方」を導きの糸として駆使していけば,患者の状態に切りこんでその病態を明らかにしていくことができるようになるのです.この「筋道立てて考えられる力」を是非身につけて頂きたいと思います.
もう一つは,患者の実際の像を,自分の頭脳のなかに主体的な実践を通じてつくりあげるということです.その出発点が本書,即ち教科書です.教科書の内容はたしかに初心者にとっては最初は知識でしかないけれど,その知識は学びには絶対に必要なものです.そのうえで自分自身で患者を診て,教科書の知識を実際の患者から得られる事実で試していくなかで,教科書に書かれていることの意味がより「明確に」,「深く」あるいは「立体的」に理解できるようになっていきます.もちろん,全ての疾患の患者を自分の実際の経験として診ることは不可能です.そこで必要なのは,他人の実践から学ぶことです.だから日々の症例カンファレンスは重要であるし,症例報告は必要であるし,学会発表などでわからない点は質問して話しあうことは重要なのです.人はこのように互いに知見を交換することで,より自分の対象を深く理解していくことが出来るようになります.これを意識的に行うことが必要なのです.
本書は,そのような学びに使うものとして編集されました.是非,まずはこのまえがきと,目次を読んだうえで,全体を読みとおして下さい.全体を読むことは重要です.現代の医学教育はシラバス中心になっていて,シラバスに書かれていないことは知らないという医学生や若い医師を見て,大変に心配しています.教科書は文化遺産そのものです.文化遺産はしっかりおさえておく必要があります.この本の使い方はこのまえがきでふれておきました.
2026年6月
大曲貴夫
目次
第Ⅰ章 総論
【感染症診療の原則】
1 免疫不全を診るときの心構え
2 免疫不全の肺感染症を診るときの心構え
【検査】
3 微生物検査(一般細菌検査のピットフォール,抗原検査,核酸検査など)
4 バイオマーカー(βDグルカン,ガラクトマンナン抗原など)
5 胸水,胸膜
6 気管支鏡
【治療】
7 気管支動脈塞栓術
8 外科的治療
第Ⅱ章 免疫不全とは
1 免疫不全とは
【免疫不全を起こす薬剤】
2 薬剤総論
3 ステロイド(グルココルチコイド)
4 その他の免疫抑制薬(DMARDs,CNI,MMF,mTOR)
5 古典的抗がん薬
6 分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬(がん関連)
7 分子標的薬(膠原病関連)
第Ⅲ章 画像からのアプローチ
【画像的特徴】
1 肺CT 読影の基本
2 結節影,粒状影
3 浸潤影
4 空洞
5 すりガラス陰影
【異常影を示す非感染症疾患の病態】
6 免疫関連副作用
7 薬剤性肺障害(ICI以外),放射線肺障害
8 器質化肺炎(OP)
9 造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症
第Ⅳ章 病態からのアプローチ
1 血液悪性腫瘍
2 造血幹細胞移植
3 固形臓器移植後
4 脾機能低下
5 HIV/AIDS
6 膠原病
7 腎障害・肝障害・IBD
8 新生児,低出生体重児
9 原発性免疫不全症候群(先天性免疫異常症)
10 成人発症の後天性・特発性免疫不全(HIV以外)
11 Critically ill
12 肺の解剖学的異常(気管支拡張症を中心に)
第Ⅴ章 各微生物からのアプローチ
【細菌】
1 主に市中肺炎の原因となる細菌による肺炎
2 ノカルジア肺炎
3 緑膿菌肺炎
4 ステノトロホモナス・マルトフィリア肺炎/その他のブドウ糖非発酵菌による肺炎
5 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)肺炎
6 レジオネラ肺炎
【抗酸菌】
7 肺結核
8 肺非結核性抗酸菌症
【真菌】
9 肺アスペルギルス症
10 肺ムーコル症
11 肺カンジダ症
12 ニューモシスチス肺炎
13 肺クリプトコックス症
【ウイルス:ヘルペス】
14 サイトメガロウイルス肺炎
15 単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルスによる肺炎
【ウイルス:呼吸器ウイルス】
16 COVID-19
17 RSウイルスなどの呼吸器ウイルス感染症
18 インフルエンザ肺炎
索引
【感染症診療の原則】
1 免疫不全を診るときの心構え
2 免疫不全の肺感染症を診るときの心構え
【検査】
3 微生物検査(一般細菌検査のピットフォール,抗原検査,核酸検査など)
4 バイオマーカー(βDグルカン,ガラクトマンナン抗原など)
5 胸水,胸膜
6 気管支鏡
【治療】
7 気管支動脈塞栓術
8 外科的治療
第Ⅱ章 免疫不全とは
1 免疫不全とは
【免疫不全を起こす薬剤】
2 薬剤総論
3 ステロイド(グルココルチコイド)
4 その他の免疫抑制薬(DMARDs,CNI,MMF,mTOR)
5 古典的抗がん薬
6 分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬(がん関連)
7 分子標的薬(膠原病関連)
第Ⅲ章 画像からのアプローチ
【画像的特徴】
1 肺CT 読影の基本
2 結節影,粒状影
3 浸潤影
4 空洞
5 すりガラス陰影
【異常影を示す非感染症疾患の病態】
6 免疫関連副作用
7 薬剤性肺障害(ICI以外),放射線肺障害
8 器質化肺炎(OP)
9 造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症
第Ⅳ章 病態からのアプローチ
1 血液悪性腫瘍
2 造血幹細胞移植
3 固形臓器移植後
4 脾機能低下
5 HIV/AIDS
6 膠原病
7 腎障害・肝障害・IBD
8 新生児,低出生体重児
9 原発性免疫不全症候群(先天性免疫異常症)
10 成人発症の後天性・特発性免疫不全(HIV以外)
11 Critically ill
12 肺の解剖学的異常(気管支拡張症を中心に)
第Ⅴ章 各微生物からのアプローチ
【細菌】
1 主に市中肺炎の原因となる細菌による肺炎
2 ノカルジア肺炎
3 緑膿菌肺炎
4 ステノトロホモナス・マルトフィリア肺炎/その他のブドウ糖非発酵菌による肺炎
5 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)肺炎
6 レジオネラ肺炎
【抗酸菌】
7 肺結核
8 肺非結核性抗酸菌症
【真菌】
9 肺アスペルギルス症
10 肺ムーコル症
11 肺カンジダ症
12 ニューモシスチス肺炎
13 肺クリプトコックス症
【ウイルス:ヘルペス】
14 サイトメガロウイルス肺炎
15 単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルスによる肺炎
【ウイルス:呼吸器ウイルス】
16 COVID-19
17 RSウイルスなどの呼吸器ウイルス感染症
18 インフルエンザ肺炎
索引