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症例から学ぶ栄養素欠乏

1版

国立病院機構栃木医療センター内科 矢吹 拓 編

定価

4,400(本体 4,000円 +税10%)


  • B5判  206頁
  • 2023年11月 発行
  • ISBN 978-4-525-23941-1

到来! 栄養素欠乏のパンデミック!?

時は高齢化時代,高齢者ではその食生活や消化吸収,代謝・排泄,服薬などの問題からビタミンや金属などの微量栄養素の欠乏が日常茶飯事になっています.一方,若い世代でも,食べられない,動けない,アルコール多飲などの状態から,多種類の栄養素欠乏をきたしている方も少なくありません.古くて新しいこの問題は,近年の社会の変化に伴って,また違った側面を認識していく必要があります.
月刊誌「治療」で大好評だった特集をフルリメイクし,対象の栄養素を追加,疾患領域ごとの栄養素欠乏の関連も盛り込んで,忘れがちな知識を総まとめにした1冊となっています.

  • 序文
  • 目次
  • 書評
序文
 月刊誌「治療」で「症例から学ぶ栄養素欠乏 小粒だけど大事なあいつ」が発刊されてから2年以上が経過しました.当初企画した時に想像していたよりも,本当に多くの反響をいただき驚くとともに,この課題が多くの方々にとって身近な問題となっていることを実感しています.
 栄養素欠乏症を取り巻く状況は近年さらに厳しくなっています.高齢化に伴い潜在的に栄養素欠乏症を発症するリスクの高い高齢者が多いことに始まり,格差社会や食生活の現代化に伴って,摂取される栄養素の偏りや不足が生じており,世代を超えて栄養素欠乏症のリスクが拡がっているように思います.一方で,栄養素欠乏症のリスクを過度に強調し過ぎることで,私達にとって人生の楽しみともいえる「食事」を,医療の観点だけで見るのもまたバランスを欠いた対応かもしれません.栄養素欠乏症を考える際には,医療と生活どちらへの視点も必要だと思います.
 本書では,各栄養素欠乏症についての詳細を,第一線で活躍している総合診療医に執筆してもらいました.また,各専門領域の先生に,専門領域から診た栄養素欠乏症という切り口でも執筆していただきました.栄養素欠乏症に関連する症状や徴候は,診療科を選ばず,さまざまな入口を通して皆様の目の前に現れる可能性があります.本書をきっかけに,診療科によらず栄養素欠乏症についての造詣を深めていただき,皆さまの診療の一助となれば幸いです.また,医師以外の職種の方にとっても,栄養素欠乏は身近な健康問題であり,日々の食事や栄養摂取についても参考にしていただければうれしいです.

2023年10月
矢吹 拓
目次
Ⅰ章 総 論
 栄養素欠乏を考える

Ⅱ章 症例クイズ
 点眼薬がヒントに
 人形の目じゃないじゃない
 下痢が止まらないんです?
 その貧血……どんな貧血?
 解決しない古代病
 手足がしびれてしびれて……
 胃の切除は要チェック!
 血が止まりません!
 玄関先から動けない
 貧血を指摘されました
 高齢女性にまさかの性器ヘルペスがッッ!?
 ふらふらは何のせい?
 これは普通の心不全?
 意識障害の原因は?
 低カルシウム血症ですね……では終わらない?

Ⅲ章 Pitfall に気をつけたい,微量元素・ビタミン欠乏
 ビタミン A
 ビタミン B 1
 ビタミン B 3
 ビタミン B 12
 ビタミン C
 ビタミン D
 ビタミン E
 ビタミン K
 葉 酸
 鉄
 亜 鉛
 銅
 セレン
 カルシウム
 マグネシウム

Ⅳ章 栄養素欠乏×疾患領域
 循環器疾患
 消化器疾患
 神経疾患
 血液疾患
 内分泌・代謝疾患
 小児(乳幼児)疾患
 産婦人科疾患
 皮膚疾患
 眼疾患
 外科疾患

Column
 動物とビタミン
 サプリメントとは?
 ビタミン発見の歴史
 大航海時代と壊血病
 脚気と高木兼寛
 フレイルとビタミン ―InCHIANTI研究―
 ビタミン名称の順番や歴史
 ビタミンの名前と呼び方
 ヨウ素と地域性
 風邪とビタミン・微量元素
 口腔機能と栄養
 ビタミンC神話はいかに? ―敗血症に対する高用量療法―
 ビタミン採血と保険適用
書評
吉田英人(訪問診療クリニックやまがた)

心がざわつき,心が救われる本

 『症例から学ぶ栄養素欠乏』.正直,本の題名はよくある感じのものだが,総合診療のトップランナー矢吹 拓先生が編集とあれば,いやが上にも期待が高まる.表紙のイラストからは,「コーヒーでも飲みながら,小粒で大事な栄養素をゆっくり味わってね」といった感じが伝わってくる.煎りたて・挽きたてのコーヒーを用意してページをゆっくりめくってみよう.
 目次をみると,まずCatchyな題名の症例クイズに目が行く.15 症例が見開き2 ページにまとめられていて,テンポよく読み進めることができる.そしてビタミン・ミネラルそれぞれの詳しい解説ページにすぐに飛ぶことができるので,理解が深まっていく.しかし,本を読み進めていくうちに,私の心はざわついた.「今まで出会ってきた患者のなかに,診断できていなかった栄養素欠乏の方は,結構いたのかもしれない……」.アルコール多飲や胃がん術後の患者であれば栄養素欠乏を疑うことは比較的容易である.しかし,とくに虚弱高齢患者にどこまで栄養素欠乏を考慮すべきなのか,非特異的な症状に対してどこまで検査すべきなのか,私の心はさらにざわついた.
 と,ここで第一章の総論部分を読み忘れていたことに気づいた.栄養素欠乏の疫学や影響を及ぼす薬剤がまとまっているが,最後に書かれているのが「栄養素欠乏のジレンマ」.診断の難しさ(臨床症状と測定値の解釈,診断的治療の必要性),栄養素不足と欠乏症の違い,高齢者の正常化を目指す努力とジレンマ(高齢者にとっての最適値はわかっていない,医療化することへの懸念)について矢吹先生がやさしく語りかけてくれる. 読み終わったあと,私の心は救われた.
 さまざまな医学書が出版されている昨今,年に数冊「心がざわつき,心が救われる」本に出会うことがある.今回紹介した『症例から学ぶ栄養素欠乏』は,そんな一冊になった.ぜひこの本を手にとって小粒で大事な栄養素から心を揺さぶられてほしい.
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