小児期発症全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2026
1版
一般社団法人 日本リウマチ学会 編
厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野免疫・アレルギー疾患政策研究「移行期JIAを中心としたリウマチ性疾患における患者の層別化に基づいた生物学的製剤等の適正使用に資する研究」班 編
定価
4,620円(本体 4,200円 +税10%)
- B5判 212頁
- 2026年5月 発行
- ISBN 978-4-525-23601-4
薬物療法から移行期医療まで.小児から成人へ切れ目ない診療を支える必携ガイドライン
小児SLE診療における標準的指針がついに刊行.
本書は,疫学・診断・最新治療を網羅した「総論」と、臨床現場の疑問に答える16の「クリニカルクエスチョン(CQ)」で構成.ループス腎炎やNPSLEへの高度なアプローチはもちろん,薬物治療の適応からQOLを左右する症状まで,日常診療の疑問に最新情報で回答.
さらに,小児科から成人リウマチ科へのスムーズな連携を目指す「移行期医療」も解説.小児から成人期まで患者さんの生涯を見据えた診療に欠かせない,全リウマチ医・小児科医必携のガイドラインです.
- 序文
- 目次
全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な全身性自己免疫疾患です.指定難病医療費受給者数は約6万人で,発症年齢は20~30歳代が多く,男女比は1:9~10です.皮膚,関節,心,腎,漿膜,神経,血管など全身の臓器を侵し,多彩な臨床症候を呈します.治療は1955年以降グルココルチコイドが中心に位置しましたが,非特異的薬剤にすぎず,安全性にも大きな問題があります.しかし,最近では新規免疫抑制薬や分子標的薬の登場によって,治療戦略は飛躍的な変革の途上にあります.さらに,CAR-T細胞療法により自己免疫異常をリセットし,疾患治癒を目指すことも論じられています.
一方,小児期発症SLEは,長期の医療継続を要する症例が多く,心血管病変関連死亡率が高いとされます.また,グルココルチコイドによる成長障害,小児期からの代謝異常,白内障,緑内障などは深刻な問題です.さらに,成人と異なり,承認された治療薬は少なく,発表された診療エビデンスに乏しい状況です.だからこそ,診療ガイドラインに沿った適切な診療が不可欠です.本ガイドラインでは,前半で疫学,臨床,評価,管理,制度などについて総論的に概説し,後半で大変な苦労の下に16のクリニカルクエッションを立てて,システマティックレビューを行い,Delphi法を用いた専門家討議を経て,エビデンスの評価・統合後に推奨文が作成されています.
一般的に,小児期発症の全身性自己免疫疾患では,特徴的な症状が出揃わずに鑑別診断が困難な症例,承認薬剤が限定されるためグルココルチコイドの使用を強要される症例,成人への移行に伴う管理の問題など,多くの課題を抱えています.一方,2022年にBrownらによって発表された小児期発症のmonogenic lupusのように,成人のSLEにおける病態の考え方や治療開発にも影響を及ぼすこともあります.いずれにしても,小児期発症SLE診療の実践に広く役立てて,疾患を正しく理解し,様々な問題点に対して的確に対処することを目指して戴ければと期待します.それによって,多くの患者およびご家族の皆様の心の支えに繋がればと心から祈念申し上げます.
2026年3月
一般社団法人日本リウマチ学会 理事長/
産業医科大学医学部分子標的治療内科学特別講座 特別教授
田中良哉
小児期発症全身性エリテマトーデス診療ガイドライン作成組織
発刊にあたって
序
小児期発症全身性エリテマトーデス診療ガイドラインを有効に活用するために
診療アルゴリズム
[総 論]
1.小児SLEの疫学と予後
(1)SLEの有病率と発生率
(2)年齢と性比
(3)予後・合併症
2.小児SLEの病態
(1)SLEの病態
(2)遺伝的素因
(3)環境的要因
(4)アポトーシス細胞のクリアランス障害
(5)NETosis
(6)Ⅰ型インターフェロン
(7)T細胞
(8)B細胞
(9)自己抗体
3.小児SLEの臨床症状と検査所見
A.臨床症状と検査所見概要
(1)臨床症状
(2)検査所見
B.皮膚症状
(1)疫学 ―小児SLEにおける皮膚症状の頻度
(2)皮膚症状の分類
C.ループス腎炎と検査所見
(1)小児のループス腎炎の疫学
(2)ループス腎炎の発生機序
(3)ループス腎炎の診断 ―腎生検
(4)サイレントループス腎炎
(5)ループス腎炎の検査所見
D.若年性神経精神ループスと検査所見
(1)臨床症状
(2)病態生理
(3)自己抗体
(4)診 断
4.小児SLEの合併症
(1)抗リン脂質抗体症候群
(2)血栓性微小血管症
(3)マクロファージ活性化症候群
5.小児SLEの診断
(1)ACR-1997分類基準
(2)SLICC-2012分類基準
(3)小児SLE診断の手引き
(4)EULAR/ACR-2019分類基準
6.小児SLEの活動性評価
(1)SLEDAI
(2)SLEDAI-2K
(3)SELENA-SLEDAI
(4)BILAG index
(5)SLEDAS
(6)Easy-BILAG
7.小児SLEの治療
A.治療概要
(1)小児SLEの治療と予後の変遷
(2)治療原則と目標
(3)SLEの病態と治療の考え方
(4)治療戦略
(5)疾患活動性の評価
(6)日常生活上の注意点
B.皮膚症状に対する治療
(1)小児SLEの皮膚症状の治療
C.ループス腎炎に対する治療
(1)ループス腎炎の組織分類と疾患活動性評価
(2)治 療
(3)保険適用
(4)治療薬の使用説明
(5)副作用対策 ―支持薬(併用薬)の使用方法
(6)感染症への対策
D.神経精神ループスに対する治療
(1)神経精神ループスの治療
(2)治療薬
(3)その他
8.薬剤関連合併症と長期管理
A.ヒドロキシクロロキン
(1)作用機序
(2)薬物動態
(3)投与量
(4)有効性
(5)安全性
B.グルココルチコイド・免疫抑制薬
(1)グルココルチコイド
(2)ヒドロキシクロロキン
(3)シクロホスファミド
(4)ミコフェノール酸モフェチル
(5)アザチオプリン
(6)ミゾリビン
(7)カルシニューリン阻害薬(タクロリムス/シクロスポリンA)
(8)メトトレキサート
(9)ベリムマブ
(10)リツキシマブ
(11)アニフロルマブ
(12)免疫抑制治療における注意
9.新生児エリテマトーデス
(1)疫 学
(2)病 因
(3)臨床症状
(4)治 療
(5)予 後
10.薬剤誘発性ループス
(1)原因薬剤
(2)病 因
(3)臨床像
(4)診 断
(5)治療と予後
11.移行期SLEへの対応
A.小児科医の立場から
(1)移行期SLE患者の特徴
(2)移行の準備と注意点
(3)移行後の問題
B.成人リウマチ医の立場から
(1)小児特有の病態,疾患概念の理解
(2)身体的,精神的に発達途上にある小児に対する適時適確な対応
(3)移行医療におけるサポート体制
C.SLEと妊娠
(1)妊娠中のSLE再燃と妊娠予後について
(2)妊娠中のSLE治療について
(3)妊娠許容基準
12.公費補助制度
(1)乳幼児・子ども医療費助成
(2)小児慢性特定疾病対策
(3)難病対策
(4)その他
[各 論]
CQ 1 小児SLEの関節炎/関節症に対する治療はどのように行うか?
CQ 2 小児SLEの漿膜炎(心膜炎・胸膜炎・腹膜炎)に対する治療はどのように行うか?
CQ 3 小児SLEの肺病変(間質性肺疾患・肺高血圧症・肺動脈塞栓症・肺胞出血)に対する治療はどのように行うか?
CQ 4 小児SLEの心筋炎に対する治療はどのように行うか?
CQ 5 小児SLEの腸炎・膀胱炎に対する治療はどのように行うか?
CQ 6 小児SLEの自己免疫性溶血性貧血に対する治療はどのように行うか?
CQ 7 小児SLEの自己免疫性血小板減少症に対する治療はどのように行うか?
CQ 8 小児SLEの血栓性微小血管症に対する治療はどのように行うか?
CQ 9 小児SLEにみられる皮膚エリテマトーデスの治療としてグルココルチコイド外用薬は推奨されるか?
CQ 10 小児SLEにみられる皮膚エリテマトーデスの治療としてタクロリムス外用薬は推奨されるか?
CQ 11 小児SLEにみられる皮膚エリテマトーデスの治療としてヒドロキシクロロキン内服は推奨されるか?
CQ 12 小児SLEにみられる皮膚エリテマトーデスの治療としてグルココルチコイド内服は推奨されるか?
CQ 13 小児SLE患者において,腎生検を行うことが推奨されるか?
CQ 14 小児のISN/RPS分類ClassⅢ/Ⅳループス腎炎への寛解導入療法として,シクロホスファミド間欠静注療法あるいはミコフェノール酸モフェチルに加えて,グルココルチコイドパルス療法はグルココルチコイド内服に比べ有効か?
CQ 15 小児のISN/RPS分類ClassⅢ/Ⅳループス腎炎への寛解維持療法として,必要最小限のグルココルチコイドに加えたミコフェノール酸モフェチルの投与はアザチオプリンと比較して有効か?
CQ 16 小児の神経精神ループスに対する寛解導入療法として,グルココルチコイドとシクロホスファミドをどのように使用するか?
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