臨床プレ/プロバイオティクス学入門
1版
一般社団法人日本プロバイオティクス学会 理事長 古賀泰裕 著
九州大学大学院医学研究院心身医学 教授 須藤信行 著
定価
3,960円(本体 3,600円 +税10%)
- B5判 144頁
- 2022年8月 発行
- ISBN 978-4-525-16121-7
プレバイオティクス・プロバイオティクスは医薬品に代わりうるか?
プレバイオティクス(PRE), プロバイオティクス(PRO)の基礎から, その発展における重要な知見をまとめた, 本分野初のテキストとも呼べる一冊!
消化器疾患を中心に, アレルギー, 精神疾患までを含み, 疾患の予防・治療における有効性, 病態生理, PRO/PREの作用機序などをわかりやすく解説.
- 刊行によせて
- 序文
- 目次
刊行によせて
古賀泰裕 氏と須藤信行 氏による「臨床プレ/プロバイオティクス学入門」がこの度刊行された.
プレバイオティクス,プロバイオティクス,腸内細菌叢,脳腸相関およびこれらに関係する疾患としてヘリコバクター・ピロリ感染症,機能性ディスペプシア,過敏性腸症候群,慢性便秘症などの消化器疾患,歯周病,ウイルス感染症,アレルギー,肥満と摂食障害,精神疾患を取り上げ,プレ/プロバイオティクスの応用について書かれている.素晴らしい本が出版された.
著者の二人について紹介したい.古賀氏は九州大学生体防御医学研究所免疫学部門から東海大学に移り,無菌動物を用いて腸内細菌やプロバイオティクスの研究をはじめた.1998年から消化器プロバイオティクス研究会を立ち上げ,消化器プロバイオティクスシンポジウムを毎年開催してきた.研究会は2002年には日本プロバイオティクス学会となり,2005年からプロバイオティクスシンポジウムを開催している.
須藤氏は九州大学医学部心身医学から大学院生として九州大学生体防御医学研究所免疫学部門の助教授であった古賀氏のもとで,肥満細胞の基礎研究で学位を取得した.古賀氏が東海大学に移った後,無菌マウスを使って腸内細菌とアレルギーとの関連や情動について共同研究を行ってきた.九州大学大学院医学研究院心身医学の教授に就任後,脳腸相関や腸内細菌叢と摂食障害との関連について精力的に共同研究を行い,これらの研究を一流誌に発表してきている.このように,二人は腸内細菌や脳腸相関,これらに関係する疾患およびプレ/プロバイオティクスについて長年にわたり研究を続けてきている.
本書は二人の研究者が行ってきた研究に基づいて最新の知見を交えて大変わかりやすく書かれている.各章はコンパクトにまとめられて読みやすく,どの章から読んでも理解できる.腸内細菌やプレバイオティクス,プロバイオティクスに関心のある研究者,学生や一般の方にも大変有益な内容である.多くの皆様に強くお勧めしたい.
2022年6月
中村学園大学学長/前 九州大学総長
久保千春
プレバイオティクス,プロバイオティクス,腸内細菌叢,脳腸相関およびこれらに関係する疾患としてヘリコバクター・ピロリ感染症,機能性ディスペプシア,過敏性腸症候群,慢性便秘症などの消化器疾患,歯周病,ウイルス感染症,アレルギー,肥満と摂食障害,精神疾患を取り上げ,プレ/プロバイオティクスの応用について書かれている.素晴らしい本が出版された.
著者の二人について紹介したい.古賀氏は九州大学生体防御医学研究所免疫学部門から東海大学に移り,無菌動物を用いて腸内細菌やプロバイオティクスの研究をはじめた.1998年から消化器プロバイオティクス研究会を立ち上げ,消化器プロバイオティクスシンポジウムを毎年開催してきた.研究会は2002年には日本プロバイオティクス学会となり,2005年からプロバイオティクスシンポジウムを開催している.
須藤氏は九州大学医学部心身医学から大学院生として九州大学生体防御医学研究所免疫学部門の助教授であった古賀氏のもとで,肥満細胞の基礎研究で学位を取得した.古賀氏が東海大学に移った後,無菌マウスを使って腸内細菌とアレルギーとの関連や情動について共同研究を行ってきた.九州大学大学院医学研究院心身医学の教授に就任後,脳腸相関や腸内細菌叢と摂食障害との関連について精力的に共同研究を行い,これらの研究を一流誌に発表してきている.このように,二人は腸内細菌や脳腸相関,これらに関係する疾患およびプレ/プロバイオティクスについて長年にわたり研究を続けてきている.
本書は二人の研究者が行ってきた研究に基づいて最新の知見を交えて大変わかりやすく書かれている.各章はコンパクトにまとめられて読みやすく,どの章から読んでも理解できる.腸内細菌やプレバイオティクス,プロバイオティクスに関心のある研究者,学生や一般の方にも大変有益な内容である.多くの皆様に強くお勧めしたい.
2022年6月
中村学園大学学長/前 九州大学総長
久保千春
序文
著者らは,従来,ともすれば民間の保健薬とみなされてきたプレバイオティクス(PRE)/プロバイオティクス(PRO)が,今後は医薬品に匹敵する役割を担うべきとの期待を持っていた.そこで,これからの基礎研究,そして臨床試験が目指すべき分野および内容を示唆したいとの意図で本書の刊行を試みた.
本書では最新の知見を網羅したレビューというよりも,これまでのPRE/PROの発展に寄与した核心的知見を重視した教科書的記述を試みた.執筆にあたっては,PRE/PROの応用が有望視される疾患の病態生理および治療法の現状を解説することで,なぜPRE/PROが適応となるのか,さらには疾患のどのステージあるいは重症度においてPRE/PROの有効性が期待されるかについて,発表文献および著者らの検討をもとに記述を進めた.総論の「プロバイオティクス」,「プレバイオティクス」,「口腔,消化管常在細菌群集」,「脳腸相関」の各章は,これらを十分に理解するための基盤になるであろう.
PRE/PROについての基礎的学習を意図される学生,今後PRE/PROの研究開発あるいは臨床応用に携わろうとする医学,歯学,薬学,栄養学,農学などの関係者にぜひ本書をお薦めしたい.
2022年6月
古賀泰裕
須藤信行
本書では最新の知見を網羅したレビューというよりも,これまでのPRE/PROの発展に寄与した核心的知見を重視した教科書的記述を試みた.執筆にあたっては,PRE/PROの応用が有望視される疾患の病態生理および治療法の現状を解説することで,なぜPRE/PROが適応となるのか,さらには疾患のどのステージあるいは重症度においてPRE/PROの有効性が期待されるかについて,発表文献および著者らの検討をもとに記述を進めた.総論の「プロバイオティクス」,「プレバイオティクス」,「口腔,消化管常在細菌群集」,「脳腸相関」の各章は,これらを十分に理解するための基盤になるであろう.
PRE/PROについての基礎的学習を意図される学生,今後PRE/PROの研究開発あるいは臨床応用に携わろうとする医学,歯学,薬学,栄養学,農学などの関係者にぜひ本書をお薦めしたい.
2022年6月
古賀泰裕
須藤信行
目次
総 論
1 プロバイオティクス
1-1 プロバイオティクス研究の背景
1-2 プロバイオティクスの歴史と定義
1-3 プロバイオティクスとして使用されている菌種とその有効成分
1-4 プロバイオティクスの腸管への定住
1-5 プロバイオティクスの生体への作用機序
1-6 プロバイオティクスの免疫系に及ぼす効果
1-7 プロバイオティクスの副作用
1-8 糞便細菌群集移植
2 プレバイオティクス
2-1 プロバイオティクスの限界
2-2 プレバイオティクスの定義
2-3 プレバイオティクスとして用いられる成分
1●オリゴ糖
2●発酵性食物繊維および非炭水化物成分
2-4 重合度の異なるオリゴ糖のプレバイオティクス効果の比較
2-5 短鎖脂肪酸
3 口腔,消化管常在細菌群集
3-1 細菌DNAを用いた細菌群集構造および機能解析
3-2 メタ16S解析の実際
3-3 細菌の分類
3-4 口腔,消化管常在細菌群集
1●Luminal microbiota
2●Mucosa-associated microbiota
3-5 腸内有益菌であるビフィズス菌および酪酸産生菌
1●ビフィズス菌
2●酪酸産生菌
4 脳腸相関 須藤信行
4-1 ストレス反応
4-2 ストレスから腸内細菌への影響
1●ストレスによる腸内細菌叢の変化
2●界間シグナル伝達
4-3 腸内細菌からストレス応答への影響
4-4 腸内細菌と行動特性
4-5 微生物による行動変容
4-6 腸内細菌?腸?脳軸:関連する物質と作用機序
1●神経系経路:迷走神経,脊髄求心性神経を介する経路
2●短鎖脂肪酸
3●トリプトファンとその代謝物
4●最近のトピックス
各 論
5 ヘリコバクター・ピロリ感染症
5-1 ヘリコバクター・ピロリ感染症の概要
5-2 ピロリ菌感染に対するプロバイオティクス
5-3 LG21によるピロリ菌抑制機序
5-4 ピロリ菌感染症に対するプロバイオティクスの治療効果
1●プロバイオティクスの単独投与
2●ピロリ菌除菌療法とプロバイオティクスの併用
5-5 除菌後胃がん
5-6 胃液中のリポ多糖活性と除菌後胃がんへの関与
6 機能性ディスペプシア
6-1 機能性ディスペプシアの概要
6-2 ポストピロリ菌時代の胃
6-3 プロバイオティクスの胃粘膜に及ぼす生理的効果
6-4 プロバイオティクスの機能性ディスペプシアに対する治療効果
6-5 プロバイオティクスによる機能性ディスペプシア改善の機序
1●胃酸分泌および胃運動機能
2●胃および腸内細菌群集
7 過敏性腸症候群
7-1 過敏性腸症候群の診断基準と病型分類
7-2 過敏性腸症候群の病態に関与する因子
1●遺伝的要因
2●感染症
3●粘膜の透過性亢進と微小炎症
4●ストレス
7-3 過敏性腸症候群患者における腸内細菌叢の異常
7-4 腸内細菌への介入による過敏性腸症候群の治療
1●抗菌薬
2●プロバイオティクス
3●糞便細菌群集移植 77
7-5 プロバイオティクスの作用機序
1●抗炎症作用
2●内臓知覚過敏の軽減
8 慢性便秘症
8-1 慢性便秘症の病態
8-2 腸内細菌からみた慢性便秘症
8-3 慢性便秘症の治療
1●生活習慣の改善
2●薬物療法
1)浸透圧性下剤
2)刺激性下剤
3)その他
3●プロバイオティクスおよびプレバイオティクス
9 歯周病
9-1 歯周病の病態
9-2 歯周病の歯科治療
9-3 歯周病に対するプロバイオティクスの応用
1●LS1を用いた歯周病コントロール
2●プロバイオティクスの歯周病予防および治療に関する報告
9-4 歯周病の全身への影響
1●歯周病と糖尿病の関連
2●歯周病の膵がん発症リスクへの影響
10 ウイルス感染症 古賀泰裕
10-1 ウイルスの特徴および感染
10-2 ウイルス感染防御
10-3 新型コロナウイルス感染症における腸内細菌群集
1●新型コロナウイルス感染症における腸内細菌群集の変化
2●腸内細菌群集のディスバイオシスのサイトカインストームへの関与
11 アレルギー
11-1 アレルギー発症の環境因子としての衛生仮説
11-2 腸内細菌叢のアレルギー発症に及ぼす影響
1●動物実験系での検討
2●アトピー性皮膚炎の発症に及ぼす腸内細菌群集の影響
11-3 プロバイオティクスおよびプレバイオティクスのアトピー性皮膚炎に対する効果
1●プロバイオティクスの効果
2●プレバイオティクスの効果
3●酪酸産生菌の活性化によるアレルギー改善
12 肥満と摂食障害
12-1 肥満症
1●肥満の定義と疫学
2●肥満に関連する要因
1)肥満関連遺伝子
2)慢性炎症
3)摂食調節機構
4)腸内細菌
12-2 腸内細菌による体重・成長の制御
12-3 摂食障害:神経性やせ症を中心に
1●摂食障害の定義と病型
2●神経性やせ症の腸内細菌叢
3●神経性やせ症の血清メタボローム分析
4●神経性やせ症の血清尿毒症関連物質
5●人工菌叢マウスによる検討
6●神経性やせ症の病態形成におけるディスバイオシスの役割
13 腸内細菌と精神疾患
13-1 健常者の精神健康に及ぼす影響
13-2 腸内細菌と精神疾患
1●自閉スペクトラム症
2●うつ病・うつ状態
13-3 腸内細菌と精神疾患:関連する物質と作用機序2
1●トリプトファンとその代謝物
2●γ-アミノ酪酸
3●生理活性アミン:モノアミン
13-4 腸内細菌と精神疾患:脳イメージング研究から
13-5 腸内細菌と精神的回復力:レジリエンス