本書の初版を2010年に出版してから13年が経過しました．お陰様で看護学生にとって必要な内容に絞った疫学・保健統計の入門書として高い評価を頂戴し，教科書として採用される看護教育機関も年々増加しています．保健師コースの学生さんにとっては保健師国家試験対策の必携の書としても利用されています．実際に毎年の保健師国家試験では疫学・保健統計の分野から複数の問題が出題されますが，これまでに本書の内容から大きく外れた出題はありませんでした．
　今改訂では，本文中にある保健統計データを最新のものに差し替え，読者がさらに理解しやすいように解説の一部を追加修正しました．ただし，講義の教科書として使用される場合の一貫性を考えて，全体の骨子は保持しておりますので，継続して使用して頂けますなら幸いです．章末の練習問題には第109回（2023年）保健師国家試験までの問題を追加し，年代の古い問題で内容が重複するものは整理しました．その結果，約20年分の保健師国家試験の過去問題から厳選した良問にオリジナル問題を加えて，合計172題の問題を掲載することができました．
　さて，前回の改訂3版を出版してから5年の間，新型コロナウイルスの感染拡大により社会様式が大きく変化しました．看護学生の皆さんも，遠隔授業が始まり，病院や保健所での実習も制限されるなど過去にないさまざまな経験をされたと思います．医療現場では，医療体制の崩壊が危惧されるほどの混乱を極めながら，患者さんの生命を守るために医療従事者の献身的な努力が続けられました．保健所では感染状況の把握，患者さんや濃厚接触者への対応，ワクチン接種や感染予防の指導など，休む時間もないほどの膨大な業務に振り回される毎日でした．
　皆さんはコロナ・パンデミックに立ち向かう現場の様子を報道などで見聞きして，看護師や保健師という仕事の責任と尊さを再認識したに違いありません．皆さんが本書を用いて疫学・保健統計の知識を身に付け，卒業後に看護師や保健師として地域住人の健康管理のために自信を持って活躍されることを期待しています．
　最後に，初版の企画出版から今日まで御支援してくださいました南山堂編集部の吉野琴絵氏に深く感謝いたします．

2023年7月
西南女学院大学 学長　
浅野嘉延