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カテゴリー: 臨床薬学

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地域包括ケアで薬立つ 4 ELEMENTS実践ガイド

【付録Web版特典付き】

1版

京都大学医学部附属病院 薬剤部 編

定価

3,520(本体 3,200円 +税10%)


  • B5判  276頁
  • 2020年3月 発行
  • ISBN 978-4-525-78351-8

これからの時代の鍵となる4つのノウハウ総まとめ!

わが国では地域包括ケアシステムの構築が進んでいる.その中で,1.院外処方せんへの検査値印字,2.トレーシングレポート,3.院外処方せんにおける疑義照会簡素化プロトコル,4.分割調剤は情報共有等の医療連携や地域包括ケアに活用され,注目を集めている.本書では,各運用方法を示すとともに,いかに活用すればよいか,実例を交えて解説した.

  • 目次
  • 序文
  • 書評
目次
■1st Element:処方箋検査値
1 処方箋における検査値の意義
2 システム運用開始までの道筋と運用開始後の管理
3 保険薬局における検査値情報の収集とその活用
4 薬学的管理に活かす処方箋検査値のチェックポイント
 ①赤血球・ヘモグロビン
 ②白血球
 ③血小板
 ④プロトロンビン時間−国際標準比
 ⑤肝機能
 ⑥腎機能
 ⑦カリウム
 ⑧クレアチンキナーゼ
 ⑨糖化ヘモグロビン
 ⑩C-反応性タンパク
 ⑪がんに関連した検査・症状

■2nd Element:トレーシングレポート&薬剤師外来
1 トレーシングレポートの役割と経緯
2 システム運用開始までの道筋と運用開始後の管理
3 トレーシングレポートを書くコツ
4 地域包括ケアの始まりにおける薬剤師の関わり-退院指導と薬剤師外来-
5 薬剤師外来とトレーシングレポートシステムによる病診薬連携の実際
 ①吸入指導外来
 ②がんサポート外来
 ③外来化学療法
 ④がんホルモン療法
 ⑤服薬支援(HIV)
 ⑥肝炎治療
 ⑦妊娠・母乳とお薬相談室
 ⑧術前外来
 ⑨ポリファーマシー

■3rd Element:院外処方箋における疑義照会簡素化プロトコル
1 プロトコルを運用する前の知っておくべき事柄
2 システム運用開始までの道筋と運用開始後の管理
3 疑義照会簡素化プロトコルの実践例

■4th Element:分割調剤
1 分割調剤の役割と展望
2 分割調剤の基礎と基盤
3 医師の指示による分割調剤の実践例

■付録:病院—保険薬局 双方向で活用できるトレーシングレポート用資料
●服薬情報提供書(トレーシングレポート)のひな形
 ①服薬情報提供書(トレーシングレポート):通常
 ②服薬情報提供書(トレーシングレポート):残薬調整用
●吸入指導用資料
 ①吸入薬説明手順・吸入評価項目表の記入方法
 ②吸入薬説明手順・吸入評価項目表
 ・pMDI(エアロチャンバープラス使用)
 ・pMDI(オープンマウス法)
 ・pMDI(クローズドマウス法)
 ・エリプタ(レルベア、エンクラッセ、アノーロ、アニュイティ、テリルジー)
 ・タービュヘイラー(シムビコート、オーキシスなど)
 ・ディスカス(アドエアなど)
 ・ハンディヘラー(スピリーバ)
 ・ブリーズヘラー(オンブレス、シーブリ、ウルティブロ)
 ・メプチンクリックヘラー
 ・スイングヘラー(メプチン)
 ・レスピマット(スピリーバ、スピオルト)
 ・ジェヌエア(エクリラ)
 ・アズマネックスツイストヘラー
 ③吸入指導依頼せん:病院用
 ④吸入指導依頼せん:保険薬局用
 ⑤吸入指導評価表:保険薬局用
●抗がん薬説明書
 ①アフィニトール
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書(神経内分泌腫瘍)
 ・薬剤説明書(腎細胞がん)
 ・薬剤説明書(乳がん)
 ②ヴォトリエント
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書
 ③オプジーボ
 ・薬剤説明書
 ・免疫チェックポイント阻害薬治療に関する問診票
 ④キイトルーダ
 ・薬剤説明書
 ⑤ジオトリフ
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書
 ・排便状況自己評価シート
 ⑥スチバーガ
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書
 ⑦タグリッソ
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書
 ⑧タルセバ
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書
 ⑨レンビマ
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書(肝細胞がん)
 ・薬剤説明書(甲状腺がん)
 ⑩ロンサーフ
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・初回服薬指導内容情報提供書
 ・薬剤説明書
●分割調剤に関する資料
 ①関節リウマチ治療における分割調剤
 ・分割調剤に関するご案内
 ・分割調剤に関する担当医宛ての文書
 ・分割調剤に関する保険薬局宛ての文書
 ・分割調剤に関する保険薬局宛ての文書(メール用)
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
 ・関節リウマチ患者経過観察シート
 ②乳腺術後ホルモン治療における分割調剤
 ・分割調剤に関するご案内
 ・分割調剤に関する保険薬局宛ての文書
 ・服薬情報提供書(トレーシングレポート)
序文
 わが国の医療制度は,医療費増大とそれに見合う負担の増大に国民の合意は得られず,制度疲労が顕著となってきた.そのため,医療費全体が経済と両立・持続可能な制度へと再設計することが迫られている.そこで,高度経済成長時代を支えてきた団塊の世代(800万人)が75歳以上となる2025年を目安として,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的とし,可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるような地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)へ移行しようとしている.これを「治す医療」から「治し支える医療」への転換ともいう.一方,人口の高齢化に伴って悪性腫瘍の患者数の増加が想定されているが,国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計および患者調査によれば,今後大幅に入院患者数が増加するのは,肺炎,心疾患,脳血管障害であり,悪性腫瘍の患者はそれほどには増えないことが示されている(厚生労働省中央社会保険医療協議会資料:入院医療その2,平成29年3月15日).これら医療システムの改革や入院患者の変化に対応するためには,入院医療の構造を大きく変更していかなければならなく,医療機関における病床の機能的再編(高度急性期,急性期,回復期,長期療養,介護施設,居住系,在宅など)が必要となる.この医療機関の再編成には,機能的に分化した医療施設(在宅を含む)間での患者情報の共有化の推進が大きな課題となる.
 薬剤師がこれまで通りに調剤業務に大半の時間を費やし,患者の臨床的アウトカムの向上に寄与することが証明できなかったらどうなるであろうか? 産業技術の革新は目を見張るものがあり,調剤業務にもこの四半世紀で随分と新しい機器が導入された.海外に目を向けると,米国では院外処方せんに対応するベンダーマシンがすでに実用化されつつある.現実的ではないと反論されるかもしれないが,諸外国より調剤機器技術が進んでいるわが国では,法的な状況さえ整えば「無人調剤機」の実用化には技術的な課題は少ないであろう.すなわち,われわれ薬剤師の業務が「患者」および「生活者」中心に向かわなければ,近未来的には薬剤師の仕事の多くは「マシン」あるいは「テクニシャン」に置き換わってしまう.薬剤師は「今」,どう変わるべきであろうか? 言うまでもなく,「対物業務」から「対人業務」への変換が必要である.
 薬剤師の業務は,「調剤行為を含む医薬品を供給する専門職」から,「患者のさまざまな病態における医薬品の使用を包括的に管理し,薬物療法の安全性・有効性を保障する専門職」へと変貌しつつある.これは,前述の「対物業務」から「対人業務」への転換と等しい.しかし,この地位を確立するためには,薬剤師の介入によって医療の質が向上するというエビデンスを導き出すことが肝要である.つまり,病院内にあっては病棟薬剤業務の実施によって,薬物療法の安全性,副作用の早期発見・早期対処,さらにはより効果的な薬物療法につながっているような業務展開とエビデンスを提示する必要がある.この役割は,保険薬局薬剤師においても同様である.地域包括ケアシステムの構築に関連して,厚生労働省は『患者のための薬局ビジョン』(2015年10月)で,保険薬局薬剤師に対して,調剤という「対物業務」から患者への服薬指導などの「対人業務」への変換を求めている.そのため,医療機関との合意のもとで情報共有を積極的に行うことも求めている.また,調剤医療費などが全医療費の中でも大きなものになってきている状況で,患者・国民に負担を求めるには,保険調剤業務の必要性,価値およびコストに関するデータやエビデンスも求められている.例えば,保険(院外)調剤の方が,院内調剤に比べて,薬物療法の服薬遵守率や安全性の向上に寄与しているというエビデンスを示すことである.さらに,社会の健康に対するニーズから,保険薬局薬剤師にあっては住民の健康相談者あるいは管理者的な側面(健康サポート)が求められる.プライマリケア,セルフメディケーションおよび在宅(居宅)医療への積極的な関与も求められる.
 では,今後大きく変わろうとする医療体制の中での薬剤師の役割はどうあるべきで,何を具体的に行えばよいであろうか? 求められる今後の医療には,患者あるいは生活者の自立とQOL 向上へ向けたさまざまな取り組みが必要であり,それには多職種の連携(チーム医療)が必要である.つまり,薬剤師にあってはチーム医療の中で薬学的な介入を行うことによって医療の質の向上が計られることが重要である.医療機関の機能が再編されていく中で,それぞれの薬剤師が連携する相手も異なってくる.同一施設内での多職種,他の医療機関(薬剤師),保険薬局(かかりつけ薬局,健康サポート薬局),介護施設(介護職員),患者家族……と多岐にわたる.しかし,最も基本的なことはこれらチームを担う人たちといかに患者情報を共有していくかであり,そのためのツールが必要である.例えば,がん治療は外来治療にシフトし,分子標的薬などの経口抗がん薬が増加しており,患者の服薬状況の把握や副作用が発現した場合の対応など,病院スタッフが対処しにくい場面が増えている.このような場合,保険薬局薬剤師が積極的に関与することによって,化学療法の有効性と安全性が担保できる.つまり,保険薬局薬剤師がチーム医療の一員として期待される.しかし,チーム医療を行うには「患者情報の共有」が必要で,病院内における情報共有の媒体はカルテであるが,外来患者を対象とした場合は有効な情報共有の媒体が必要となる.このような外来患者の情報を共有できる媒体には,お薬手帳,双方向のトレーシングレポートとそれらを結びつける疑義照会簡素化のプロトコルなどが考えられる.しかし考えてみれば,最も効率かつ効果的な情報共有の媒体は処方せんであり,記載できる内容は限定されるが,情報は100%共有できる.
 本書では,この医療と介護の一体改革に活躍する「近未来の薬剤師」を見据えて,薬剤師が有効利用すべきツール,4 つのエレメント①検査値,②トレーシングレポート,③疑義照会簡素化のプロトコル,④分割調剤について実例を交えてわかりやすく解説する.

2020年1月
松原和夫
書評
変革していく医療の中で薬剤師が行うべき必須業務の実践用解説書

田﨑嘉一(旭川医科大学病院薬剤部 薬剤部長・教授)

 本書は,京都大学医学部附属病院(京大病院)の薬剤部長・教授である松原和夫先生が,旭川医科大学病院時代も含めた20年余りかけて保険薬局との地域連携の中で実践し成果を上げてきた4つの業務(処方箋検査値表示,トレーシングレポート&薬剤師外来,院外処方箋における疑義照会簡素化のプロトコル,分割調剤)を地域包括ケアで役立つ4エレメント(要素)として紹介しています.京大病院でこれらの業務を実践してきた薬剤師が執筆していますので,非常に理解しやすい内容になっています.すなわち,それぞれのエレメントの意義および役割から運用までの道筋,運用後の管理のノウハウ,そして実際に実施していく上での注意点や実践例が,これまでに積み重ねた経験を踏まえて解説されています.今後の医療を担うすべての薬剤師に役立つ内容となっています.
 本書には,付録「病院―保険薬局 双方向で活用できるトレーシングレポート用資料」として,服薬情報提供書(トレーシングレポート)や,近年複雑化している吸入薬の指導用資料,抗がん薬の説明書も掲載されており,これからこの業務を始めていく上でも,内容がイメージしやすく,どのようなポイントに注意すればよいかという点もわかります.医療に貢献したい,役に立ちたいと思う薬剤師にはぜひ読んでいただき,本書を参考に4エレメントを実践し,薬剤師業務のエビデンス構築にも生かしていただきたいと思います.
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