「クスリ早見帖ブック」は，医療現場における切実な課題を解決するために誕生し，その後，その価値を広げ，多様な 分野の皆様に活用されるようになりました．
本書が解決を目指した最も大きな課題は，医療現場で患者さんが服用した市販薬の成分を正確に特定することが困難であるという点です．多くの患者さんが市販薬の製品名を覚えていないため，医師はその成分が不明なまま診療を進めざるを得ないことがありました．このような医療現場の「悩み」が，本書を創刊する出発点となりました．
創刊後，本書の活用範囲は大きく広がり，現在では主に以下の皆様にご利用いただいております．１）医療現場の臨床医の方々：患者さんの服用した市販薬の成分を特定するために不可欠なツールとして役立てられています．特に精神科（薬物依存症），救急救命科（急性中毒），脳神経内科（頭痛外来）では，市販薬のリスクを研究するための基礎情報としても活用され，その研究成果は学会報告や論文，各種報告書などでも発表されています．２）販売現場の薬剤師・医薬品登録販売者の方々：薬局やドラッグストアで，一般の生活者が市販薬を適切に選び，安全に使用できるよう，最新の市販薬製品情報や各製品の特徴を学習するために活用されています．３）教育現場の学生や教員の方々：薬学部の学生が市販薬製品の特徴や固有の成分情報を学ぶための資料として利用されています．また，昨今社会問題となっている市販薬の乱用に対応するため，学校薬剤師や保健室の先生方からもニーズが高まっています．
このように，本書は「様々な現場の皆様が抱える悩みに応え，日々の業務や学習を力強く支えること」を役割として います．2018年の初版から，コロナ禍に対応した改訂2版を経て，今回の改訂3版「クスリ早見帖ブック 市販薬1000」では内容をすべて見直し，さらに使いやすさを追求して発刊されました．改訂3版では以下の点を改善しました． 改訂3版の主な特長と改善点は，１）携帯性の向上：現場での持ち運びやすさを考え，A4からB5サイズに変更しました．２）掲載品目の大幅増加：市販薬を，前版の730品目から1000品目に大幅に増加しました．そして，新たに「内服口臭除去薬」，「プロトンポンプ阻害薬」，「内用痔疾用薬」，「蟯虫駆除薬」，「内臓脂肪減少薬」，「泌尿器用薬」，「洗眼薬」，「虫よけ薬」，「シラミ駆除用薬」の9つの製品カテゴリーを追加しました．３）詳細な製品情報の追加：「効能・効果」や「剤形」，「添加物（一部にアレルゲンとなる物質があるため追加）」など，専門的な判断に必要な詳細情報を加えました．４）成分グループマーク導入：製品に含まれる有効成分がどのグループに属するかを示すマークです．これにより，利用者は製品間の違いを容易に確認できるほか，類似の製品探しも簡単になります．これは，製品カテゴリーすべてを一目で見渡せる「目次」，製品のパッケージ画像を添えてブランド別に並べた「ブランド索引」，そして「製品名索引」 といった検索機能と連携し，利用者の製品検索性を大幅に向上させます．５）デジタル連携による追加情報の提供：QRコードからWEBサイト「市販薬アップデート」にアクセスしていただけます．初版から提供していた添付文書や新製品情報に加え，2025年から研究用ID（市販薬製品識別子）も用意しました．

2025年7月
株式会社プラメドプラス　平　憲二