オンコロジークリニカルガイド
消化器癌化学療法
改訂6版
愛知県がんセンター薬物療法部 部長 室 圭 編
神奈川県立がんセンター消化器内科 部長 上野 誠 編
定価
6,930円(本体 6,300円 +税10%)
- B5判 404頁
- 2025年11月 発行
- ISBN 978-4-525-42056-7
過去の臨床試験から最新情報含めて、消化器癌化学療法のすべてを網羅!
消化器癌のKey Drugsやエビデンスレベルの高い化学療法の最新知見を,コンパクトに解説.また,国内外の大規模臨床試験や米国臨床腫瘍学会ASCO,欧州臨床腫瘍学会などの情報もアップデート.各項目のポイントを箇条書きで解説してあるため,簡潔でわかりやすい.消化器癌領域のプロフェッショナルを目指す医療従事者に必携の書.
- 序文
- 目次
- 書評
序文
本書「オンコロジークリニカルガイド消化器癌化学療法」は,2007年の初版以来,消化器癌化学療法に携わる医師や医療スタッフにとって必携の成書として発展を続けてきました.歴代の版は,主要臨床試験とエビデンスの丁寧な解説,理解しやすい記述,さらには作用機序など基礎的な部分までを網羅する点で高く評価され,教育的価値の極めて大きな書籍であり続けてきました.
私は日頃から若い医師に対して,化学療法を学ぶにはその歴史を知ることが不可欠であると伝えてきました.レビュー論文執筆や文献整理を通じて治療の歩みを振り返ることは,現在の標準治療が過去の多くの臨床試験の積み重ねの上に成り立っていることを体感する最良の機会となります.その意味において,本書は臨床試験の歴史的背景とエビデンスを体系的に理解できる稀有な書であり,これまでも新版の刊行を望む声が若手医師から数多く寄せられてきました.
今回の第6版では,従来の食道・胃・大腸癌に加え,膵・胆道癌,肝細胞癌,GIST,神経内分泌腫瘍(NET/NEC)など広範な疾患を網羅し,近年の臨床試験や新規薬剤の成果を盛り込みました.現場で診療にあたる若手から中堅の医師を中心に執筆をお願いし,より実践的でup-to-dateな内容に仕上がったと確信しております.
本改訂にあたり,神奈川県立がんセンター消化器内科部長の上野誠先生には共同編者としてご尽力いただきました.上野先生の深い臨床知見と鋭い視点が本書の完成度を大きく高めてくださいました.また,編集作業においては,神奈川県立がんセンターの小林 智先生,福島泰斗先生,愛知県がんセンターの成田有季哉先生,榊田智喜先生に多大なご協力をいただきました.ここに深く感謝申し上げます.
さいごに,長年にわたり粘り強く本書の編集を支えてくださった株式会社南山堂の村井恵美さん,そしてご指導くださった大村健二先生に厚く御礼申し上げます.そして,若き日より消化器癌化学療法の基礎を学ばせていただき,今もなお敬愛してやまない故久保田哲朗先生に,この第6版を捧げます.
2025年10月
編者を代表して
室 圭
私は日頃から若い医師に対して,化学療法を学ぶにはその歴史を知ることが不可欠であると伝えてきました.レビュー論文執筆や文献整理を通じて治療の歩みを振り返ることは,現在の標準治療が過去の多くの臨床試験の積み重ねの上に成り立っていることを体感する最良の機会となります.その意味において,本書は臨床試験の歴史的背景とエビデンスを体系的に理解できる稀有な書であり,これまでも新版の刊行を望む声が若手医師から数多く寄せられてきました.
今回の第6版では,従来の食道・胃・大腸癌に加え,膵・胆道癌,肝細胞癌,GIST,神経内分泌腫瘍(NET/NEC)など広範な疾患を網羅し,近年の臨床試験や新規薬剤の成果を盛り込みました.現場で診療にあたる若手から中堅の医師を中心に執筆をお願いし,より実践的でup-to-dateな内容に仕上がったと確信しております.
本改訂にあたり,神奈川県立がんセンター消化器内科部長の上野誠先生には共同編者としてご尽力いただきました.上野先生の深い臨床知見と鋭い視点が本書の完成度を大きく高めてくださいました.また,編集作業においては,神奈川県立がんセンターの小林 智先生,福島泰斗先生,愛知県がんセンターの成田有季哉先生,榊田智喜先生に多大なご協力をいただきました.ここに深く感謝申し上げます.
さいごに,長年にわたり粘り強く本書の編集を支えてくださった株式会社南山堂の村井恵美さん,そしてご指導くださった大村健二先生に厚く御礼申し上げます.そして,若き日より消化器癌化学療法の基礎を学ばせていただき,今もなお敬愛してやまない故久保田哲朗先生に,この第6版を捧げます.
2025年10月
編者を代表して
室 圭
目次
第 I 章 臨床試験と実地臨床の考え方
■臨床試験結果を臨床にどのように外挿するべきか?
第 II 章 消化器癌化学療法のKey Drugs
1 フッ化ピリミジン製剤〔5-FU(+LV),UFT(+LV),S-1,カペシタビン〕
2 プラチナ製剤(シスプラチン,オキサリプラチン,ネダプラチン)
3 トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン,エトポシド)…
4 タキサン系製剤(パクリタキセル,ドセタキセル,nab-パクリタキセル)
5 ゲムシタビン
6 トリフルリジン/チピラシル
7 抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ,ラムシルマブ,アフリベルセプト)
8 抗EGFR抗体薬(セツキシマブ,パニツムマブ)
9 抗HER2薬(トラスツズマブ,ペルツズマブ,トラスツズマブ+ペルツズマブ,トラスツズマブ デルクステカン)
10 オラパリブ
11 ゾルベツキシマブ
12 NET治療薬(エベロリムス,ソマトスタチンアナログ,ストレプトゾシン)
13 ペプチド受容体放射線核種療法薬(PRRT薬)
14 免疫チェックポイント阻害薬
15 抗VEGF系薬を含むチロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ,スニチニブ,ソラフェニブ,レゴラフェニブ,レンバチニブ,エルロチニブ,フルキンチニブ,ピミテスピブ,カボザンチニブ)
16 RAF/MEK阻害薬(エンコラフェニブ,ビニメチニブ,ダブラフェニブ,トラメチニブ)
17 FGFR阻害薬(ペミガチニブ,フチバチニブ,タスルグラチニブ)
第 III 章 消化器癌のレジメン
食道 1 5-FU/シスプラチン(+ニボルマブ,ペムブロリズマブ,チスレリズマブ)
食道 2 5-FU/ネダプラチン
食道 3 5-FU/シスプラチン/ドセタキセル(DCF療法)
食道 4 FOLFOX療法(+ニボルマブ)
食道 5 ニボルマブ
食道 6 パクリタキセル,ドセタキセル
胃 7 S-1/シスプラチン,カペシタビン/シスプラチン(+トラスツズマブ)
胃 8 S-1/オキサリプラチン(SOX療法)(+トラスツズマブ,ニボルマブ/ペムブロリズマブ,ゾルベツキシマブ)
胃 9 カペシタビン/オキサリプラチン(+トラスツズマブ,ニボルマブ/ペムブロリズマブ,ゾルベツキシマブ,トラスツズマブ/ペムブロリズマブ)
胃 10 FOLFOX療法(+ニボルマブ/ペムブロリズマブ,ゾルベツキシマブ,トラスツズマブ)
胃 11 S-1/ドセタキセル,ドセタキセル
胃 12 パクリタキセル(or nab-パクリタキセル)/ラムシルマブ
胃 13 イリノテカン
胃 14 ニボルマブ
胃 15 トリフルリジン/チピラシル
胃 16 トラスツズマブ デルクステカン
大腸 17 FOLFOX療法
大腸 18 FOLFIRI療法(+パニツムマブ,セツキシマブ,ベバシズマブ,ラムシルマブ,アフリベルセプト)
大腸 19 FOLFOXIRI ±ベバシズマブ療法
大腸 20 イリノテカン/S-1(±ベバシズマブ)
大腸 21 S-1/オキサリプラチン(SOX療法)(+ベバシズマブ)
大腸 22 カペシタビン/オキサリプラチン(+ベバシズマブ)
大腸 23 カペシタビン/イリノテカン(+ベバシズマブ)
大腸 24 トリフルリジン/チピラシル+ベバシズマブ
大腸 25 レゴラフェニブ,フルキンチニブ
胆道 26 セツキシマブ/エンコラフェニブ/ビニメチニブ
胆道 27 ゲムシタビン/シスプラチン
胆道 28 ゲムシタビン/シスプラチン+デュルバルマブ,ペムブロリズマブ47
胆道 29 ゲムシタビン/シスプラチン/S-1
膵臓 30 FOLFIRINOX療法
膵臓 31 ゲムシタビン/nab-パクリタキセル
膵臓 32 ゲムシタビン/S-1
膵臓 33 ナノリポソーマルイリノテカン/5-FU/LV
肝臓 34 アテゾリズマブ/ベバシズマブ
肝臓 35 デュルバルマブ/トレメリムマブ
肝臓 36 ラムシルマブ
MSI-H固形癌 TMB-H固形癌 MSI-H大腸癌 37 ペムブロリズマブ,ニボルマブ,ニボルマブ/イピリムマブ
NEC 38 シスプラチン/エトポシド,カルボプラチン/エトポシド
NEC 39 シスプラチン/イリノテカン
肛門 40 5-FU/マイトマイシン+放射線
腹膜中皮腫 41 シスプラチン/ペメトレキセド,ニボルマブ
第IV章 消化器癌化学療法の大規模臨床試験
1 食道癌一次治療
2 食道癌化学放射線療法
3 食道癌二次治療以降
4 胃癌一次治療 HER2陽性
5 胃癌一次治療 HER2陰性
6 胃癌二次治療
7 胃癌三次治療以降
8 大腸癌一次治療 抗EGFR抗体薬
9 大腸癌一次治療 VEGF阻害薬
10 大腸癌一次治療
11 大腸癌二次治療
12 大腸癌三次治療以降
13 胆道癌一次治療
14 胆道癌二次治療
15 膵癌一次治療
16 膵癌二次治療
17 肝臓癌一次治療
18 肝臓癌二次治療以降
19 GIST一次治療
20 GIST二次治療以降
21 NEC/NET
22 臓器横断固形癌(MSI-H,TMB-H,BRAF,NTRK,RET)
第V章 周術期化学療法の大規模臨床試験
1 食道
2 胃
3 大腸癌
4 膵臓
5 胆道
6 肝臓
7 GIST
第VI章 抗癌薬の臨床試験
■臨床試験成績を正しく解釈するために必要な基礎知識
Topics
■ctDNA/MRD
■腸内細菌と糞便移植
■光免疫療法
■若年発症癌
■CRS
■臨床試験結果を臨床にどのように外挿するべきか?
第 II 章 消化器癌化学療法のKey Drugs
1 フッ化ピリミジン製剤〔5-FU(+LV),UFT(+LV),S-1,カペシタビン〕
2 プラチナ製剤(シスプラチン,オキサリプラチン,ネダプラチン)
3 トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン,エトポシド)…
4 タキサン系製剤(パクリタキセル,ドセタキセル,nab-パクリタキセル)
5 ゲムシタビン
6 トリフルリジン/チピラシル
7 抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ,ラムシルマブ,アフリベルセプト)
8 抗EGFR抗体薬(セツキシマブ,パニツムマブ)
9 抗HER2薬(トラスツズマブ,ペルツズマブ,トラスツズマブ+ペルツズマブ,トラスツズマブ デルクステカン)
10 オラパリブ
11 ゾルベツキシマブ
12 NET治療薬(エベロリムス,ソマトスタチンアナログ,ストレプトゾシン)
13 ペプチド受容体放射線核種療法薬(PRRT薬)
14 免疫チェックポイント阻害薬
15 抗VEGF系薬を含むチロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ,スニチニブ,ソラフェニブ,レゴラフェニブ,レンバチニブ,エルロチニブ,フルキンチニブ,ピミテスピブ,カボザンチニブ)
16 RAF/MEK阻害薬(エンコラフェニブ,ビニメチニブ,ダブラフェニブ,トラメチニブ)
17 FGFR阻害薬(ペミガチニブ,フチバチニブ,タスルグラチニブ)
第 III 章 消化器癌のレジメン
食道 1 5-FU/シスプラチン(+ニボルマブ,ペムブロリズマブ,チスレリズマブ)
食道 2 5-FU/ネダプラチン
食道 3 5-FU/シスプラチン/ドセタキセル(DCF療法)
食道 4 FOLFOX療法(+ニボルマブ)
食道 5 ニボルマブ
食道 6 パクリタキセル,ドセタキセル
胃 7 S-1/シスプラチン,カペシタビン/シスプラチン(+トラスツズマブ)
胃 8 S-1/オキサリプラチン(SOX療法)(+トラスツズマブ,ニボルマブ/ペムブロリズマブ,ゾルベツキシマブ)
胃 9 カペシタビン/オキサリプラチン(+トラスツズマブ,ニボルマブ/ペムブロリズマブ,ゾルベツキシマブ,トラスツズマブ/ペムブロリズマブ)
胃 10 FOLFOX療法(+ニボルマブ/ペムブロリズマブ,ゾルベツキシマブ,トラスツズマブ)
胃 11 S-1/ドセタキセル,ドセタキセル
胃 12 パクリタキセル(or nab-パクリタキセル)/ラムシルマブ
胃 13 イリノテカン
胃 14 ニボルマブ
胃 15 トリフルリジン/チピラシル
胃 16 トラスツズマブ デルクステカン
大腸 17 FOLFOX療法
大腸 18 FOLFIRI療法(+パニツムマブ,セツキシマブ,ベバシズマブ,ラムシルマブ,アフリベルセプト)
大腸 19 FOLFOXIRI ±ベバシズマブ療法
大腸 20 イリノテカン/S-1(±ベバシズマブ)
大腸 21 S-1/オキサリプラチン(SOX療法)(+ベバシズマブ)
大腸 22 カペシタビン/オキサリプラチン(+ベバシズマブ)
大腸 23 カペシタビン/イリノテカン(+ベバシズマブ)
大腸 24 トリフルリジン/チピラシル+ベバシズマブ
大腸 25 レゴラフェニブ,フルキンチニブ
胆道 26 セツキシマブ/エンコラフェニブ/ビニメチニブ
胆道 27 ゲムシタビン/シスプラチン
胆道 28 ゲムシタビン/シスプラチン+デュルバルマブ,ペムブロリズマブ47
胆道 29 ゲムシタビン/シスプラチン/S-1
膵臓 30 FOLFIRINOX療法
膵臓 31 ゲムシタビン/nab-パクリタキセル
膵臓 32 ゲムシタビン/S-1
膵臓 33 ナノリポソーマルイリノテカン/5-FU/LV
肝臓 34 アテゾリズマブ/ベバシズマブ
肝臓 35 デュルバルマブ/トレメリムマブ
肝臓 36 ラムシルマブ
MSI-H固形癌 TMB-H固形癌 MSI-H大腸癌 37 ペムブロリズマブ,ニボルマブ,ニボルマブ/イピリムマブ
NEC 38 シスプラチン/エトポシド,カルボプラチン/エトポシド
NEC 39 シスプラチン/イリノテカン
肛門 40 5-FU/マイトマイシン+放射線
腹膜中皮腫 41 シスプラチン/ペメトレキセド,ニボルマブ
第IV章 消化器癌化学療法の大規模臨床試験
1 食道癌一次治療
2 食道癌化学放射線療法
3 食道癌二次治療以降
4 胃癌一次治療 HER2陽性
5 胃癌一次治療 HER2陰性
6 胃癌二次治療
7 胃癌三次治療以降
8 大腸癌一次治療 抗EGFR抗体薬
9 大腸癌一次治療 VEGF阻害薬
10 大腸癌一次治療
11 大腸癌二次治療
12 大腸癌三次治療以降
13 胆道癌一次治療
14 胆道癌二次治療
15 膵癌一次治療
16 膵癌二次治療
17 肝臓癌一次治療
18 肝臓癌二次治療以降
19 GIST一次治療
20 GIST二次治療以降
21 NEC/NET
22 臓器横断固形癌(MSI-H,TMB-H,BRAF,NTRK,RET)
第V章 周術期化学療法の大規模臨床試験
1 食道
2 胃
3 大腸癌
4 膵臓
5 胆道
6 肝臓
7 GIST
第VI章 抗癌薬の臨床試験
■臨床試験成績を正しく解釈するために必要な基礎知識
Topics
■ctDNA/MRD
■腸内細菌と糞便移植
■光免疫療法
■若年発症癌
■CRS
書評
エビデンスを臨床に生かす力を育む
─『消化器癌化学療法』の羅針盤
がん薬物療法は近年急速に進歩し,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬,さらにがんゲノム医療の普及により,治療は一層個別化が進んでいます.治療選択肢が増えるほど,膨大なエビデンスをどう整理し,薬剤師として日々の業務に生かすかが重要な課題となります.『消化器癌化学療法』改訂第6 版は,その問いに応える実践的な一冊です.
本書は,愛知県がんセンターの室 圭先生,神奈川県立がんセンターの上野 誠先生らを中心とする編集陣により,消化器がん薬物療法を体系的に整理しています.まず各抗がん剤の作用機序,毒性プロファイル,薬物動態など薬剤師が押さえたい情報を丁寧に解説し,次に標準治療レジメンの考え方や使い方へとつながる構成が特徴です.さらに,それらの背景となる主要臨床試験のエビデンスを簡潔に示しており,「薬剤理解→レジメン理解→エビデンス理解」という流れで知識が積み上がる点が大きな魅力です.
近年重視されるバイオマーカーやがんゲノム医療についても要点が整理され,治療選択の背景を薬剤師が理解する上で大いに役立ちます.単に情報を得るだけでなく,疑義照会,毒性マネジメント,服薬指導,多職種連携といった薬剤師の実務に“どう活用するか”を自然と考えさせてくれる内容です.
本書は病院,外来化学療法室,在宅,保険薬局など,さまざまな場面でがん薬物療法に関わる薬剤師に役立ちます.治療レジメンの理解を深め,患者の不安や毒性への対応に寄り添いながら支援するための“共通言語”を提供する書として,高い価値があります.
改訂第6 版は,若手の学習にも,経験を積んだ薬剤師の最新情報の確認にも適した信頼性の高い臨床書です.ページを開くたびに,薬物療法の背景にあるエビデンスと,患者に最適な治療を届けるための視点が自然と身につく構成になっています.本書が,多くの薬剤師にとって日々の判断を支える“羅針盤”として活用されることを期待しています.
香川大学医学部臨床腫瘍学講座 教授 辻 晃仁
─『消化器癌化学療法』の羅針盤
がん薬物療法は近年急速に進歩し,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬,さらにがんゲノム医療の普及により,治療は一層個別化が進んでいます.治療選択肢が増えるほど,膨大なエビデンスをどう整理し,薬剤師として日々の業務に生かすかが重要な課題となります.『消化器癌化学療法』改訂第6 版は,その問いに応える実践的な一冊です.
本書は,愛知県がんセンターの室 圭先生,神奈川県立がんセンターの上野 誠先生らを中心とする編集陣により,消化器がん薬物療法を体系的に整理しています.まず各抗がん剤の作用機序,毒性プロファイル,薬物動態など薬剤師が押さえたい情報を丁寧に解説し,次に標準治療レジメンの考え方や使い方へとつながる構成が特徴です.さらに,それらの背景となる主要臨床試験のエビデンスを簡潔に示しており,「薬剤理解→レジメン理解→エビデンス理解」という流れで知識が積み上がる点が大きな魅力です.
近年重視されるバイオマーカーやがんゲノム医療についても要点が整理され,治療選択の背景を薬剤師が理解する上で大いに役立ちます.単に情報を得るだけでなく,疑義照会,毒性マネジメント,服薬指導,多職種連携といった薬剤師の実務に“どう活用するか”を自然と考えさせてくれる内容です.
本書は病院,外来化学療法室,在宅,保険薬局など,さまざまな場面でがん薬物療法に関わる薬剤師に役立ちます.治療レジメンの理解を深め,患者の不安や毒性への対応に寄り添いながら支援するための“共通言語”を提供する書として,高い価値があります.
改訂第6 版は,若手の学習にも,経験を積んだ薬剤師の最新情報の確認にも適した信頼性の高い臨床書です.ページを開くたびに,薬物療法の背景にあるエビデンスと,患者に最適な治療を届けるための視点が自然と身につく構成になっています.本書が,多くの薬剤師にとって日々の判断を支える“羅針盤”として活用されることを期待しています.
香川大学医学部臨床腫瘍学講座 教授 辻 晃仁