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救急外来・当直で魅せる 問題解決コンピテンシー

1版

福井大学医学部附属病院 救急科 総合診療部 林 寛之 編集

定価

5,500(本体 5,000円 +税10%)


  • B5判  350頁
  • 2022年4月 発行
  • ISBN 978-4-525-41221-0

一晩乗り切ればいいなんて、甘い考えでは戦えない。

救急外来では教科書通りの典型症例というのはほんの一握りに過ぎません.だからこそ,本書では致死的疾患の非典型例や落とし穴をたくさん収載しています.あらゆる検査の感度や精度のエビデンスもしっかり記載し,覚えやすいニーモニックを多数盛り込みました!
一方で,「病気を診ずして,人を診よ」は医療の真髄です.それぞれの患者の生活・家族背景やニーズも捉えるからこそ,多様なニーズにも応えられるというものです.外来や当直中に出会うかもしれないちょっと困ってしまうようなシチュエーションの対応策も幅広く扱っています.
救急の普通のマニュアルから踏み込んで,本書は救急の実臨床現場での『困った』に応えられるような『一歩踏み込んだ「キラリ」と光る技』をこれでもかと惜しみなく披露しているので,是非自分のものとしてください!
本書とともに,ヒラリと軽やかに『切れ味のある救急の夜』を!

  • 序文
  • 目次
  • 書評2
  • 書評1
序文
 救急の現場は阿鼻叫喚の野戦病院のような肉食系救急もあれば,静寂のなかに落とし穴の潜むヒヤヒヤ草食系救急もある.歩いてくる患者を帰宅させて重症化して戻ってくることだけは何としても避けたいよねぇ.アメリカの救急医が約48,000人もいるのに対して,日本の救急専門医はせいぜい5,500人ほどしかおらず,日本の人口がアメリカの人口の約4割であることを考えると,救急医の数が足りているとは到底言えない.つまりは本書読者のような研修医や当直医など縁の下のアンサングヒーロー・ヒロインが日本の多くの救急を支えているんだ.パチパチパチ.専門外なのに日々自己研鑽し患者さんのために頑張っている皆様に心からエールを送る.あなたはエライ!
 救急患者は一晩乗り切れさえすればいいなんて,甘い考えでは戦えない.教科書通りの典型症例なんてほんの一握りしかいないから,難題に立ち向かうには竈門炭治郎のように「日の呼吸」や「水の呼吸」も使えた方がいい(私は使えませんが).本書は致死的疾患の非典型例や落とし穴もたくさん収載した.敵の手の内を熟知すれば,もうだまされないようになるはず.さらに救急での自分の心の安定度にも敏感になってストレスとうまく付き合えば,誤診もぐっと減り,患者満足度も向上する.「敵を知り,己を知れば百戦危うからず」by 孫子.
 またそれぞれの生活・家族背景やニーズも捉えるからこそ,患者の多様なニーズにも応えられるというもの.「病気を診ずして,人を診よ」は医療の真髄だ.医療システムを知っておくことも,救急の夜を乗り切る重要な要件なんだ.ホラ,そこの背中の痒いところに手が届く仕様になっているでしょ? あ,本で背中を掻くんじゃなくて,中身を読んでね.
 救急の普通のマニュアルは卒業したみなさんに対して,本書は救急の実臨床現場での“困った”に応えられるような「一歩踏み込んだ“キラリ”と光る匠の技」をこれでもかと惜しみなく披露するので,是非自分のものとして盗んで欲しい.……あ,本書を買ってくれたんだから,盗まなくてもいいんだぁ,吸収するんだったぁ,テヘペロ♪
 子どもの運動会の場所取りで早朝に出かけ,妻の誕生日プレゼントも忘れないようにして,日々激務で,学会発表が迫り,トイレも我慢し,睡魔と戦いながら救急で踏ん張るあなたにこそ,ヒラリと軽やかに「切れ味のある救急の夜」を過ごしてもらいたい.患者目線で真心を届ける救急医療ができる医療者に脱皮できるチャンスです(なんか変なキャッチみたいになってきた……).本書を読むと,少しひねりのある救急症例に当たりたくなるという副作用がでますが,それは腕が良くなったということ.「あぁ,今夜は暇だなぁ」と言っても救急車が増える副作用はありません(……多分).
 それでは,みなさん,全集中でショータイム!

2022年2月
私の無理難題にも耐え,全力で執筆してくれた気の置けない仲間たちに感謝しつつ…
林 寛之
目次
見逃し症例から学ぶ 絶対見逃したくない救急編
1 見逃しやすい頭痛のpitfalls
2 見逃しやすい胸痛のpitfalls
3 見逃しやすい腹痛のpitfalls
4 産褥期の落とし穴
5 のどは大したことないんだけど……
6 失神のpitfalls
7 意識障害:急にぼけた?
8 めまいって主訴はキライ?
9 腰痛:ホントに痛いもん
10 高齢者の転倒で知っておきたいこと
11 足が痛い? 大したことないけど ……
12 骨折はないと思ったのに……
13 薬疹:本当にかゆくないの?
14 ゴミ箱診断のpitfalls Part1
15 ゴミ箱診断のpitfalls Part2
16 血糖と決闘!? 高血糖・低血糖のpitfalls

知ってるとお得な救急編
17 謎の腹痛 CTは正常だけど……
18 借金はないけど,首が回らない
19 咬まれた! 刺された!
20 こんな中毒は安心? 不安?
21 知っ得,アレルギー
22 インフルエンザのpitfalls2
23 帯状疱疹:見逃しは救急医として退場方針!
24 高齢者ER診療の基礎

嫌がらずに頑張ろう編
25 酔っ払い? ン? 元酔っ払い?
26 GOMER,暴れる患者,対応困難な患者
27 治療を拒否する患者
28 frequent flyer ジョーレンさん,いらっしゃい
29 もしかして小児虐待?
30 ひょっとしてDV(IPV)?
31 高齢者虐待:本人は否定してるけど……
32 コンサルトを気持ちよくするには
33 防衛医療:念のためCTいいっすか?
34 在宅患者がやってきた

ちょっと苦手を克服しよう編
35 DNRを救急車で運んだの?
36 救急でACPって始めていいの?
37 家族問題を抱えて行き先が……
38 主訴が4つ以上あったなら……
39 入院させてほしい……
40 高齢者の不定愁訴
41 外国人がやってきた
42 病態は治せなくても……
43 救急室のポリファーマシー
44 怒りに対する対処法
45 小児救急のpitfalls
46 社会的処方が必要な患者
47 主治医は大病院です! さぁ困った!
48 仕事を聞けばわかったかも……
49 ブラック企業の患者たち
50 電話相談って困るんだけど……
51 診断がつかない場合
書評2
想像力を豊かに,そのチャンスは突然に

坂本 壮(総合病院 国保旭中央病院 救急救命科)

 「ズッチィなぁ~」,フジテレビドラマ『東京ラブストーリー(作者:柴門ふみ)』の永尾完治(カンチ)のとある場面の台詞だ.1988年に漫画で発表され,その後1991年にドラマ化,2020年にはリメイクもされた.主題歌であった『ラブ・ストーリーは突然に(作詞・作曲:小田和正)』は誰もが聴いたことがあるだろう.
 「あの先生,いまは大分丸くなったけど,昔は恐かったんだよ……」,こんな台詞を聞いたことはないだろうか.私自身,後期研修医辺りの自分を思い返すとまぁお恥ずかしい行動・言動が……(赤面).
 救急外来では見逃してはいけない疾患が複数存在する.受傷機転から明らかに重症な外傷や,典型的な症状を訴える患者では,やるべきことはシンプルで,マンパワーがあればそれほど困ることはない.しかし,1つのエラーが患者の転帰に大きく影響するため現場は殺伐とした雰囲気となり罵声が飛び交うこともある.エラーを防ぐためには,急を要するときこそ落ち着いて冷静に対応したいものだがそれもなかなか……まぁこんなときは皆が緊迫しているから多少ピリついていたほうが場が締まってよいかもしれないが,まぁそれでもねぇ…….そんなとき,中心となって動いている医師や看護師が場をコントロールし,無駄のない行動でテキパキ行動しているのをみると,「惚れてまうやろぉ~」って感じですよね.
 救急車で来院した患者は重症,walk-inで来院した患者は軽症,そうであればなんと簡単なことか……トリアージは不要でエラーはグッと減るはず.しかし現実はなんでもあり.移動手段がないがゆえに救急車,施設から職員さんがなんとか連れてきてくれたものの受付でトリアージナースが接触するとまさかの心停止,そんなこともあるのがリアルワールドだ.
 救急外来の診断エラーパターンはおおよそ決まっている.そして見逃してしまう疾患も決まっている.希少疾患を見逃すわけではなく,骨折,虫垂炎,急性心筋梗塞,大動脈解離,肺血栓塞栓症,クモ膜下出血,絞扼性腸閉塞など,誰もが聞いたことがある疾患ばかりだ.これらを見逃してしまう理由もまた決まっていて,見逃してしまった日には,「なぁ~にぃ~! やっちまったな!」といわれるとかいわれないとか.
 本書を手にしたとき,まずはコンピテンシーの意味を調べるところからスタートした.“優れた実践者がもつ行動特性”,これがコンピテンシーだ.救急外来・当直において問題を解決するために優れた医師がどのように行動しているのか,これを学べる本なのだ.
 本書は,①見逃し症例から学ぶ 絶対見逃したくない救急編,②知ってるとお得な救急編, ③嫌がらずに頑張ろう編,④ちょっと苦手を克服しよう編の4つの章立てとなっている. 350ページとずっしりサイズで中身は濃厚だ.救急外来や当直で出会う頻度の高い症候やセッティングが網羅され,診療の前後,合間に読み進めると,その場から活きる内容が盛り沢山である.
 見逃さないための症候へのアプローチ,ピットフォールは痒いところに手が届く内容で,文章の1つ1つに優しさが詰まっている.「こんなこともある」といわれると,最終的にそれは「どんなこともある」へ自然に変換され,検査の縦断爆撃,知らず知らずのうちに検査結果ばかりを気にして患者が遠くのほうで「先生〜」と手を振っていることに気づかない.そうならないために,具体的かつ実践的な策がきちんと書かれているのが特徴である.
 後半の2つの章,③,④ではvisceral bias, hassles biasなど,救急の現場で陥りやすいバイアスによって不適切なマネジメントをしないように,2022年の“いま”を客観視し,目の前の患者に対して大切なことは何なのかを理解するために必要なtipsが紙面を埋め尽くしている.誰もがさまざまな経験を経て,周囲の実情を知り,人に優しくなれるものである.しかしそれには時間がかかる.これを時短することも本書を読めばできるだろう.いろいろなことを知らないと相手の立場など想像できない.
 最も驚いたのは,本書はどの項も林寛之先生が記載したかのような内容かつギャグセンス満載なところである.冒頭の東京ラブストーリーも 2022 年にミュージカル化される,それぐらい驚き,そんな林先生のもとで救急診療を学んでいる先生達をズッチィなぁと思う次第である(最近ドラマをすべて見返したが,実はズッチィなぁではなくズッリィなぁっていっていることはドラマファンのために補足しておく).
 「あの日あの時この本に出会っていなければ〜♪」とそのうち本書に感謝する日がくることは間違いない.
書評1
徳田安春(群星沖縄臨床研修センター)

 日本の医療機関の特徴は,中小病院の数が多いことと医師の数が少ないことだ.そのためほとんどの非救急専門医師が当たり前のように救急当直を毎月こなしている.内科系の医師は救急内科小児科当直に入り,外科系の医師は救急外科系当直に入るようなパターンが多い.なかには全科救急当直に入る非救急医もいる.
 このような背景のなかで,福井大学の林先生とその仲間たちがこれまでに出した救急関連の本は,現場の研修医や医師を助け,結果として多数の患者の命を救い,満足度もアップさせた.このチームの貢献度は大きかった.
 そして今回新たに出たのがこの本.期待通りの内容である.まず,頭痛や胸痛などの「主要症候別診断エラーの各論」だ.ケースを紹介し,落とし穴予防法をエビデンスベースで解説.主要論文の引用情報もついているので,自習にも役立つ.一瞬で閲覧可能な鑑別表とその重要度がついているので,優先順位づけとして使える.
 次に,救急のピットフォール編.ここでもケースを紹介し,ピットフォールをエビデンスベースで提供してくれる.ワンポイントレッスンもわかりやすい.写真が豊富なので実践に役立つ.
 そして,圧巻は後半の2つの編だ.嫌がらずに頑張ろう編では,アルコール関連,暴力,虐待,治療拒否問題などについて,やはりケースベースで導入したあと,豊富な診療経験をもつ救急チームの実践的アドバイスがありがたい.
 最後はこの本の新規性を発揮している,ちょっと苦手を克服しよう編だ.困難な医療コミュニケーションのよくあるパターンを細分化してくれており,患者の安全と満足度を高めつつ最良の地点に着地できる実践方法を教えてくれる.医療面接の成書でも,これだけのパターンを網羅したものは少ない.医師自身の怒りなどの感情のコントロールの仕方もある.この本を使う医師のメンタルヘルスはよくなり,その患者への診断率と満足度もアップすることを私は予言しておきたい.
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