南山堂

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カテゴリー: 精神医学/心身医学

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モーズレイモデルによる家族のための摂食障害こころのケア 原著2版

1版

国際医療福祉大学医学部精神医学 主任教授
千葉大学大学院医学研究院精神医学 特任教授 中里道子 監訳
徳島大学大学院医歯薬学研究部
メンタルヘルス支援学分野 教授 友竹正人 監訳
京都府立医科大学大学院医学研究科
精神機能病態学 併任助教 水原祐起 監訳

定価

3,300(本体 3,000円 +税10%)


  • B5判  227頁
  • 2022年10月 発行
  • ISBN 978-4-525-38221-6

摂食障害に苦しむ人をサポートするための,すぐに役立つ1冊です.

“Skills-based Caring for a Loved One with an Eating Disorder: The New Maudsley Method, Second Edition”の翻訳本.

摂食障害で苦しむ人たちの家族に向けて,回復を手助けするために必要な心構えとスキルを解説しました.最新のエビデンスとわかりやすい表現によって,大切な家族を支えていくためのヒントが得られます.家族のみならず,摂食障害で苦しんでいる当事者,そして治療に携わる専門家にとっても役立つこと間違いなしの一冊です.

  • 目次
  • あとがき
目次
はじめに
第1章 視点を共有すること ―摂食障害の経験から―
第2章 病気の共通理解を深める ―摂食障害の基本的事実―
第3章 病気がもたらす結果 ―医学的リスクを理解する―
第4章 家族のための摂食障害こころのケア ―その第一歩―
第5章 ケアにあたる家族の対応のタイプ
第6章 ストレスによる歪み,回復力を育むことについて
第7章 変化について理解する
第8章 コミュニケーション
第9章 ケアをする家族との関係
第10章 対人関係:パートナー,きょうだい,仲間
第11章 情動知能と問題解決能力を高める
第12章 拒食に取り組む
第13章 過食を乗り越えるために
第14章 難しい行動に取り組む
第15章 振り返って,リラックス
監訳者あとがき
索 引
あとがき
 本書は,“Skills-based Caring for a Loved One with an Eating Disorder : The New Maudsley Method, Second Edition”(Routledge, 2016)の全訳です.本書の初版は2007年に出版されました.その後,すぐに私たちのグループによって翻訳が行われ,2008年には日本語版「モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア」が出版されました.この日本語版は,多くの病院,クリニック,家族教室などにおいて,家族向けの心理教育用のテキストとして活用されていることを耳にし,たいへん嬉しく思っていました.ただ,初版の日本語版が出版されてから10年以上が経過し,最近では新品を購入するのが困難になりつつあるようでもありました.そのような折りに,別の書籍の翻訳でお世話をしていただいていた南山堂様から,次の書籍の出版のお話をいただいたため,ちょうど良い機会と考え,第2版の翻訳を提案させていただきました.
 第2版は,初版の内容と重なる部分も多いのですが,最近の新しい研究や臨床の知見が随所に追加されており,図なども大幅に改訂され,全体的にボリュームが増し,読み応えのある内容となっています.摂食障害の臨床に携わっていますと,家族から,家庭で患者さんにどのように接すればよいか,どのような点に注意してケアをすればよいか,どのように食事のサポートをすればよいか,といった質問をよく受けます.家庭でのケアや対応の仕方がよく分からず,途方に暮れている家族が多いのです.私たちの臨床経験からは,そのような場合は,単に言葉だけで助言をしたり,説明したりするよりも,本書のような家族向けの書籍を用いて,家族の皆さんにも協同的な治療チームの一員としてその内容を読んで理解していただき,その上で,治療者が必要な助言を行ったり説明を追加するといったスタイルの方が,実践的かつ効果的であるように思っています.
 本書は,摂食障害の患者さんのケアにあたる家族のために書かれたものですが,私たちは本書を,患者さんご本人や保健医療関係者(医師,看護師,心理士,保健師,ソーシャル・ワーカー,栄養士,養護教諭など),友人など,多くの方々に読んでいただきたいと思っています.摂食障害については,家族や周囲の人々,さらには,ときには保健医療関係者までもが,多くの誤解や間違った情報をもっていることがあります.極端な食事制限や過食,嘔吐,下剤の乱用といった行動について,どうしてそのようなことが続いているのかが分からないと,「普通に食べればよいだけなのに,どうしてそうしないのだ」,「単なるわがままだ.性格の問題だ」,「そもそも,治そうとする気がないのだ」いったような考えをもつようになってしまい,患者さんに対して陰性感情を抱くようになります.家族によっては,患者さんの摂食障害の行動を見て見ぬふりをしたり,そういった行動に順応してしまうこともあります.このようなことが起こると,患者さんの回復を支援するどころか,病気を維持させる要因となってしまい,長期的に見ると,患者さんを苦しめる結果になります.多くの家族が経験するこのような困難やさまざまな問題,そしてそれらを解決するにはどうすればよいかということについて,本書は具体的な例を挙げながら,分かりやすく解説しています.本書で用いられている動物のたとえは,よく起こりうる家族の反応を理解し,自分自身の対応について振り返る手助けをしてくれます.また,本書にはエビデンスに基づいた正確な知見や多くの情報が記載されており,読者の皆さんは,摂食障害という病気について,心理的側面,身体的側面から多面的に理解を深めることができるでしょう.病気について十分な知識と理解をもつことは,患者さんのケアを効果的に続けていくための土台となるものです.
 本書の翻訳に際しては,基本的には初版の翻訳方針を踏襲し,読者の皆さんが理解しやすいように,できるだけ平易な表現を用いるようにしました.英国と日本の医療制度や環境の違いから,そのまま訳しただけでは理解し難い箇所は,訳出を工夫し,さらに,読者の皆さんの理解を手助けするために何らかの解説が必要と思われる箇所については,( )内に訳者注として記載しました.また,摂食障害の患者さんは圧倒的に女性が多いという実情を考慮して,患者さんを指す代名詞は「彼女たち」というように女性形で訳すように統一し,また実際に患者さんのケアを行うのは家族である場合が多いため,「carer(援助者)」を基本的に「家族」と訳すようにしました.さらに,主な「carer」は母親の場合が多いため,「carer」と「Edi(エディ=患者)」を「母」と「娘」の想定で訳しています.しかし,「carer」は父親やきょうだいなどの場合もありますし,患者さんも男性である場合があります.読者の皆さんの実際の状況に合わせて,「carer」を「父」や「きょうだい」,「Edi」を「息子」などと読みかえていただけると幸いです.
 監訳者は,ロンドン大学精神医学研究所摂食障害部門(モーズレイ摂食障害ユニット)に留学経験があり,著者の一人であるジャネット・トレジャー教授の指導を受けています.監訳者のグループは,これまで,モーズレイ摂食障害ユニットで開発され,実際に使われてきたセルフヘルプ・マニュアルやテキストを翻訳してきました.それらは,本書の初版である“Skills-based Learning for Caring for a Loved One with an Eating Disorder”(邦題「モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア」)をはじめとし,“Getting better bit(e) by bit(e): a survival kit for sufferers of bulimia nervosa and binge eating disorders”(邦題「過食症サバイバル・キット ―ひと口ずつ,少しずつよくなろう―」),“The Clinician’s Guide to Collaborative Caring in Eating Disorders”(邦題「モーズレイ摂食障害支援マニュアル ―当事者と家族をささえるコラボレーション・ケア―」),“A Cognitive-Interpersonal Therapy Workbook for Treating Anorexia Nervosa:The Maudsley Model”(邦題「モーズレイ神経性やせ症MANTRA ワークブック」)になります.とくに,2021 年に出版された「モーズレイ神経性やせ症MANTRA ワークブック」は,英国の医療ガイドラインであるNICE ガイドラインにおいて,神経性やせ症の第一選択の治療法として推奨されているモーズレイ方式の治療の核となるものであり,非常に実践的な内容になっていますので,本書と併せて読んでいただき,摂食障害の治療やケアに活用していただけると幸いです.
 最後になりましたが,私たちの翻訳の申し出を快く承諾してくださったトレジャー先生ならびに出版にご尽力をいただきました南山堂編集部の小池亜美氏に心より感謝申し上げます.
 この第2版が,摂食障害の治療に携わっておられる多くの方々に読まれ,患者さんの治療やケアに役立つことを願っております.

2022年6月
監訳者一同
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