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カテゴリー: 小児科学  |  外科学一般

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LPEC法のすべて

メッシュを使用しない新生児から高齢者の腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術

1版

社会医療法人かりゆし会
ハートライフ病院 ヘルニアセンター アドバイザー 嵩原裕夫 監修
順天堂大学医学部附属練馬病院 院長/小児外科 教授 浦尾正彦 編集
社会医療法人かりゆし会
ハートライフ病院 院長 西原 実 編集

定価

13,200(本体 12,000円 +税10%)


  • B5判  143頁
  • 2024年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-30101-9

世界に誇る日本オリジナルの術式!動画で手に取るようにわかる

LPEC法(腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術)は,鼠径ヘルニアの治療において,腹腔鏡を用いて内鼠径輪のレベルで腹膜外にヘルニア嚢を閉鎖する手術法.

手術の特長として「鼠径管を開放しない」「精索剥離を行わない」などがあり,対側のヘルニアの有無を確認しやすくする.精管や精巣血管の損傷リスクが減少し,男性不妊のリスクの低下に期待が持てる.また,嵌頓ヘルニアの絞扼腸管を鏡視下で観察できるため,より安全な手術が可能となる.
成人では,鏡視下手術においてもメッシュを使用する腹壁補強法がスタンダードだが,advanced LPEC法を用いれば,transversalis fascia repairを併用することでメッシュを使用せずに治療できる.
幅広い年齢層に対して安全で低侵襲性の手術を提供できるものとしてメッシュを使用しない唯一の腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を,実際の術式動画と豊富な写真で解説.小児外科医,一般外科医の方へおススメしたい.

  • 序文
  • 目次
序文
 LPEC法が考案され,臨床に導入されてから早くも四半世紀が過ぎた.
従来の鼠径管切開法は,鼠径管を開放して内精筋膜に覆われた精索内のヘルニア嚢を周囲組織や精管および精巣血管から剥離し,単純高位結紫を行う.一方,LPEC法は鼠径管を開放せず,精索の剥離を一切行わないことから,鼠径管内の解剖学的構築を破壊することなく,腹腔鏡下に内鼠径輪のレベルで腹膜外にヘルニア嚢を閉鎖する術式である.
 LPEC法が小児鼠径ヘルニアの標準術式の一つとして広く普及するにつれ,新しい知見と利点が数多く示されてきた.たとえば,小児外科医にとって積年の課題であった対側の腹膜鞘状突起開存の有無の検索は極めて容易となり,術後の異時性対側発症に対して容易に予防的閉鎖術が可能となった.
 精索水腫に対しても腹膜鞘状突起の高位結紫のみでヘルニアと同じように治療できることが証明された.また,手技の習熟により精管や精巣血管の損傷リスクは著しく減少し,鼠径ヘルニア手術の長期成績において合併症の一つである男性不妊症の減少に期待が示唆された.嵌頓ヘルニアの絞扼腸管を鏡視下で術中に観察できることから,より安全性の高い手術が可能となった.女児の卵管滑脱・卵巣ヘルニアでも鏡視下で整復でき,容易に高位で結紫ができるようになった.
 本書の内容で特筆されるのは,古くから小児外科の教科書に金科玉条のごとく記されている小児外鼠径ヘルニアの成因が,「腹膜鞘状突起開存に起因する間接型ヘルニア」のみでなく,直接型の外鼠径ヘルニア,いわゆるde novo型のヘルニアも存在することを指摘,その治療もLPEC法やadvanced LPEC法で可能あることを明記した点である.
 一方,成人の鼠径ヘルニアに対する治療は,鼠径管切開法やTAPP法やTEP法などの鏡視下手術においてもメッシュを使用する腹壁補強法がスタンダードな術式として行われている.年齢に対応したメッシュの使用について明確な適応基準はなく,外科医が手術する場合は,通常メッシュを使用することが多いようである.
 しかし,思春期やAYA世代の外鼠径ヘルニアには,小児期からのキャリーオーバー症例も少なくない. このような症例のすべてにメッシュを使用することには異論も存在する.日本ヘルニア学会による新ヘルニア分類のL-1型およびヘルニア門の全周堤が比較的明瞭なL-2型の症例では,小児と同様にLPEC法で治療が可能であり.メッシュを使用する必要はない.ヘルニア門の外縁が不明瞭で,内鼠径輪の横筋筋膜slingの上・下脚が外側に向かってU字状に広がる形態を示すL-2型やL-3型においては,LPEC法では再発するリスクが高い.このような症例でも腹横筋腱膜弓や横筋筋膜群(横筋筋膜slingの下脚,IP-tract)が視認できる場合は,LPEC法にtransversalis fascia repairを併用することで腹膜前腔の広範囲な剥離をせず, メッシュの留置も必要としないadvanced LPEC法で治療することができる.
 本書では,新生児から高齢者までの外鼠径ヘルニアに対し,メッシュを使用しない唯一の腹腔鏡下ヘルニア修復術として,動画を参照しながらLPEC法のノウハウを学べるように,第一線で活躍されている先生方に分かりやすく解説していただいた.
 外科手術の主流がロボット支援手術に傾注しつつある現在,鼠経ヘルニアに関しては Bogros腔やRetzius腔を剥離することなく,メッシュを使用しないLPEC法を唯一の腹腔鏡下ヘルニア修復術として位置づけ,患者本位の低侵襲性の手術を提供すべく,本書を参考にしていただけたら幸いである.

2024年6月
日本LPEC研究会代表世話人
嵩原裕夫
目次
[総 論]
Ⅰ LPEC法開発の歴史と展望
 1.手術中の対側腹膜状突起開存の検索
 2.LPEC法開発への苦難のスタート
Ⅱ LPEC法の基本的手技
 1.LPEC法の機材
 2.カメラポートの留置法
 3.LPEC法に対するドライラボトレーニング
 4.LPEC法の運針法

[各 論]
Ⅰ 小児へのLPEC法
 1.小児における標準LPEC法
 2.SILPEC法
 3.未熟児巨大陰嚢へルニア
 4.嵌頓ヘルニアに対するLPEC法
 5.卵管滑脱ヘルニア〈卵巣ヘルニア〉に対するLPEC法
 6.de novo型外鼠径ヘルニアに対するLPEC法
 7.陰嚢水腫,精索水腫に対するLPEC法
 8.ASH に対するLPEC法の応用
 9.LPEC法術後の対側発症について
 10.LPEC法術中のトラブルシューティングと術後成績①
 11.LPEC法術中のトラブルシューティングと術後成績②
 12.LPEC法と日帰り手術
Ⅱ 成人へのLPEC法
 1.成人LPEC法の適応と術後成績
 2.AYA 世代,成人の外鼠径ヘルニアに対するMultiple LPEC法
 3.対側外鼠径ヘルニアに対するLPEC法①
 4.対側外鼠径ヘルニアに対するLPEC法②
 5.成人の外鼠径ヘルニアに対するadv.LPEC法
 6.Nuck 管水腫合併例に対するLPEC法
Ⅲ まれな症例に対するLPEC法
 1.両側卵巣脱出をみた片側外鼠径ヘルニア
 2.停留精巣に対するLPEC法の応用①
 3.停留精巣に対するLPEC法の応用②
 4.内鼠径ヘルニアに対するLPEC法
 5.性分化疾患(DSD)に対するLPEC法
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