EOLC for ALL すべての人にエンドオブライフケアの光を
腎不全の緩和ケア
1版
東京ベイ・浦安市川医療センター 鈴木利彦 監修
浦安ツバメクリニック/東京ベイ・浦安市川医療センター 坂井正弘 編集
たけお内科クリニック からだと心の診療所 大武陽一 編集協力
名古屋大学医学部付属病院 高井奈美 編集協力
東京ふれあい医療生活協同組合 梶原診療所 平原佐斗司 編集協力
定価
4,620円(本体 4,200円 +税10%)
- B5判 369頁
- 2025年6月 発行
- ISBN 978-4-525-25041-6
「最期の時まで自分らしく」を支えるために
腎不全には透析や腎移植などの腎代替療法が複数あり,それらの導入や,場合によってその見合わせにより,予後もそれぞれ大きく変化する点が,他の臓器不全と異なる特徴です.さらに近年では高齢化に伴い,透析の見合わせによる保存的腎臓療法(CKM)や,意思決定に迷う場合の期限付き透析の実施(time limited trial)といった,考慮すべき選択肢も増えており,関わる医療者も腎臓内科や泌尿器科,透析医療,在宅医療や緩和ケアなど多領域・多職種にわたります.
本書では,腎代替療法の有無を問わず,保存期から末期腎不全、そしてエンドオブライフ期に至るまで患者さんのたどる道のりを念頭に,ふまえておくべき背景知識を解説し,多様な状況への対処法を豊富な事例とともに探ります.
患者さんに最期の時まで自分らしく穏やかに過ごしてもらうための方法を,関係者皆で考えていくための一冊です.
- 監修のことば
- 序文
- 目次
監修のことば
腎不全の診療は,近年その様相を大きく変えつつあります.特に高齢化の進展に伴い,保存期慢性腎臓病clonic kidney disease(CKD)や透析導入期,あるいは透析非導入という選択を含めたエンドオブライフ期の腎不全患者が急増しており,医学的対応のみにとどまらない,全人的なケアの重要性が強く認識されるようになってきました.こうした背景のもと,腎不全領域における「緩和ケアpalliative care」の概念は,今やますます注目を集めています.がん医療で長年培われてきた緩和ケアの枠組みを腎疾患の現場にも応用し,患者の生活の質quality of life(QOL)や意思決定支援,家族ケア,さらには医療者側の倫理的葛藤への対応に資する実践的知見が,いま強く求められているのです.
しかしながら,腎不全の緩和ケアは,実臨床において極めて複雑かつ繊細な対応を要する領域です.患者の病状や価値観,社会背景に応じて治療方針を調整しつつ,生命予後・生活の質・患者の希望のバランスをいかに取るかは,私たち医療者にとって常に大きな課題であり続けています.本書における執筆作業は,そうした臨床の困難さに真正面から向き合っていただく内容であり,執筆の先生方にはご多忙のなか,大変なご負担をお願いすることとなりました.それにもかかわらず,いずれの先生方も真摯にご対応くださり,実践的かつ深い洞察に満ちた原稿をお寄せいただけたことに,深甚なる敬意と心からの感謝を申し上げます.
本書は,南山堂より刊行されている「EOLC for ALL すべての人にエンドオブライフケアの光を」シリーズとして企画されたものですが,腎不全という領域特有の倫理的・社会的課題を盛り込みながら,保存的腎臓療法conservative kidney management(CKM)や腎臓支持療法kidney supportive care(KSC)といった新たな概念を踏まえ,多職種連携による実践知を結集する,非常に困難な編集作業でもありました.私自身,「よりよい一冊を」という思いが先行するあまり,編集過程において,執筆の先生方をはじめ,編集の坂井正弘先生,編集協力の平原佐斗司先生,大武陽一先生,高井奈美先生,そして編集担当の佃和雅子さんには,ご多忙のなか,多大なご負担やご苦労をおかけしてしまった場面もあったかと存じます.それでも皆様は,ひたむきな姿勢と温かなご理解,惜しみないご協力をもって,本書の完成を支えてくださいました.刊行までに当初の予定を大きく超える時間を要したこともあり,その道のりの一歩一歩に,どれほど多くの献身と情熱が注がれてきたかを思うと,胸が熱くなる思いです.
皆様のご尽力なしには,本書の完成は到底なし得なかったことを,ここにあらためて明言したいと思います.本書は,ひとえに皆様のご尽力とご支援の賜物であり,この場をお借りして,深い敬意と感謝の念を心より捧げます.
2025年5月
鈴木 利彦
しかしながら,腎不全の緩和ケアは,実臨床において極めて複雑かつ繊細な対応を要する領域です.患者の病状や価値観,社会背景に応じて治療方針を調整しつつ,生命予後・生活の質・患者の希望のバランスをいかに取るかは,私たち医療者にとって常に大きな課題であり続けています.本書における執筆作業は,そうした臨床の困難さに真正面から向き合っていただく内容であり,執筆の先生方にはご多忙のなか,大変なご負担をお願いすることとなりました.それにもかかわらず,いずれの先生方も真摯にご対応くださり,実践的かつ深い洞察に満ちた原稿をお寄せいただけたことに,深甚なる敬意と心からの感謝を申し上げます.
本書は,南山堂より刊行されている「EOLC for ALL すべての人にエンドオブライフケアの光を」シリーズとして企画されたものですが,腎不全という領域特有の倫理的・社会的課題を盛り込みながら,保存的腎臓療法conservative kidney management(CKM)や腎臓支持療法kidney supportive care(KSC)といった新たな概念を踏まえ,多職種連携による実践知を結集する,非常に困難な編集作業でもありました.私自身,「よりよい一冊を」という思いが先行するあまり,編集過程において,執筆の先生方をはじめ,編集の坂井正弘先生,編集協力の平原佐斗司先生,大武陽一先生,高井奈美先生,そして編集担当の佃和雅子さんには,ご多忙のなか,多大なご負担やご苦労をおかけしてしまった場面もあったかと存じます.それでも皆様は,ひたむきな姿勢と温かなご理解,惜しみないご協力をもって,本書の完成を支えてくださいました.刊行までに当初の予定を大きく超える時間を要したこともあり,その道のりの一歩一歩に,どれほど多くの献身と情熱が注がれてきたかを思うと,胸が熱くなる思いです.
皆様のご尽力なしには,本書の完成は到底なし得なかったことを,ここにあらためて明言したいと思います.本書は,ひとえに皆様のご尽力とご支援の賜物であり,この場をお借りして,深い敬意と感謝の念を心より捧げます.
2025年5月
鈴木 利彦
序文
本書は,腎不全患者への緩和ケアという,まさに黎明期にある分野に光を当てることを目指したものである.
2016年のがん対策基本法改正により,「がんその他の特定の疾病」という表現で非がんの緩和ケアが法律に明文化された.以降,緩和ケアを希求する様々な非がん疾患に対し,その手法が確立し,診療報酬を含めた仕組みが作られ,浸透していくものと思われた.しかしながら,後天性免疫不全症候群や重症の心不全以外の非がん疾患への緩和ケアの歩みは遅く,腎不全も同様である.
腎代替療法を実施していない保存期腎不全患者へのアプローチとして,保存的腎臓療法 conservative kidney management(CKM)が本邦にも伝わり,2022年6月に「高齢腎不全患者のための保存的腎臓療法―conservative kidney management(CKM)の考え方と実践―」が発刊されたのは記憶に新しい.腎不全における緩和ケア手法の確立に向け,着実な歩みと言える.一方で,腎不全患者全体を考えた場合,腎代替療法を実施している患者や,何らかの理由でそれを中断し,その後1〜2週間で天寿を全うする患者もおり,CKMが想定する対象のみでは不十分である.そこで,CKMだけではなく,腎代替療法を実施している患者を含めたアプローチである,腎臓支持療法 kidney supportive care(KSC)という概念が出てきた.
本書は,腎不全患者の緩和ケアに関わる腎臓内科医・透析医,在宅医,緩和ケア医,そして看護師が議論を重ね,KSCに関しての実践知をまとめた本邦初の書籍と言える.
まずPartⅠとして腎不全と緩和ケアの関わりや,その問題点について触れた.
PartⅡは腎不全の緩和ケアを考える際に必要になる事項を総論としてまとめている.
PartⅢでは腎不全患者への緩和ケアの実践を各論として解説した.多くの頁を割いており,本書が最も力を入れた部分である.
最後に,PartⅣでその他留意事項として遺伝性疾患や見取りの場,死因の考え方,そしてグリーフケアなどを取り上げた.
「鶏鳴暁を告げる」
本書が,腎不全患者の緩和ケアに関わる全ての人々にとって,羅針盤のような存在となり,患者が最期の時まで自分らしく,家族を含めた周囲の人々と共に,穏やかに過ごしてもらうための一助となれば幸いである.一方で,十分にコンセンサスの得られていない内容も含み,未完成で今後修正が必要なものであることは論を俟たない.本書が多くの批判をいただき,版を重ねるごとにさらに洗練された実践書となることを期待するばかりだ.
編集にあたり,無理難題をお願いし,筆労を賜った各執筆者の方々はもちろんのこと,多大なるご尽力を賜った協力編集の皆様,そして途中,五里霧中とも言える状況で的確なご指導を賜った鈴木 利彦先生には,この場を借りて,心より感謝申し上げます.また,本書の出版にあたり,貴重な機会をいただき,多大な労力を割いてくださった南山堂編集部 佃 和雅子氏に深謝いたします.
2025年5月
坂井 正弘
2016年のがん対策基本法改正により,「がんその他の特定の疾病」という表現で非がんの緩和ケアが法律に明文化された.以降,緩和ケアを希求する様々な非がん疾患に対し,その手法が確立し,診療報酬を含めた仕組みが作られ,浸透していくものと思われた.しかしながら,後天性免疫不全症候群や重症の心不全以外の非がん疾患への緩和ケアの歩みは遅く,腎不全も同様である.
腎代替療法を実施していない保存期腎不全患者へのアプローチとして,保存的腎臓療法 conservative kidney management(CKM)が本邦にも伝わり,2022年6月に「高齢腎不全患者のための保存的腎臓療法―conservative kidney management(CKM)の考え方と実践―」が発刊されたのは記憶に新しい.腎不全における緩和ケア手法の確立に向け,着実な歩みと言える.一方で,腎不全患者全体を考えた場合,腎代替療法を実施している患者や,何らかの理由でそれを中断し,その後1〜2週間で天寿を全うする患者もおり,CKMが想定する対象のみでは不十分である.そこで,CKMだけではなく,腎代替療法を実施している患者を含めたアプローチである,腎臓支持療法 kidney supportive care(KSC)という概念が出てきた.
本書は,腎不全患者の緩和ケアに関わる腎臓内科医・透析医,在宅医,緩和ケア医,そして看護師が議論を重ね,KSCに関しての実践知をまとめた本邦初の書籍と言える.
まずPartⅠとして腎不全と緩和ケアの関わりや,その問題点について触れた.
PartⅡは腎不全の緩和ケアを考える際に必要になる事項を総論としてまとめている.
PartⅢでは腎不全患者への緩和ケアの実践を各論として解説した.多くの頁を割いており,本書が最も力を入れた部分である.
最後に,PartⅣでその他留意事項として遺伝性疾患や見取りの場,死因の考え方,そしてグリーフケアなどを取り上げた.
「鶏鳴暁を告げる」
本書が,腎不全患者の緩和ケアに関わる全ての人々にとって,羅針盤のような存在となり,患者が最期の時まで自分らしく,家族を含めた周囲の人々と共に,穏やかに過ごしてもらうための一助となれば幸いである.一方で,十分にコンセンサスの得られていない内容も含み,未完成で今後修正が必要なものであることは論を俟たない.本書が多くの批判をいただき,版を重ねるごとにさらに洗練された実践書となることを期待するばかりだ.
編集にあたり,無理難題をお願いし,筆労を賜った各執筆者の方々はもちろんのこと,多大なるご尽力を賜った協力編集の皆様,そして途中,五里霧中とも言える状況で的確なご指導を賜った鈴木 利彦先生には,この場を借りて,心より感謝申し上げます.また,本書の出版にあたり,貴重な機会をいただき,多大な労力を割いてくださった南山堂編集部 佃 和雅子氏に深謝いたします.
2025年5月
坂井 正弘
目次
PartⅠ 腎不全と緩和ケア
1 ある腎不全患者の歩み
2 腎不全の緩和ケアとその特徴
A 緩和ケアとは?
B 末期腎不全に関するわが国および各国の疫学
C 高齢者に多いCKD―高齢化とそれにまつわる問題―
D 高齢者への透析導入の実際と透析見合わせ
E 腎不全患者のillness trajectory と緩和ケア
F 腎不全の緩和ケアにおける薬物療法の制限とポリファーマシー
G 腎代替療法の緩和ケアとしての側面
H 腎不全の緩和ケアと公的保障
I 腎不全患者の緩和ケアにおけるキーパーソンの不在
―最良のケア提供のためには,腎臓内科医,在宅医,緩和ケア医,そして多職種での協働が不可欠―
3 腎不全の緩和ケアに関するガイドライン
A 緩和ケアの歴史
B 腎不全患者への緩和ケアのあゆみ
C 腎不全の緩和ケアに関するガイドライン
4 保存的腎臓療法 conservative kidney management(CKM)
A 透析見合わせと人生の最終段階
B 透析見合わせに関する法的視点
C わが国,諸外国の透析非導入/中断の医療者視点
D 透析見合わせに関する患者視点
E これまでのCKMに関するわが国の動き
Opinion 1 腎臓内科医から見た腎不全患者の緩和ケアの現状と課題
―Disease-centered care から person-centered care へ!―
Opinion 2 緩和ケア医から見た腎不全緩和ケアの現状と課題
Opinion 3 在宅医から見た腎不全緩和ケアの現状と課題
Opinion 4 看護師から見た腎不全緩和ケアの現状と課題
Part Ⅱ 総 論
1 腎不全の病態と自然史
A 腎不全の経過
B 慢性経過の腎不全の症状と予後
C 急性経過の腎不全の症状と予後
D 腎不全患者の生命予後
2 腎不全の保存的治療と全身管理
A 慢性腎臓病の進行を抑える薬物療法
B 腎不全の合併症に対する薬物治療
C CKD患者の栄養管理
D 腎臓リハビリテーション
3 意思決定プロセスと共同意思決定(SDM)のあり方
A 透析の開始と継続に関する意思決定プロセス
B 共同意思決定(SDM)
―procedure oriented から goal oriented な考え方へ―
事例 「先生にお任せします」と言う末期腎不全患者へのSDM(60代男性)
Column 1 SDMの実践のためのコミュニケーションの技法
Column 2 Time limited trial(TLT)の活用
―不確実性と向き合うために―
4 腎代替療法の概要と選択
A 腎代替療法によって改善が期待できる苦痛や検査所見
B 腎代替療法の概要と適応
C 腎代替療法選択の進め方
D SDMの実践
E 適切な腎代替療法を行うための取り組み
F 透析の導入を患者が希望しない場合
5 腎不全患者の予後予測 ―生命予後,QOL・ADLを中心に―
A 緩和ケアにおける予後予測の重要性
B 末期腎不全の予後と腎代替療法・保存的腎臓療法
C 末期腎不全患者の予後をどう見積もるか?
事例1 緩やかな腎機能悪化を来たし,むくみと食欲低下が生じた腎硬化症の1例(80代男性)
事例2 導入後にADLと認知機能低下をきたし,透析のつらさを訴える維持透析中の1例(80代男性)
6 腎不全における意思決定支援と倫理・法的諸問題
A アドバンス・ケア・プランニング advance care planning (ACP)
事例1 外来でACPを繰り返し行ったCKD患者(80代男性)
B 腎不全患者とのコミュニケーション
事例2 30年来の高血圧症で通院中だが,経過中に腎機能低下をきたし紹介に至ったADL自立患者(60代男性)
C エンドオブライフ ケアの倫理
D 倫理カンファレンスとその実践
事例3 透析導入に際し,倫理的ジレンマを生じた高血圧性腎硬化症G5の患者(80代女性)
E 臨床倫理コンサルテーション
F 法的諸問題
7 腎不全患者の全人的苦痛への介入
A 緩和ケアの歴史,ニーズ,対象,およびアセスメント
B 身体的苦痛への対応
事例1 一度は拒否していた腎代替療法について再検討し,透析導入により身体症状が緩和されたケース(80代女性)
C 精神・心理的苦痛への対応
D 社会的苦痛への対応
E スピリチュアルな問題への対応
事例2 スピリチュアルケアを要した末期腎不全患者の1例(80代女性)
Column 3 腎不全患者を支えるための社会福祉制度
Part Ⅲ 各 論
1 腎代替療法を実施していない腎不全患者の緩和ケア(保存的腎臓療法を含む)
A CKMを行うにあたって
B 事 例
事例 専門外来へ通院していたが,CKDの進行に伴い在宅医療へ移行し,エンドオブライフ ケアを行ったケース(90代女性)
2 血液透析患者の緩和ケア
A 血液透析患者のエンドオブライフの特徴とその問題
B 血液透析の実施が困難,もしくは苦痛になってきた時に考えること
C 血液透析患者のエンドオブライフに特徴的な苦痛とその対処法
D 事 例
事例1 血液透析から腹膜透析へ移行し,自宅で最期を迎えた事例(80代女性)
事例2 血液透析離脱後,苦痛緩和をはかった事例(50代女性)
E 終末期の血液透析患者への看護ケア
3 腹膜透析患者の緩和ケア
A 疫学からみる日本の腹膜透析と今後の展望
B 高齢者,エンドオブライフにおける腹膜透析療法の安全性
C 腹膜透析のエンドオブライフの特徴とその問題点
D 腹膜透析の実施が困難,もしくは苦痛になった時に考えること
E 腹膜透析患者のエンドオブライフに特徴的な苦痛とその対処法
F 事 例
事例1 腹膜透析の導入で在宅看取りが可能となった腎がん患者(70代男性)
G 超高齢者の腎代替療法選択から腹膜透析看護の実際
事例2 「家でゆっくり過ごしたい」アシストPDの導入により想いをかなえることのできた末期腎不全の1例(90代女性)
4 腎移植患者の緩和ケア
A 腎移植における緩和ケアを考える
B 終末期の腎移植患者への看護ケア
5 高齢者の腎不全と緩和ケア
A 高齢者診療全般における特徴
B 老年病と腎不全
C 高齢腎不全患者のエンドオブライフの特徴と緩和ケアの実際
D 高齢の腎不全患者の看護ケア
E 事 例
事例1 ADLが低下し,サルコペニアを疑う所見がみられるようになった維持透析患者(70代女性)
事例2 認知症があり訪問診療での看取りを行った末期腎不全患者(80代女性)
事例3 多彩な苦痛に対処することで,透析非導入のまま自宅で最期を迎えることができた超高齢者(90代男性)
6 特殊病態下での緩和ケア
A 急性腎障害 acute kidney injury(AKI)
事例1 下部消化管穿孔による敗血症性ショックによりAKIを起こした1例(80代男性)
B 腎不全患者の末梢動脈疾患,慢性下肢虚血
事例2 糖尿病足病変から敗血症をきたした維持透析患者(50代女性)
C 常染色体顕性(優性)多発性囊胞腎
7 医療連携で実現する腎不全の緩和ケア
A 病院と透析クリニックそれぞれの立場と役割
B 生活の場にいる患者を支える連携体制
C 訪問看護の役割
事例1 独居,身寄りなし,透析継続を拒否し,自宅看取りしたケース(60代女性)
事例2 徐々に交換回数を減らし,施設で看取りしたPDラストのケース(90代男性)
事例3 妻と2人暮らし,認知症があり透析非導入で自宅看取りしたケース(70代男性)
D 人生の最終段階にある腎不全患者の在宅管理
事例4 透析離脱して在宅で看取った血液透析患者(80代女性)
事例5 透析困難があり,PDラストを選択して苦痛緩和をはかった血液透析患者(90代女性)
事例6 認知症があり,訪問看護によるアシストPDを導入し,最後まで継続しえたケース(70代男性)
事例7 がんを併発し,エンドオブライフ ケアを行った腎移植後患者(50代男性)
Part Ⅳ その他留意事項
1 遺伝性疾患
A 「遺伝性」の意味
B 疾患が「遺伝性」であることによる医学的影響
C 疾患が「遺伝性」であることによる心理的影響
D 疾患が「遺伝性」であることによる家族への影響
E 支援のあり方
F 緩和ケアと遺伝カウンセリング
2 看取りの場
A 腎不全患者の療養生活の場
B 望まれる療養生活の場
C 最期の時間を過ごす腎不全患者にとって望ましい療養生活の場
3 死因をどのように考えるか?
A 腎不全患者と死因
B 併存疾患を有する腎不全患者の死因
4 家族ケア
A 一人で意思決定ができないときの代理意思決定者の存在
B 本人の意思を表出しておく方法
C 認知症を有する患者の家族と共有しておくこと
D 保存期CKDの時期から家族の病の体験や習慣を知っておく
E 家族のレスパイトを忘れずに在宅調整を
F 看取りをする家族の満足度を上げる
事例 失語症と易怒性があり,想いの丁寧な確認と家族とのすり合わせを要したケース(60代男性)
G 一人一人のライフストーリーを描く支援
5 医療者の心のケア
A 患者の自殺と向き合う
B バーンアウトへの対策
C サイコネフロロジーの役割
事例 慢性腎臓病患者の自死に対して専門家を交えたデスカンファレンスを行った事例
索 引
1 ある腎不全患者の歩み
2 腎不全の緩和ケアとその特徴
A 緩和ケアとは?
B 末期腎不全に関するわが国および各国の疫学
C 高齢者に多いCKD―高齢化とそれにまつわる問題―
D 高齢者への透析導入の実際と透析見合わせ
E 腎不全患者のillness trajectory と緩和ケア
F 腎不全の緩和ケアにおける薬物療法の制限とポリファーマシー
G 腎代替療法の緩和ケアとしての側面
H 腎不全の緩和ケアと公的保障
I 腎不全患者の緩和ケアにおけるキーパーソンの不在
―最良のケア提供のためには,腎臓内科医,在宅医,緩和ケア医,そして多職種での協働が不可欠―
3 腎不全の緩和ケアに関するガイドライン
A 緩和ケアの歴史
B 腎不全患者への緩和ケアのあゆみ
C 腎不全の緩和ケアに関するガイドライン
4 保存的腎臓療法 conservative kidney management(CKM)
A 透析見合わせと人生の最終段階
B 透析見合わせに関する法的視点
C わが国,諸外国の透析非導入/中断の医療者視点
D 透析見合わせに関する患者視点
E これまでのCKMに関するわが国の動き
Opinion 1 腎臓内科医から見た腎不全患者の緩和ケアの現状と課題
―Disease-centered care から person-centered care へ!―
Opinion 2 緩和ケア医から見た腎不全緩和ケアの現状と課題
Opinion 3 在宅医から見た腎不全緩和ケアの現状と課題
Opinion 4 看護師から見た腎不全緩和ケアの現状と課題
Part Ⅱ 総 論
1 腎不全の病態と自然史
A 腎不全の経過
B 慢性経過の腎不全の症状と予後
C 急性経過の腎不全の症状と予後
D 腎不全患者の生命予後
2 腎不全の保存的治療と全身管理
A 慢性腎臓病の進行を抑える薬物療法
B 腎不全の合併症に対する薬物治療
C CKD患者の栄養管理
D 腎臓リハビリテーション
3 意思決定プロセスと共同意思決定(SDM)のあり方
A 透析の開始と継続に関する意思決定プロセス
B 共同意思決定(SDM)
―procedure oriented から goal oriented な考え方へ―
事例 「先生にお任せします」と言う末期腎不全患者へのSDM(60代男性)
Column 1 SDMの実践のためのコミュニケーションの技法
Column 2 Time limited trial(TLT)の活用
―不確実性と向き合うために―
4 腎代替療法の概要と選択
A 腎代替療法によって改善が期待できる苦痛や検査所見
B 腎代替療法の概要と適応
C 腎代替療法選択の進め方
D SDMの実践
E 適切な腎代替療法を行うための取り組み
F 透析の導入を患者が希望しない場合
5 腎不全患者の予後予測 ―生命予後,QOL・ADLを中心に―
A 緩和ケアにおける予後予測の重要性
B 末期腎不全の予後と腎代替療法・保存的腎臓療法
C 末期腎不全患者の予後をどう見積もるか?
事例1 緩やかな腎機能悪化を来たし,むくみと食欲低下が生じた腎硬化症の1例(80代男性)
事例2 導入後にADLと認知機能低下をきたし,透析のつらさを訴える維持透析中の1例(80代男性)
6 腎不全における意思決定支援と倫理・法的諸問題
A アドバンス・ケア・プランニング advance care planning (ACP)
事例1 外来でACPを繰り返し行ったCKD患者(80代男性)
B 腎不全患者とのコミュニケーション
事例2 30年来の高血圧症で通院中だが,経過中に腎機能低下をきたし紹介に至ったADL自立患者(60代男性)
C エンドオブライフ ケアの倫理
D 倫理カンファレンスとその実践
事例3 透析導入に際し,倫理的ジレンマを生じた高血圧性腎硬化症G5の患者(80代女性)
E 臨床倫理コンサルテーション
F 法的諸問題
7 腎不全患者の全人的苦痛への介入
A 緩和ケアの歴史,ニーズ,対象,およびアセスメント
B 身体的苦痛への対応
事例1 一度は拒否していた腎代替療法について再検討し,透析導入により身体症状が緩和されたケース(80代女性)
C 精神・心理的苦痛への対応
D 社会的苦痛への対応
E スピリチュアルな問題への対応
事例2 スピリチュアルケアを要した末期腎不全患者の1例(80代女性)
Column 3 腎不全患者を支えるための社会福祉制度
Part Ⅲ 各 論
1 腎代替療法を実施していない腎不全患者の緩和ケア(保存的腎臓療法を含む)
A CKMを行うにあたって
B 事 例
事例 専門外来へ通院していたが,CKDの進行に伴い在宅医療へ移行し,エンドオブライフ ケアを行ったケース(90代女性)
2 血液透析患者の緩和ケア
A 血液透析患者のエンドオブライフの特徴とその問題
B 血液透析の実施が困難,もしくは苦痛になってきた時に考えること
C 血液透析患者のエンドオブライフに特徴的な苦痛とその対処法
D 事 例
事例1 血液透析から腹膜透析へ移行し,自宅で最期を迎えた事例(80代女性)
事例2 血液透析離脱後,苦痛緩和をはかった事例(50代女性)
E 終末期の血液透析患者への看護ケア
3 腹膜透析患者の緩和ケア
A 疫学からみる日本の腹膜透析と今後の展望
B 高齢者,エンドオブライフにおける腹膜透析療法の安全性
C 腹膜透析のエンドオブライフの特徴とその問題点
D 腹膜透析の実施が困難,もしくは苦痛になった時に考えること
E 腹膜透析患者のエンドオブライフに特徴的な苦痛とその対処法
F 事 例
事例1 腹膜透析の導入で在宅看取りが可能となった腎がん患者(70代男性)
G 超高齢者の腎代替療法選択から腹膜透析看護の実際
事例2 「家でゆっくり過ごしたい」アシストPDの導入により想いをかなえることのできた末期腎不全の1例(90代女性)
4 腎移植患者の緩和ケア
A 腎移植における緩和ケアを考える
B 終末期の腎移植患者への看護ケア
5 高齢者の腎不全と緩和ケア
A 高齢者診療全般における特徴
B 老年病と腎不全
C 高齢腎不全患者のエンドオブライフの特徴と緩和ケアの実際
D 高齢の腎不全患者の看護ケア
E 事 例
事例1 ADLが低下し,サルコペニアを疑う所見がみられるようになった維持透析患者(70代女性)
事例2 認知症があり訪問診療での看取りを行った末期腎不全患者(80代女性)
事例3 多彩な苦痛に対処することで,透析非導入のまま自宅で最期を迎えることができた超高齢者(90代男性)
6 特殊病態下での緩和ケア
A 急性腎障害 acute kidney injury(AKI)
事例1 下部消化管穿孔による敗血症性ショックによりAKIを起こした1例(80代男性)
B 腎不全患者の末梢動脈疾患,慢性下肢虚血
事例2 糖尿病足病変から敗血症をきたした維持透析患者(50代女性)
C 常染色体顕性(優性)多発性囊胞腎
7 医療連携で実現する腎不全の緩和ケア
A 病院と透析クリニックそれぞれの立場と役割
B 生活の場にいる患者を支える連携体制
C 訪問看護の役割
事例1 独居,身寄りなし,透析継続を拒否し,自宅看取りしたケース(60代女性)
事例2 徐々に交換回数を減らし,施設で看取りしたPDラストのケース(90代男性)
事例3 妻と2人暮らし,認知症があり透析非導入で自宅看取りしたケース(70代男性)
D 人生の最終段階にある腎不全患者の在宅管理
事例4 透析離脱して在宅で看取った血液透析患者(80代女性)
事例5 透析困難があり,PDラストを選択して苦痛緩和をはかった血液透析患者(90代女性)
事例6 認知症があり,訪問看護によるアシストPDを導入し,最後まで継続しえたケース(70代男性)
事例7 がんを併発し,エンドオブライフ ケアを行った腎移植後患者(50代男性)
Part Ⅳ その他留意事項
1 遺伝性疾患
A 「遺伝性」の意味
B 疾患が「遺伝性」であることによる医学的影響
C 疾患が「遺伝性」であることによる心理的影響
D 疾患が「遺伝性」であることによる家族への影響
E 支援のあり方
F 緩和ケアと遺伝カウンセリング
2 看取りの場
A 腎不全患者の療養生活の場
B 望まれる療養生活の場
C 最期の時間を過ごす腎不全患者にとって望ましい療養生活の場
3 死因をどのように考えるか?
A 腎不全患者と死因
B 併存疾患を有する腎不全患者の死因
4 家族ケア
A 一人で意思決定ができないときの代理意思決定者の存在
B 本人の意思を表出しておく方法
C 認知症を有する患者の家族と共有しておくこと
D 保存期CKDの時期から家族の病の体験や習慣を知っておく
E 家族のレスパイトを忘れずに在宅調整を
F 看取りをする家族の満足度を上げる
事例 失語症と易怒性があり,想いの丁寧な確認と家族とのすり合わせを要したケース(60代男性)
G 一人一人のライフストーリーを描く支援
5 医療者の心のケア
A 患者の自殺と向き合う
B バーンアウトへの対策
C サイコネフロロジーの役割
事例 慢性腎臓病患者の自死に対して専門家を交えたデスカンファレンスを行った事例
索 引