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カテゴリー: 循環器学  |  臨床看護学

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実践から識る! 心不全緩和ケアチームの作り方

1版

兵庫県立姫路循環器病センター 循環器内科 大石醒悟 編
久留米大学医学部内科学講座 心臓・血管内科部門 柴田龍宏 編
国立循環器病研究センター 看護部 高田弥寿子 編

定価

3,300(本体 3,000円 +税10%)


  • B5判  161頁
  • 2018年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-24861-1

「自分達でも工夫することで実践できる」チームの作り方を考えよう!

心不全患者さんに緩和ケアを提供したい!そう考えても実際は,誰に相談すればよいか,院内にがん緩和ケアのチームがある場合,そことどういう関係になるのか.逆に院内に緩和ケア医がいない,などさまざまな課題がある.先駆的に取り組んできた施設の多様な実践例をこの本で学び,自分達が工夫,実践できるチームを考えよう.

  • 刊行によせて
  • 序文
  • 目次
刊行によせて
 近年,循環器診療は目覚ましい進歩を遂げ,冠動脈だけでなく大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症に対してもカテーテル治療が行われるようになり,植込み型除細動器や心臓再同期療法なども発達し,心臓移植待機時の植込み型補助人工心臓も急速に普及しつつある.しかしながら高齢化社会の進行とともに心不全患者数は急増しており,これら全ての手段をもってしても治癒させることができない,あるいは適応とならない症例が年々増加している.米国においては,植込み型補助人工心臓のデスティネーション治療が急速に進んだ結果,これらの症例に対する終末期ケアが大きな課題となっている.
 これまで,心不全は良性疾患であると一般的に認識されてきた.実際に心不全症状そのものは,集中治療によって速やかに改善することから,急性増悪による入退院を繰り返していながらも,終末期を含めた将来の状態の変化に備えるためのアドバンス・ケア・プランニング(ACP)といわれるプロセスは,ほとんど普及していない.また,循環器治療のみで改善できない呼吸困難や倦怠感,不安や抑うつに対してどのように対応すべきか,治療の差し控えなどに関する倫理的問題をどう解決すべきかなど,救命救急と緩和ケアの狭間で,多くの医師は悩んでいるのが現状である.
 このような状況のもと,心不全に対する緩和ケアの重要性をいち早く認識し,ガイドラインに準じた適切な心不全治療を行いつつも,全人的苦痛に苛まれている患者に対して何をすべきなのか,必死に取り組んできたのがまさに本書の編者・執筆者達である.身体的のみならず,心理・社会的な苦痛などの問題を早期に発見し,的確なアセスメントと対処を行うことによって,苦しみを予防し和らげ,クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を改善するために何ができるか,質の高い緩和ケアを心不全治療とどのように両立すべきかについて,本書では多職種の立場から具体的に記載されている.また,循環器医と緩和ケア医は従来,協働作業を行う機会が少なかったが,どのように連携してチーム医療を行っていくかに関しても,条件の異なる様々な施設の取り組みを詳細に紹介することで,わかりやすく解説されている.
 本書をもとに全国において心不全緩和ケアチームが一つでも多く作られ,質の高い緩和ケアによって,一人でも多くの心不全患者ならびに家族のQOLが改善されることを期待している.

北海道大学大学院医学研究院
循環病態内科学教室 教授
安斉俊久
序文
 医療の発展は循環器診療において急性心筋梗塞の救命率向上や,不整脈治療による症状改善など多くの恩恵をもたらしてきた.
 一方で,皮肉にもあらゆる心疾患の行く末にある心不全は,進行性の難治性疾患として増加の一途を辿っている.そのような中,全人的苦痛へ介入し,QOLを改善するアプローチである「緩和ケア」が,心不全においても治療と並行して提供されるべき医療であることが徐々に認知され,2018年には本邦の心不全ガイドラインにおいて終末期心不全におけるadvance care planning(ACP)の実施ならびに症状緩和はclass Ⅰ(有効・有用であるという見解が広く一致している)として明記され,社会的にも特定の要件を満たす末期心不全に対する緩和ケア提供が保険償還されるに到った.
 しかし,心不全の緩和ケア提供の方法論に関する議論は未成熟であり,誰が,いつ,どのように,何を目的として行うべきであるのか,明確な解答は存在しておらず,苦悩を抱えながら現場の医療者は目前の課題に取り組んでいる.
 本書は本邦で先駆的に心不全の緩和ケアに取り組んでいる多様な施設の実践を知ることで,読者の皆様が「自分達でも工夫をすることで実践できる」チームの作り方について識り,考えて頂くことを念頭に,1章で緩和ケア医と循環器医の双方の立場から心不全緩和ケアの概論を,2章でチームの意義と各職種の役割について,3章で多職種の専門性を活かすための知識である合意形成と臨床倫理について,そして4章で多様な施設の取り組みの具体について執筆頂いた.多忙な業務の中,執筆頂いた諸氏の本書における尽力は感謝の念に堪えない.
 心不全の緩和ケアの実践は“このようにしなくてはならない”という定型的なものでなく,患者,家族,地域で利用可能な医療資源,さらには社会のニーズに合わせてその形態は変化するものであり,それこそが多職種で実践するチーム医療の醍醐味である.
 本書は心不全の緩和ケアの方法論に対する明確な回答を提供するものではないかもしれない.しかし,各施設の取り組みを知ることは必ずや読者に前へ進む知恵をもたらしてくれるはずである.多職種チームは存在するだけでは意義はない.質の高い心不全の緩和ケアを提供するために,チームで共有し,実践するべきことはどのようなものか,是非本書を参考に語り合って頂ければと編者一同願っている.
 最後に,企画から出版に至るまで辛抱強くご尽力頂いた,佃 和雅子氏はじめ南山堂の方々に感謝申し上げ発刊の挨拶とさせて頂く.

2018年5月
大石醒悟
柴田龍宏
高田弥寿子

目次
1章 心不全緩和ケア概論
 A 緩和医療学の変遷と非がんの緩和ケア
 B なぜ今,心不全の緩和ケアが必要とされるのか?
 C 緩和ケア医の立場からみた,心不全緩和ケアの役割とその対象
 D.循環器医の立場からみた,心不全緩和ケアの役割とその対象

2章 チームに期待されるもの,各メンバーの役割
 A 質の高い緩和ケアチームとは
 B 心不全の緩和ケアを実践するチームを作る場合の留意点
 C 心不全の緩和ケアにおける循環器内科医の役割とは
 D 緩和ケア医の役割
 E 看護師の役割
 F 薬剤師の役割と薬物療法
 G 理学療法士の役割
 H 管理栄養士の役割
 I 医療ソーシャルワーカーの役割
 J 心理士の役割

3章 チームで実践する意思決定支援とチーム内の合意形成
 A 意思決定支援と合意形成
 B 合意形成の手段としての信念対立解明アプローチ
 C 合意形成における臨床倫理

4章 チームの紹介
 A 国立循環器病研究センター
   -緩和ケア医のいない緩和ケアチーム-
 B 兵庫県立姫路循環器病センター
   -常勤緩和ケア医がいない緩和ケアチーム-
 C 久留米大学病院
   -既存の緩和ケアチームと協働する心不全緩和ケアチーム-
 D 亀田総合病院
   -心不全,緩和ケア両チームの取り組みと連携の現状-
 E 飯塚病院
   -総合診療医の活躍する緩和ケアチーム-
 F 三菱京都病院
   -さまざまな変遷を経て確立された総合病院における心不全緩和ケアチーム-
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