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カテゴリー: 循環器学  |  癌・腫瘍学

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心臓腫瘍学

1版

信州大学医学部外科学講座・心臓血管外科 教授 天野 純 総編集
信州大学大学院医学系研究科分子病理学分野 教授 中山 淳 編集
信州大学大学院医学系研究科循環器病態学分野 教授 池田宇一 編集

定価

22,000(本体 20,000円 +税10%)


  • B5判  423頁
  • 2011年10月 発行
  • ISBN 978-4-525-24361-6

心臓腫瘍は循環器領域でもまれな疾患であるが、特に代表的である心臓粘液腫の病理組織像や臨床経過の多彩さは多くの物語として臨床医の間で語り伝えられている.
本書は臨床的重要性を基軸に置いた心臓腫瘍の分類をし、豊富な疾患を数多くの臨床像・病理像を用いて解説したわが国初となる“心臓腫瘍”の成書である.

  • 序文
  • 目次
序文
 心臓腫瘍は稀な腫瘍で,循環器を専門とする医師でも生涯経験することが少なく,症例報告されることはあっても体系的な研究の対象とはならず,病理診断がつけば見捨てられる運命にある.一概に心臓腫瘍といっても,良性腫瘍,悪性腫瘍があり,心臓粘液腫,乳頭状線維弾性腫などは,心臓以外の組織で対応する病変がなく,また心臓腫瘍のなかには組織発生からして真の腫瘍かどうか明らかにされていない病変も存在する.
 心臓腫瘍は非常に多彩で腫瘍類似病変まで含めると50種類以上の病変が報告されており,その頻度は日本胸部外科学会の年次統計では年間約500症例が手術対象となっており,手術ができない進行性原発性悪性腫瘍や転移性腫瘍などを加えるとさらに多くの症例がわが国で毎年経験されているものと考えられる.このように心臓腫瘍の報告が蓄積されるにつれて病態や分子生物学的特性が明らかになり,画像診断などの診断技術の進歩によって生前に心臓腫瘍と診断されて外科的に摘出されたり,悪性腫瘍では化学療法や放射線治療が行われ新たな知見が得られつつある.なかでも,心臓粘液腫,横紋筋腫や傍神経節腫などでは遺伝子の関与が明らかになり,遺伝子解析が正確な診断やカウンセリングなどに役立っている.
 心臓腫瘍によっては重篤な症状を呈し,突然死の原因となるため心臓腫瘍と診断し適切な治療を行うことはきわめて重要で,診断,治療を中心とした心臓腫瘍に関する成書の出版が待たれていた.そのような観点から心臓腫瘍に関する学問の発展を期待して「心臓腫瘍学」を提唱するとともに,本書を世に出すことは時宜を得たものと考える.
 本書では,臨床に役立つように腫瘍類似疾患や腫瘍と鑑別を要する疾患も含めて「症例」を重視し,最新の知見を「トピックス」としてわかりやすく解説した.しかし,本書の編者や著者を含めて心臓腫瘍学者というものがこの世に存在しないため,読者諸氏のご意見やご批判をいただきながら「心臓腫瘍学」の発展を願うものである.

 最後に,ご多忙にもかかわらずご執筆いただいたそれぞれの腫瘍の第一人者の先生方に深甚なる感謝の意を捧げるとともに,編集をご担当いただいた中山 淳先生,池田宇一先生,悪性腫瘍についてご校閲いただいた吉村康夫先生のご尽力と,南山堂の秡川 亮氏の編集の遂行と励ましに心より感謝申し上げる.
 また,本書を刊行するに当たり,心臓腫瘍にご造詣が深く長年にわたってご指導いただいた永井良三先生に「刊行によせて」の一文をいただいたことは望外の喜びである.

2011年8月
編著者を代表して
天野 純
目次
第1編 心臓腫瘍学総論

第1章 心臓腫瘍の分類
第2章 心臓腫瘍の疫学・頻度

第2編 心臓腫瘍学各論

第1章 良性腫瘍
●心腫瘍●

心臓に特徴的な腫瘍
1.心臓粘液腫 Cardiac myxoma
2.乳頭状線維弾性腫 Papillary fibroelastoma

筋細胞への分化を示す腫瘍および腫瘍類似病変
3.横紋筋腫 Rhabdomyoma
4.類組織球性心筋症 Histiocytoid cardiomyopathy

線維芽細胞・筋線維芽細胞への分化を示す腫瘍
5.心臓線維腫 Cardiac fibroma
6.炎症性筋線維芽細胞腫 Inflammatory myofibroblastic tumor/炎症性偽腫瘍 Inflammatory pseudotumor

血管・リンパ管への分化を示す腫瘍
7.血管腫 Hemangioma
8.血管筋脂肪腫 Angiomyolipoma
9.血管周皮腫 Hemangiopericytoma
10.リンパ管腫 Lymphangioma

脂肪細胞への分化を示す腫瘍および腫瘍類似病変
11.脂肪腫様過形成 Lipomatous hypertrophy
12.脂肪腫 Lipoma
13.Lipomatous hamartoma of cardiac valves

神経細胞・神経線維への分化を示す腫瘍
14.顆粒細胞腫 Granular cell tumor
15.傍神経節腫 Paraganglioma
16.神経線維腫 Neurofibroma
17.神経鞘腫 Schwannoma/Neurilemoma

その他の心腫瘍および腫瘍類似病変
18.奇形腫 Teratoma
19.過誤腫 Hamartoma
20.Cystic tumor of the atrioventricular nodal region

●心膜に特徴的な腫瘍および腫瘍類似病変●
21.心膜孤在性線維性腫瘍 Solitary fibrous tumor of the pericardium
22.中皮性乳頭腫 Mesothelial papilloma
23.心膜嚢腫 Pericardial cyst


第2章 悪性腫瘍
●原発性心腫瘍●
1.血管肉腫 Angiosarcoma
2.心臓内膜肉腫 Cardiac intimal sarcoma
3.類上皮血管内皮腫 Epithelioid hemangioendothelioma
4.悪性線維性組織球腫 Malignant fibrous histiocytoma/未分化多形性肉腫 Undifferentiated pleomorphic sarcoma
5.骨肉腫 Osteosarcoma
6.横紋筋肉腫 Rhabdomyosarcoma
7.平滑筋肉腫 Leiomyosarcoma
8.線維肉腫 Fibrosarcoma/粘液線維肉腫 Myxofibrosarcoma
9.滑膜肉腫 Synovial sarcoma
10.脂肪肉腫 Liposarcoma
11.悪性末梢神経鞘腫 Malignant peripheral nerve sheath tumor
12.悪性リンパ腫 Malignant lymphoma

●転移性心腫瘍●
13.直接浸潤 Direct invasion
14.遠隔転移 Distant metastasis

●血管内進展腫瘍●
15.腎 癌 Renal cell carcinoma
16.子宮腫瘍 Uterine tumor

●心膜腫瘍●
17.悪性中皮腫 Malignant mesothelioma
18.造血器腫瘍の心膜浸潤

第3章 異所形成/異所性組織腫瘍・その他
1.異所性甲状腺 Thyroid heterotropia/Ectopic thyroid/Aberrant goiter
2.気管支嚢胞 Bronchogenic cyst
3.心嚢内胸腺腫 Intrapericardial thymoma/Pericardial thymoma
4.Mesothelial/Monocyte incidential cardiac excrescence;MICE
5.血液嚢胞 Blood cyst
6.IgG4関連疾患と腫瘍様病変 IgG4 related sclerosing disease and inflammatory pseudotumor
7.免疫不全関連リンパ増殖性疾患 Immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders
8.血 栓 Thrombus


第4章 大血管の腫瘍
1.大動脈内膜肉腫 Aortic intimal sarcoma
2.その他の大動脈腫瘍 Aortic neoplasms except intimal sarcoma
3.肺動脈肉腫 Pulmonary sarcoma
4.静脈肉腫 Sarcoma of venous origin
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