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とことん極める!腎盂腎炎

1版

長野広之 編
徳田嘉仁 編

定価

4,400(本体 4,000円 +税10%)


  • B5判  221頁
  • 2022年11月 発行
  • ISBN 978-4-525-23921-3

おしっこ本,ここに極まれり!

日常診療において臨床医が腎盂腎炎を考えない日はないと言っても過言ではありません.救急外来や入院診療,そして在宅医療などで発熱の鑑別に腎盂腎炎を入れないことはないと思います.「尿が汚くて熱があれば……腎盂腎炎!」と思っていたら実は別の疾患で痛い目にあったという経験をされた方もいるのではないでしょうか.診断以外にも抗菌薬治療や合併症の検索,再発予防は発熱診療の基本でありますが,だからこそ極め甲斐のあるものとなっています.
ありふれた疾患がゆえに,「いつも通り」に対処しがちな疾患かもしれませんが,これを機に腎盂腎炎診療を見直してみませんか?

  • 序文
  • 目次
  • 書評
序文
 月刊誌 治療で『とことん極める! 腎盂腎炎』を特集したのは 2021 年 9 月でした.当時,誤嚥性肺炎診療が大変盛り上がっており,雑誌での特集や書籍の刊行などが相次いでいました.それらの本を読みながら同じくらい発熱の原因としてコモンな腎盂腎炎について深めたいと思ったのが特集を組んだきっかけです.
 臨床医が日常診療で腎盂腎炎を考えない日はないと言っても過言ではありません.救急外来や入院診療,そして在宅医療などで腎盂腎炎を発熱の鑑別に入れないことはないと思います.「尿が汚くて熱があれば……腎盂腎炎!」といったように簡単に考えられることもありますが,診断にはほかの疾患の除外が必要です.腎盂腎炎だと思っていたら実は別の疾患で痛い目にあったという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか.診断以外にも抗菌薬治療や合併症の検索,再発予防などは腎盂腎炎診療の基本でありながら大変奥深く,一朝一夕には身に付けられるものではありません.
 そんな腎盂腎炎を扱った特集の内容がパワーアップして帰ってきました.腎盂腎炎に関するエコー検査,頻繁に使うセフトリアキソンの注意点,抗菌薬内服へのスイッチのタイミング,尿から耐性菌が出た場合の感染対策など,かゆいところに手が届く項目が増えています.また他職種の方々に尿道カテーテルや自己導尿,排尿ケアチーム,そして薬剤に関する連携についてまとめていただきました.
 本書籍が皆様の腎盂腎炎診療に役立ち,そして発熱診療や感染症教育の質の向上に繋がれば幸いです.

2022年10月
長野広之
目次
Ⅰ 総 論
 1 たかが腎盂腎炎……されど腎盂腎炎!

Ⅱ 腎盂腎炎の診断編
 2 問診を極める
 3 悪寒戦慄ってどれくらい重要ですか?
 4 身体診察を極める ─ CVA 叩打痛って役に立ちますか? ─
 5 尿検査を極める ─ 尿検査でどこまで迫れますか? ─
 6 グラム染色を極める ─ グラム染色で注意するポイントはなんですか? ─
 7 単純性と複雑性腎盂腎炎の見分け方を極める
 8 閉塞性腎盂腎炎の診断方法を極める
 9 腎盂腎炎に対するエコー検査を極める ─ 水腎以外何をみたらいいですか? ─
 10 腎盂腎炎の診断における CT 所見を極める ─ 腎周囲がもやもやしてたら腎盂腎炎ですか? ─
 11 前立腺炎の診断を極める ─ 高齢男性って難しくないですか? ─

Ⅲ 腎盂腎炎の治療,マネジメント編
 12 単純性腎盂腎炎における抗菌薬の選択と治療期間,治療方法を極める
 13 複雑性腎盂腎炎における抗菌薬の選択と治療期間,治療方法を極める
 14 腎盂腎炎のときによく使う抗菌薬セフトリアキソンを極める!
 15 腎盂腎炎に対する内服抗菌薬を極める ─ スイッチのタイミングなど ─
 16 前立腺炎合併時の治療選択と治療期間を極める
 17 腎膿瘍合併時の治療期間,ドレナージの適応について極める
 18 尿管ステントを極める ─ 種類,適応,コンサルトのタイミング ─
 19 治療効果判定・経過観察について極める ─ 経過がよくないときの鑑別まで ─
 20 耐性菌が出ているけど臨床経過のよい腎盂腎炎に遭遇したら
 21 尿グラム染色でグラム陽性球菌が見えたとき何を考える?
 22 尿から嫌気性菌が発育したら何を考える?
 23 尿から検出され得る薬剤耐性菌について極める
 24 尿から耐性菌が出た場合の感染対策を極める ─ 病棟から在宅まで ─

Ⅳ 腎盂腎炎の再発予防編
 25 再発予防のためのバルーンの交換頻度 ─ そもそも定期交換は必要ですか? ─
 26 若い女性への再発予防の指導方法について ─ 実際どう指導していますか? ─
 27 尿路感染を起こしやすいリスクファクターへの介入
 28 クランベリーって意味あるの? ─ 再発予防に使える薬剤,その他について ─

Ⅴ 腎盂腎炎のtips編
 29 閉塞+ウレアーゼ産生菌による腎盂腎炎は,意識障害を起こす?
 30 尿臭,尿色は尿路感染に関連するのか?
 31 尿培養から真菌が発育したら?
 32 嚢胞内感染,どう診断・治療する?
 33 気腫性膀胱炎 / 気腫性腎盂腎炎とは?
 34 尿路感染症の治療に“尿道バルーンカテーテル留置/交換”は必要か?
 35 無症候性細菌尿と尿路感染の区別はどうする?
 36 透析患者で注意する尿路感染症(膀胱膿症) ─ 無尿なのに膀胱内に液体が!? ─
 37 小児の腎盂腎炎 ─ 採尿方法や小児という背景の差への理解 ─
 38 在宅医療における腎盂腎炎
 39 在宅での尿道カテーテル管理と抜去
 40 腎盂腎炎とマルチモビディティ
 41 尿道カテーテル留置のコツ ─ うまくカテーテルが入らないときのtips ─
 42 尿閉解除後の post obstructive diuresis と血尿について

Ⅵ 多職種連携編
 43 尿道カテーテルと看護,管理方法について
 44 自己導尿の指導方法
 45 排尿ケアチーム
 46 腎盂腎炎マネジメントにおける薬剤師の視点
書評
明日からの尿路感染症診療が楽しくなる一冊!

石丸裕康(関西医科大学香里病院 総合診療科 部長)

 尿路感染は,ありふれた疾患だけど,なかなか奥深い.発熱+意識障害で,髄膜炎を疑われ腰椎穿刺したけど正常,結局腎盂腎炎+敗血症+せん妄だった,腎盂腎炎と思って治療していたら感染性心内膜炎だった,治ったと思っていたら再燃した,など思い出してみるだけでもいろいろピットフォールがある.
 こうしたピットフォールを回避する知恵は,臨床現場で口伝のように伝えられていて,「尿路感染は除外診断のうえで成立する」とか「尿培でグラム陽性球菌がでたらまず感染性心内膜炎を除外」とか自分も教えられたことをそのまま指導してきた.考えてみると,こんなにも多い疾患なのに,いまひとつ地味な扱いで,尿路感染症を主なテーマにした雑誌の特集はほとんどみかけたことがない.
 本書はまさにその腎盂腎炎をテーマとした雑誌「治療」2021年9月号の特集をベースに,腎盂腎炎/尿路感染症について「とことん極めた」一冊である.一読して,臨床現場の尿路感染診療で疑問になりそうな問題をおおよそ網羅し,かつ「臨床の知恵」が詰まった内容だと感じた.とくに薦めたいポイントは以下の3つである.

①基本的知識をより深く,確実にする臨床推論の王道である問診,身体所見にはじまり,尿検査,グラム染色・培養の解釈,画像所見,マネジメントなど,基本的な事項がさらに深く掘り下げられ,漠然とした知識がエビデンスに基づいた確実な知識となる内容である.
②臨床現場の疑問が広く取り扱われている
「耐性菌が出たけど臨床的によくなっている,どうする?」とか「尿から嫌気性菌が発育」とか,「そういえばこういうことで悩んだな」といったテーマが多数取り上げられ,臨床現場で生じるさまざまな疑問に広く答えている.
③多職種連携の視点
ドレナージ,ステントなど難治例での泌尿器科医との連携はもちろん,看護師,臨床検査技師,薬剤師との連携は大変重要なテーマである.本書ではさまざまな専門・職種の医療従事者が執筆しており,多職種連携を一つのカテゴリーとしてとりあげるなど,チーム医療に配慮している点が出色である.

 毎日のように経験する尿路感染診療を,より深く,より楽しく診療できる一冊であり,尿路感染の診療にかかわるすべての職種にお薦めしたい.
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