スチュワート法で紐解く酸塩基平衡
1版
国立成育医療研究センター 手術・集中治療部 壷井伯彦 著
定価
3,960円(本体 3,600円 +税10%)
- B5判 136頁
- 2025年11月 発行
- ISBN 978-4-525-21531-6
実際どう使うかがわかる! スチュワート法の基礎と実践
「酸塩基平衡を勉強しても,なぜか“もやもや”が残る」――そんな経験はありませんか?
本書は,スチュワート法の基礎理論から臨床応用まで,手取り足取りわかりやすく解説する実践書です.Physiological approach や BE法といった従来の考え方も整理し直し,複雑に見える数式もすっきり理解できるようになります.
さらに,糖尿病性ケトアシドーシスや水中毒など多彩な症例を取り上げ,臨床現場で酸塩基平衡をどのように考えるかを具体的に示しました.購入者特典として「SIG計算シート」や近未来のpHを予測できる「pH計算シート」も利用でき,数値を操作しながら理解を深められます.
読み進めるうちに,“もやもや”は“納得”へと変わり,一段上のステージから酸塩基平衡異常を見渡せるようになる一冊です.
- 序文
- 目次
- 書評
- 書評
序文
本書を手に取っていただき誠にありがとうございます.本書では,医学の酸塩基平衡につきまとう“ もやもや” を晴らすべく,スチュワート法に焦点をあてて,できるだけ明解に酸塩基平衡の解説を試みました.
スチュワート法について聞いたことがない方も,一度は勉強したことがある方もぜひ本書をご一読いただければと思います.スチュワート法はパラメータが多く,一見すると複雑に見えますが,実は「陽イオンの電荷合計」と「陰イオンの電荷合計」が等しいという単純明快な原理原則から酸塩基平衡を考えていく方法です.ごまかしや曖昧さがなく,数学的な感覚で理解することができます.
本書の内容は以下のようになっています.
1章は導入編です.
2章ではスチュワート法について詳しく解説しています.
3章ではスチュワート法の観点からPhysiological approach やBE(base excess)法を見直しています.
4章では架空の症例を作成して,酸塩基平衡の理解が進むように工夫しました.
5章では少し足を延ばして血漿浸透圧についても解説しました.イオンの粒々に,尿素とブドウ糖の粒々を足せばそれが血漿浸透圧になりますので,酸塩基平衡の延長線上に整理することができます.糖尿病性ケトアシドーシスのように,酸塩基平衡と血漿浸透圧の両方に気を配る必要がある病態もよくありますもんね.
6章は,実際の症例ベースで酸塩基平衡障害にどのように対応していけばよいのか,時系列に沿って追体験できるような内容としました.
7章はおまけです.
また,本書をご購入いただけると,南山堂のウェブサイトから,本書の中で紹介している「SIG計算シート」と「pH計算シート」をダウンロードすることができます.特にpH計算シートは私のオリジナルで,近未来のpHが計算できる仕組みとなっています.このpH計算シートでさまざまなパラメータを動かしつつ近未来のpH計算を体験すると,酸塩基平衡の成り立ちが手に取るように理解できるようになります.すると,私がそうであったように,皆さんもきっと酸塩基平衡を一段上のステージから俯瞰することができるようになるでしょう.
本書の内容を少しでも日常臨床に役立てていただければ幸いです.
2025年10月
壷井 伯彦
スチュワート法について聞いたことがない方も,一度は勉強したことがある方もぜひ本書をご一読いただければと思います.スチュワート法はパラメータが多く,一見すると複雑に見えますが,実は「陽イオンの電荷合計」と「陰イオンの電荷合計」が等しいという単純明快な原理原則から酸塩基平衡を考えていく方法です.ごまかしや曖昧さがなく,数学的な感覚で理解することができます.
本書の内容は以下のようになっています.
1章は導入編です.
2章ではスチュワート法について詳しく解説しています.
3章ではスチュワート法の観点からPhysiological approach やBE(base excess)法を見直しています.
4章では架空の症例を作成して,酸塩基平衡の理解が進むように工夫しました.
5章では少し足を延ばして血漿浸透圧についても解説しました.イオンの粒々に,尿素とブドウ糖の粒々を足せばそれが血漿浸透圧になりますので,酸塩基平衡の延長線上に整理することができます.糖尿病性ケトアシドーシスのように,酸塩基平衡と血漿浸透圧の両方に気を配る必要がある病態もよくありますもんね.
6章は,実際の症例ベースで酸塩基平衡障害にどのように対応していけばよいのか,時系列に沿って追体験できるような内容としました.
7章はおまけです.
また,本書をご購入いただけると,南山堂のウェブサイトから,本書の中で紹介している「SIG計算シート」と「pH計算シート」をダウンロードすることができます.特にpH計算シートは私のオリジナルで,近未来のpHが計算できる仕組みとなっています.このpH計算シートでさまざまなパラメータを動かしつつ近未来のpH計算を体験すると,酸塩基平衡の成り立ちが手に取るように理解できるようになります.すると,私がそうであったように,皆さんもきっと酸塩基平衡を一段上のステージから俯瞰することができるようになるでしょう.
本書の内容を少しでも日常臨床に役立てていただければ幸いです.
2025年10月
壷井 伯彦
目次
1章 酸塩基平衡の迷宮から抜け出そう
1.酸塩基平衡の入り口
2.スチュワート法との出会い
3.高校化学の復習
2章 スチュワート法を理解しよう
1.スチュワート原法
2.ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式の導出
3.スチュワート改変法
4.SIG計算
5.近未来のpH予想
3章 スチュワート法で考えてみよう
1.もう一度Physiological approach
2.BE法
3.簡易スチュワート法
4章 酸塩基平衡の理解を深めよう
1.酸塩基平衡を紐解く
2.酸塩基平衡の常識を疑え
5章 電解質から浸透圧の世界へ踏み出そう
1.血漿浸透圧
2.浸透圧と体液コンパートメント
6章 症例で考えてみよう
1.11歳男児,体重25kg #糖尿病性ケトアシドーシス
2.5歳男児,体重20kg #インフルエンザ肺炎,気管支喘息発作
3.48歳男性,体重69kg #生体肝移植ドナー
4.20歳女性,体重60kg #水中毒
5.生後1ヵ月女児,体重4kg #続発性偽性低アルドステロン症
6.14歳女児,体重25.7kg #メチルマロン酸血症,慢性心不全,慢性腎不全
7章 おまけ:pHにまつわるエトセトラ
1.温度とpH
2.緩衝作用
3.ノモグラム
4.AIによる酸塩基平衡の解釈支援
付録 SIG計算シートとpH計算シートの使い方マニュアル
1.酸塩基平衡の入り口
2.スチュワート法との出会い
3.高校化学の復習
2章 スチュワート法を理解しよう
1.スチュワート原法
2.ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式の導出
3.スチュワート改変法
4.SIG計算
5.近未来のpH予想
3章 スチュワート法で考えてみよう
1.もう一度Physiological approach
2.BE法
3.簡易スチュワート法
4章 酸塩基平衡の理解を深めよう
1.酸塩基平衡を紐解く
2.酸塩基平衡の常識を疑え
5章 電解質から浸透圧の世界へ踏み出そう
1.血漿浸透圧
2.浸透圧と体液コンパートメント
6章 症例で考えてみよう
1.11歳男児,体重25kg #糖尿病性ケトアシドーシス
2.5歳男児,体重20kg #インフルエンザ肺炎,気管支喘息発作
3.48歳男性,体重69kg #生体肝移植ドナー
4.20歳女性,体重60kg #水中毒
5.生後1ヵ月女児,体重4kg #続発性偽性低アルドステロン症
6.14歳女児,体重25.7kg #メチルマロン酸血症,慢性心不全,慢性腎不全
7章 おまけ:pHにまつわるエトセトラ
1.温度とpH
2.緩衝作用
3.ノモグラム
4.AIによる酸塩基平衡の解釈支援
付録 SIG計算シートとpH計算シートの使い方マニュアル
書評
酸塩基平衡障害の“ルビンの壺”,見抜けていますか?
スチュワート法が集中治療界隈で注目され始めたのは,2014年にN Engl J Medに掲載された酸塩基平衡障害に関する2本のレビュー論文がきっかけではないだろうか.当時,駆け出しの小児集中治療医だった私は,毎日,いや,毎時間のように血液ガスをとってはデータとにらめっこしていたもので,復習がてら軽い気持ちでそれらの論文に目を通したのだった.1本目は従来の“Physiological approach”に基づいた解説で,研修医時代に教わった内容が丁寧にまとめられていた.ふむふむ,やはりこれが正統よな.ところが次に読んだ“Integration of acid-base and electrolyte disorders”(スチュワート法を基にした論文)には,まさに「髄液中に電気が走る」ような衝撃を受けた.
HCO3−は“結果”に過ぎない? Anion GapじゃなくてStrong Ion Gap!? でも,これなら乳酸値だけでは説明できなかったアシドーシスの原因が見えてくる….
そう,このスチュワート法は,まさに“ルビンの壺”のような存在.見方を変えるこで,従来の解釈では見落としていた病態が鮮やかに浮かび上がってくるのだ.ただし,ひとつ大きな壁がある.それは,理論の難解さ.理解して使いこなすには相当な根気と知識が必要で,そのためか敬遠されがちという話もよく耳にした.
そこで登場したのが本書である.高校化学に立ち返りながらスチュワート法を丁寧に紐解くばかりか,ベッドサイドでも使いやすいように従来法との“ハイブリッド”活用法にも触れ,“ルビンの壺”の正体を明らかにしてくれる.そして何より白眉なのが,治療介入よるpH変化を予測するツールを公開してくれている点であろう.治療した結果がすぐに返ってくる,まさに集中治療の醍醐味を紙面で体現してくれている.
実は著者の壷井先生は,私に小児集中治療のイロハを教えてくださった大先輩である.卒後使うことがないと思っていた物理や化学の知識を駆使して,複雑な病態生理を解き明かす姿勢には大いに憧れたものだった.今回,その知識と経験を惜しみなく注ぎ込んでスチュワート法を現代に引き戻すことに成功した本書が,より多くの医師の手に届くことを切に願ってやまない.
東京大学医学部附属病院 小児科
林 健一郎
スチュワート法が集中治療界隈で注目され始めたのは,2014年にN Engl J Medに掲載された酸塩基平衡障害に関する2本のレビュー論文がきっかけではないだろうか.当時,駆け出しの小児集中治療医だった私は,毎日,いや,毎時間のように血液ガスをとってはデータとにらめっこしていたもので,復習がてら軽い気持ちでそれらの論文に目を通したのだった.1本目は従来の“Physiological approach”に基づいた解説で,研修医時代に教わった内容が丁寧にまとめられていた.ふむふむ,やはりこれが正統よな.ところが次に読んだ“Integration of acid-base and electrolyte disorders”(スチュワート法を基にした論文)には,まさに「髄液中に電気が走る」ような衝撃を受けた.
HCO3−は“結果”に過ぎない? Anion GapじゃなくてStrong Ion Gap!? でも,これなら乳酸値だけでは説明できなかったアシドーシスの原因が見えてくる….
そう,このスチュワート法は,まさに“ルビンの壺”のような存在.見方を変えるこで,従来の解釈では見落としていた病態が鮮やかに浮かび上がってくるのだ.ただし,ひとつ大きな壁がある.それは,理論の難解さ.理解して使いこなすには相当な根気と知識が必要で,そのためか敬遠されがちという話もよく耳にした.
そこで登場したのが本書である.高校化学に立ち返りながらスチュワート法を丁寧に紐解くばかりか,ベッドサイドでも使いやすいように従来法との“ハイブリッド”活用法にも触れ,“ルビンの壺”の正体を明らかにしてくれる.そして何より白眉なのが,治療介入よるpH変化を予測するツールを公開してくれている点であろう.治療した結果がすぐに返ってくる,まさに集中治療の醍醐味を紙面で体現してくれている.
実は著者の壷井先生は,私に小児集中治療のイロハを教えてくださった大先輩である.卒後使うことがないと思っていた物理や化学の知識を駆使して,複雑な病態生理を解き明かす姿勢には大いに憧れたものだった.今回,その知識と経験を惜しみなく注ぎ込んでスチュワート法を現代に引き戻すことに成功した本書が,より多くの医師の手に届くことを切に願ってやまない.
東京大学医学部附属病院 小児科
林 健一郎
書評
「霧の中の酸塩基平衡」に灯りをともす,待望の一冊
スチュワート法を体系的に学べる日本語の成書が限られている中で,本書は「原法から臨床応用まで」を一貫して理解できるよう,丁寧に導いてくれる一冊である.Peter A. Stewart が1983 年に提唱した酸塩基平衡の概念は,病態の因果関係を深く洞察できる点で優れているものの,扱う変数が多く計算も煩雑で,原法と改変法が混在していることもあり,初学者にとっては敷居が高い面があった.本書は,そうしたハードルを取り除き,読者がつまずきやすい点に寄り添いながら,理解の足場を築いていく.
冒頭では,医療者が必ず通る「Physiological approach」に触れ,手順を追って考えても「何を,なぜ行うのかが見えにくい」と感じてきた多くの読者の感覚に寄り添っている.著者自身も同じ戸惑いを経験してきたことが示され,読者にとって一つの安心材料となる.Stewart 法に「難しそう」という印象がつきまとってきた背景も丁寧に拾い上げ,第1 章では高校化学の復習から始まり,理論に無理なく橋渡しされる構成となっている.
臨床応用の面でも本書の実用性は高い. 付録の「SIG 計算シート」を使えば,複雑な病態の構造を整理し,治療戦略を論理的に組み立てやすくなる.また,「pH 計算シート」によって,臨床で生じる「もう一歩先を知りたい」という疑問,すなわち治療介入後にpH がどのように変化するかを,実際の計算を通じて予測することもできる.さらに,糖尿病性ケトアシドーシス,水中毒,生体肝移植など多様な症例が示され,数値の変化を追いながら理論と臨床判断のつながりを実感できる.
酸塩基平衡を苦手としてきた医療者にこそ,本書を勧めたい.Stewart 法の複雑さに距離を置いていた読者の前に,霧に包まれていた「酸塩基の地形」が立体的に姿を現すだろう.輸液や電解質,栄養管理と密接に関わる酸塩基平衡の理解は,薬剤師にとっても重要な基盤である.救急・集中治療のみならず,一般病棟でも役立つ一冊である.
国立成育医療研究センター 薬剤部
大穂 祐介
スチュワート法を体系的に学べる日本語の成書が限られている中で,本書は「原法から臨床応用まで」を一貫して理解できるよう,丁寧に導いてくれる一冊である.Peter A. Stewart が1983 年に提唱した酸塩基平衡の概念は,病態の因果関係を深く洞察できる点で優れているものの,扱う変数が多く計算も煩雑で,原法と改変法が混在していることもあり,初学者にとっては敷居が高い面があった.本書は,そうしたハードルを取り除き,読者がつまずきやすい点に寄り添いながら,理解の足場を築いていく.
冒頭では,医療者が必ず通る「Physiological approach」に触れ,手順を追って考えても「何を,なぜ行うのかが見えにくい」と感じてきた多くの読者の感覚に寄り添っている.著者自身も同じ戸惑いを経験してきたことが示され,読者にとって一つの安心材料となる.Stewart 法に「難しそう」という印象がつきまとってきた背景も丁寧に拾い上げ,第1 章では高校化学の復習から始まり,理論に無理なく橋渡しされる構成となっている.
臨床応用の面でも本書の実用性は高い. 付録の「SIG 計算シート」を使えば,複雑な病態の構造を整理し,治療戦略を論理的に組み立てやすくなる.また,「pH 計算シート」によって,臨床で生じる「もう一歩先を知りたい」という疑問,すなわち治療介入後にpH がどのように変化するかを,実際の計算を通じて予測することもできる.さらに,糖尿病性ケトアシドーシス,水中毒,生体肝移植など多様な症例が示され,数値の変化を追いながら理論と臨床判断のつながりを実感できる.
酸塩基平衡を苦手としてきた医療者にこそ,本書を勧めたい.Stewart 法の複雑さに距離を置いていた読者の前に,霧に包まれていた「酸塩基の地形」が立体的に姿を現すだろう.輸液や電解質,栄養管理と密接に関わる酸塩基平衡の理解は,薬剤師にとっても重要な基盤である.救急・集中治療のみならず,一般病棟でも役立つ一冊である.
国立成育医療研究センター 薬剤部
大穂 祐介