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カテゴリー: 感染症学  |  衛生・公衆衛生学

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日本の感染症

明らかにされたこと のこされた課題

1版

東京都立大学 名誉教授 菅又昌実 編

定価

2,970(本体 2,700円 +税10%)


  • A5判  264頁
  • 2022年10月 発行
  • ISBN 978-4-525-18581-7

日本の感染症対策・研究がわかる!

私たちは新型コロナウイルス感染症の地球規模の流行を経験し, 医療や社会の混乱を目の当たりにした. しかし, 危惧されるのはコロナウイルスによる感染症だけではない.
本書には, 日本が多種の感染症をたえまなく監視し, 幅広い研究を行っている実態をまとめた. 日本における感染症の発生状況, 新興・再興感染症, 制圧困難な感染症に関する疫学情報, 最新動向から今後の課題までをわかりやすく解説した貴重な一冊!

  • 序文
  • 目次
序文
 2019年12月,中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎が発生しました.翌年1月になり,肺炎の原因はこれまで知られていなかった新たなコロナウイルスであることが明らかにされました.以来,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は地球規模の問題となり,私たちは多くの感染者・死者,医療の限界,社会の混乱を目の当たりにし,そしていまだ繰り返す感染の波の中にいます.
 しかし,心配なのはCOVID-19 だけではありません.サル痘ウイルスの感染拡大,若年者における梅毒の蔓延,成人T 細胞白血病の日本国内での広がり,冬の時期となる南半球ではオーストラリアを中心としたインフルエンザの流行なども危惧されています.
 本書は,日本が多種の感染症をたえまなく監視し,公的資金を用いて幅広い研究を行っている実態をお伝えしたいとの思いから制作されました.感染症の発生状況,新興・再興感染症,制圧困難な感染症に関する疫学情報,最新動向から今後の課題までを,専門家の方々にわかりやすく解説していただきました.
 感染症は,ヒトの多様な活動により拡大してしまうこともあります.その対処を考えたとき,最終的には,人類は感染症との共存をはかる以外に道はありません.これからは,環境中で病原体がどのようなふるまいを見せるのか,あるいは自然界と感染症との関係といった,生態学的な解明がより重要になってくるのではないでしょうか.
大きな感染症の流行を経験し,さまざまな情報があふれる今,本書が日本における感染症対策・研究の正しい理解につながれば幸いです.
 最後になりますが,執筆の労をとっていただいた第一線の研究者の皆様に心より深謝申し上げます.

2022年8月
菅又昌実
目次
はじめに

第1章 日本の感染症対策
基本戦略/地方衛生行政の最前線―保健所と地方衛生研究所/ AMED 研究と厚生労働科学研究/ AMED 研究および厚生労働科学研究における共通性/感染症に対する日本の国際貢献/日本の国際貢献の問題点/適応資材とその維持費負担/現地調査の必要性

第2章 日本の感染症の発生状況
感染症法で取り扱う感染症/感染症の発生動向/今後の感染症対策

第3章 ほぼ制圧できたと考えられるのに発生が再び増加している感染症
1 腸管出血性大腸菌感染症―感染源への指紋を探る
2 結核―今も身近にある致死的伝染病
3 梅毒―古くて新しい人類への脅威
4 レプトスピラ症―全国で感染する可能性のある顧みられない感染症
5 ウイルス性下痢症―培養技術の革新がもたらす下痢症ウイルスの理解―治せる・防げる感染症への期待
6 デング熱―日本でも定着流行の可能性
7 麻疹―急性および持続感染機構からワクチンの作用機序まで
8 狂犬病―最も危険なウイルス感染症
9 成人T 細胞白血病―発症の分子基盤理解の進展と発症予防法開発の試み
10 アスペルギルス症―忍び寄るカビの脅威
11 マラリア―気候変動は日本にもリスクをもたらすか?

第4章 依然として制圧が困難な感染症
1 薬剤耐性菌感染症―静かなるパンデミックへの対応
2 侵襲性細菌感染症―疫学とワクチン予防
3 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症―HPV ワクチンの安全性について
4 急性灰白髄炎(ポリオ)―世界ポリオ根絶達成へののこされた課題
5 エンテロウイルス感染症―新興・再興感染症としてのエンテロウイルス感染症
6 インフルエンザ―次世代インフルエンザワクチンの課題
7 B型肝炎―撲滅に向けた病態解明と治療法の進歩
8 急性脳炎―減らない自然界の日本脳炎ウイルス
9 エキノコックス症―日本に常在するNTD の実体と課題
10 愛玩動物由来感染症―ペットから感染する病気も意外と多いんです

第5章 新たに発生している感染症
1 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―感染症対策は一朝一夕には成し得ない
2 ジカウイルス感染症―妊娠中に気をつけたい蚊媒介性疾患
3 エボラウイルス病―ウイルス粒子形成機構の構造学的解析
4 ラッサ熱―ウイルス感染を阻害する抗ラッサ熱薬の開発研究
5 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)―国内にも存在した危険な病原体
6 レオウイルス性呼吸器感染症―密かに広がるネルソンベイオルソレオウイルス

第6章 私たちの責任

おわりに
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