できる!使える! 皮下投与

症状緩和のための

できる!使える! 皮下投与

書評

志真泰夫(日本ホスピス緩和ケア協会 理事長/筑波メディカルセンター代表理事)

 本書は、本邦初の皮下投与(薬剤の持続皮下注射、皮下輸液、薬剤投与のための皮下点滴)に関する知識とノウハウをまとめた専門書(monograph)である。ホスピス発祥の地であるイギリスでは、すでにこの種の専門書が出版されており、わが国でも皮下投与に関する専門書の出版が待たれていた。
 皮下投与は、多くの緩和ケア病棟で日常的な手技となりつつあるが、その臨床的な根拠(evidence)や手技の標準化については未だ十分明らかにされているとは言えない状況であった。しかし、本書が出版されたことにより臨床的根拠が整理されて明確となり、手技についても一定の標準化が可能となった。特に皮下輸液と薬剤投与のための皮下点滴について、最新の知見が示されたことはプライマリケアに携わる実地医家にとって、有用であろう。
 近年、在宅専門診療所の制度化をはじめプライマリケアにおける在宅ケアの重要性が増しているが、主に外来診療に携わってきた実地医家にとっては24時間・365日対応と訪問診療における臨床的ノウハウの習得は、在宅ケア参入の障壁となっている。その意味では緩和ケアで培われてきた皮下投与のノウハウは、これからの在宅ケアにおける診療の大きな助けとなるに違いない。
 一方、解決しなければならない課題も多い。本書の冒頭に「適応外使用についての注意」が述べられている。本書では「添付文書上は皮下投与の適用がない医薬品」についても取り上げられており、有用性と安全性については十分な注意を要する。さらに、在宅ケアで使用する場合は、保険診療上使用できる医薬品が限られており、これについても十分な注意を要する。現時点では、患者と家族に十分な説明を行って同意を得て、診療録に記載し、さらに保険請求時に症状詳記を添付する手間ひまを惜しんではならない。今後、編者をはじめ緩和ケアやプライマリケアに携わる医師や薬剤師の努力でこれらの課題が解決に向かうことを切に願っている。