最新号

「薬局」2020年11月 Vol.71 No.12

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2020年11月 Vol.71 No.12
免疫チェックポイント阻害薬
押さえておきたい知識とスキル

定価:2,200円(本体2,000円+税10%)

特集の目次

■特集にあたって(鈴木 賢一)

■免疫チェックポイント阻害薬の基礎知識(牧野 好倫)

■免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果と免疫関連有害事象のメカニズム(山口 央ほか)

■免疫チェックポイント阻害薬の薬物動態・薬力学特性とpersonalized therapyへの展開(濱田 哲暢)

■免疫チェックポイント阻害薬の相互作用(鈴木 賢一)

■免疫関連有害事象マネジメントの実践ポイントQ&A
・免疫関連有害事象を見逃さないためのモニタリングのポイントは?(土屋 雅美)
・免疫関連有害事象かどうかはどう判断すればよい?(東 加奈子)
・免疫関連有害事象にどう対応する?支持療法のポイントは?(吉野 真樹)
・免疫関連有害事象にチームとしてどう取り組めばよい?
—九州大学病院チームICIにおけるirAE対策の標準化の取り組みとその成果—(池田 宗彦ほか)
・免疫関連有害事象で投与中止した後のがん薬物療法はどう行う?(玉木 慎也)

■免疫チェックポイント阻害薬の医療技術評価(池田 俊也)

シリーズ

■毒舌妻と統計家 —臨床試験論文を読んでみる—(新連載)
ランダムに分ける
(今井 匠/井出 和希)

■フォーミュラリー道場 —医薬品の適正使用を目指して—
薬剤別フォーミュラリー②
赤血球造血刺激因子製剤(血液透析患者)
(佐藤 光/金井 紀仁/安藤 正純)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
抗凝固薬関連腎症を予防せよ!
(三星 知)

■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
「個人の自由/権利」と「集団の利益/安心」のバランス
〜新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が炙り出したもの〜
(中野 重行)

■薬剤師が三ツ星シェフ 〜業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ〜
経静脈栄養組成の立案に必要な情報
—アミノ酸 その②—
(東 敬一朗)

Report

服薬指導の充実とチーム医療推進に向けた実践例
(内田 まやこ)

巻頭言

 免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)は,従来の抗がん薬とまったく異なった作用機序を有しており,高い治療効果が得られる点が大きな特徴である.特に肺癌や悪性黒色腫,腎癌などでは臨床導入が進み,生存期間の延長にも大きく寄与している.ここ数年ICIを取り入れた,治療戦略上大きな意義をもついくつかの臨床試験が実施され,その良好な治療成績が相次いで報告されている.ICI同士の併用療法,ICIと抗がん薬の併用といった一次治療における治療成績のほか,化学療法と同時放射線治療後の維持療法としてのICIなど,これまでの二次・三次治療とは異なり,より早い段階でICIを導入した際の臨床効果が確認されている.
 一方,ICIによる副作用は免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAE)と定義され,国内のみならず米国臨床腫瘍学会(ASCO),欧州臨床腫瘍学会(ESMO),全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)などから,適切に管理するためのガイドラインが発刊されている.わが国では2016年に日本臨床腫瘍学会より『がん免疫療法ガイドライン』が発刊され,多くの医療者に活用され現在に至っている.ガイドラインではそれぞれのirAEに対してステロイドの使用が推奨されており,幸いにしてステロイドが奏効することも多く,症状が軽減し治療を再開できる例も見受けられる.また前述したように,ICIは二次・三次の単独療法から,front lineにおける併用療法での使用機会も増えており,今後も治療時期に限らずICIの使いどころは増える可能性が極めて高い.その他の抗がん薬との併用療法の問題として,以前より指摘されてはいるが,発現した副作用の原因がICIか併用された薬剤かによって,ステロイドでの対応か,あるいは従来の副作用対策が妥当かの判断が求められる点が挙げられる.その判断を誤ると症状の増悪につながる可能性もあり,医師や薬剤師,看護師などチームで情報を共有するとともに患者や患者家族への適切な情報提供や教育が重要である.
 なおガイドラインでは多くのirAEに対し重篤例にはステロイドパルス療法が,ステロイド不応例には免疫抑制薬の使用が推奨されている.しかし,ステロイドパルス療法後の漸減療法の期間や免疫抑制薬の使用のタイミング,あるいは症状消失後の治療再開のタイミングなどの情報は乏しく,現場の医療者の判断に委ねられることも少なくない.
 併用療法が実用化されることで懸念されるのは,ICIの薬物相互作用である.治療終了後に実施された抗がん薬の治療効果や副作用が,増強することを示唆したいくつかのデータが報告されている.そのため,併用薬や後治療で使用される抗がん薬に何らかの影響を与えている可能性は否定できない.治療効果のみならずirAEのリスクも高まるとなれば,次治療開始のタイミングには慎重にならざるを得ない.
 併用療法や放射線と絡めた治療法が臨床導入されるなど,ICIは今後も広く使用される傾向にある.複雑化するがん免疫薬物治療を適切にサポートするためには,ICIがもつ薬理作用上の特徴やirAEのメカニズムの理解は必須であろう.支持療法に関してはエビデンスが不十分な点も多いことから,最前線で治療をサポートしている薬剤師の視点から学ぶことは多い.また,ICIは高額なものが多く,質の高い薬物治療を探求するとともに,費用対効果の視点を加味した患者支援にも目を向けるべきである.
 本特集ではがん免疫療法に関する研究および日常診療の最前線に携わる医師をはじめ,チーム医療や支持療法マネジメントで活躍されている薬剤師,医療経済の専門家らにお力添えいただき,irAEの基本的な理解からトータルマネジメントに役立つ特集を企画した.本特集ががん免疫薬物治療に係るすべての医療者にとって,役立つ参考書となるよう心より祈念している.

星薬科大学 実務教育研究部門/薬学教育研究部門 教授
鈴木 賢一

次号予告

2020年12月 Vol.71 No.13
肝障害時の薬物療法
― 肝機能を考慮したマネジメントの基礎と実践 ―