最新号

「治療」2020年7月 Vol.102 No.7

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2020年7月 Vol.102 No.7
摂食・嚥下障害の意思決定支援

定価:2,750円(本体2,500円+税10%)

今月の視点

患者の意思決定支援を,医療者一人ひとりが考えられるように

 私は南砺市民病院という富山県にある175床の公立病院で救急・病棟・リハビリ・健診・在宅医療に携わっている病院家庭医である.専門といえるほどではないが,摂食・嚥下機能評価パスチームという食べられない患者さんに入院中でも外来からの依頼でも多職種チーム介入することで改善できる方法はないかを模索する活動をしている.また,日本臨床倫理学会認定の臨床倫理アドバイザーとして臨床倫理コンサルテーションチームにも所属しており,さまざまな倫理的ジレンマで悩む患者さんや医療従事者と共に悩みながら意思決定の支援を行っている.そのようなバックグラウンドもあり,治療 2018年11月号 特集「終末期の肺炎」で初めての編集幹事をさせていただいた.そこでは終末期に至る可能性のある誤嚥性肺炎の原因を追究することの大切さ,多職種連携で多方面からアプローチする必要性,臨床倫理や家庭医療,エコーや交渉術についての幅広い内容にして多くの読者に誤嚥性肺炎の診療に興味をもってもらえるような工夫をしていた.その後も誤嚥性肺炎WSなども行われ,関心をもっていただけた手ごたえを感じている.
 とはいえ実際の臨床で一番難しいのは,認知症の患者さんの意思決定が不明な状況で胃ろうや中心静脈栄養に対する議論が始まったり,年齢を理由に十分な検討もなく看取りの方針となったりする事例ではないか.もちろん,家族と医療従事者の間で意見が食い違っていれば,倫理的ジレンマとして問題に感じやすいかもしれないが,皆が同じ意見であっても,経過を振り返ってみると本当にそのプロセスが正しかったのか検証しなければならないこともあるだろう.そこで,本書のテーマは「摂食・嚥下障害の意思決定支援」である.認知症で意思決定が難しい患者さんの意思決定支援を,いつ・どこで・だれが・どのように行うかということを医療者一人ひとりが考えられるように,一般的な摂食・嚥下障害の判断基準や胃ろうや中心静脈の説明で知っておきたいガイドラインや知識を身につけていただき,それぞれのセッティングで参考になるように,在宅,中小規模病院,大規模病院,地域のセッティングで意思決定支援に携わっている方々の実際の方法を読むことで「明日から意思決定の支援を行うための教科書」となるような内容となっているつもりである.「終末期の肺炎」の企画では「誤嚥性肺炎診療は奥が深い」と書いたが,摂食・嚥下障害の意思決定は,そのなかでも最も奥が深いものではないかと思う.誤嚥性肺炎診療をとことん深めるために肺炎を診たことがある医療者すべてに読んでいただきたいと願う.

[編集幹事]南砺市民病院 内科/総合診療科
大浦 誠

特集の目次

■摂食・嚥下障害患者の意思決定支援で知っておいてほしいこと
摂食・嚥下障害の終末期なのかどこまで検査をすればよいのか(荒幡昌久)
認知症であれば意思決定はできないのか(盛永審一郎)
人工的水分・栄養補給法のメリット・デメリットをどのように伝えるか(林 誠也,他)
胃ろうにするか中心静脈栄養にするか ─人工栄養が選択されたときに─(矢吹 拓)
人工的水分・栄養補給法を選択しないことの難しさ(古屋 聡)

■摂食・嚥下の意思決定モデルにもいろいろある
Shared Decision Making(共同意思決定)を中動態の視点で考える(官澤洋平)
摂食・嚥下障害におけるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に内包される課題(由井和也)
コミュニケーションを重視したDNAR 指示(POLST)は,医療における重要なACP である(箕岡真子)
ACPをどうやってプランニングしていくか ─看護師の専門性を活かした患者の思いを上手に聴けるような工夫─(野原良子)
信念対立による倫理的ジレンマを解決するためにできることは何か(京極 真)

■さまざまな場での摂食・嚥下の意思決定支援の具体例
在宅療養支援診療所(ものがたり診療所を例に)(田邉 望)
中小規模病院(南砺市民病院の臨床倫理コンサルテーションを例に)(大浦 誠)
地域包括ケア病棟とExtensivistの活用(大浦 誠)
摂食・嚥下障害の意思決定支援 救急医療の現場から(遠井敬大)
“老衰”と診断すること(徳田嘉仁)

■まとめ
摂食・嚥下障害の意思決定支援に王道なし(大浦 誠)

連載

ゲンバで使える!リラックスして読める! 診療の○泌テク(7)
梅毒診断の問題点 (松木孝和)

今月のお薬ランキング(52)
ACE 阻害薬(浜田康次)

ジェネラリストのためのLGBT 講座(4)
医療一般:病院・診療所単位で取り組むべきこと(金久保祐介)

こちらつるかめ病院臨床倫理カフェ つるりん(14)
何もきかないで (金城謙太郎,長尾式子,竹下 啓)

映画で読み解く医療─ シネメデュケーション(映画医療教育)─(16)
医療と地域のかかわりあいを考える(宇井千穂)

次号予告

2020年8月 Vol.102 No.8
Nats and Bolts of
Public Health × 総合診療