ブックタイトルエキスパートが秘訣を語る 循環器薬物治療の極意

ページ
7/12

このページは エキスパートが秘訣を語る 循環器薬物治療の極意 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

エキスパートが秘訣を語る 循環器薬物治療の極意

517.心不全治療におけるループ利尿薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使いかたは?不全例を対象に,高用量,低用量のフロセミド投与で予後を比較した試験を報告し,利尿薬投与量は短期予後に影響を与えないことが示され,ループ利尿薬の高用量投与が予後に与える影響については,いまだ結論が出ていない.ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR 拮抗薬)? レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の最終因子であるアルドステロンは,後部遠位尿細管から集合管の主細胞にあるミネラルコルチコイド受容体(MR)に結合することで,間質側(血管側)のNa+/K+-ATPase ならびに管腔側の上皮型Na チャネル(ENaC)の発現を亢進させる.ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR 拮抗薬)はこの作用に拮抗し,Na+の再吸収およびK+の排泄を抑制することにより利尿作用を発揮し,血清K 値を上昇させる(図7 - 2).1)左室駆出率の低下した心不全に対する効果? MR 拮抗薬はカリウム保持性利尿薬としての作用だけでなく,臓器保護効果や心不全予後改善効果をあわせもち,左室駆出率35%以下,NYHA 心機能分類Ⅲ度以上の重症心不全患者を対象としたRALES 試験では,ループ利尿薬,ACE 阻害薬,ジギタリスを中心とした従来の標準的心不全治療にスピロノラクトンを追加することで,総死亡リスクが治療開始後から平均2 年で30%減少した.また,心不全悪化による再入院のリスクも35%減少することが示された.しかし,RALES 試験が行われた時点では,心不全に対するβ遮断薬の使用は一般的ではなく,その使用は11%にとどまっていた.? その後,左室駆出率40%以下で心不全を合併した急性心筋梗塞患者を対象にエプレレノンの有効性を検討したEPHESUS 試験では,ACE 阻害薬とβ遮断薬などを使用した標準図7-2 ループ利尿薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の作用1~3%5~7%100%20~30%再吸収60~70%集合尿細管接合尿細管糸球体近位尿細管上行脚ヘンレループ(ヘンレ係蹄)炭酸脱水素酵素阻害薬サイアザイド系利尿薬ENaCミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬血管側K+K+ K+K+ClーNa+Na+管腔側Na+/K+-ATPaseNa+/K+/2Clー共輸送体Na+/K+-ATPaseK+Na+K+2ClーNa+管腔側 血管側ループ利尿薬ENaC:上皮型Naチャネル