ブックタイトルエキスパートが秘訣を語る 循環器薬物治療の極意

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概要

エキスパートが秘訣を語る 循環器薬物治療の極意

3薬物治療を行う前に知っておきたいことの薬物は予後をよくするという確固たる根拠がある」という思いが目を暗くしてしまう.クリニカルエビデンスは,患者集団についてあてはまる一方で,個々の患者にすべて同じように当てはまるのかどうかの保証はしていない.さらに,多くの大規模臨床試験は,登録基準,除外基準,処方の方法,検査間隔などがあらかじめ厳密に定められているため,その結果があてはまる患者集団が社会のなかで多数を占めない場合すらある.? クリニカルエビデンスは,特定の定められた患者集団に対して理想的な条件下での最大能力を示したものである.これはかならずしも,現実社会の個別の患者で,かつ通常の臨床現場での効果を保証したものではない.このことを知っているだけで,クリニカルエビデンスによる過信,慢心から解き放たれる.いつも5W1Hが基本? 薬物療法の基本はいつも5W1H である.薬物療法を,経験や勘でなく,誰もが同じような高いレベルで実行できるようにするには,コミュニケーションや叙述の基本である5W1H で記載できることが必要だからである.いつ(When) :昼間,夜間,…どこで(Where) :初診外来,再診外来,救急外来,入院,…だれが(Who) :内科医,循環器内科医,心臓血管外科医,研修医,専門医,…なにを(What) :薬物名,…なぜ(Why) :何を目的に,…どのように(How) :経口,点滴,初期投与量,増量のスピード,投与期間,…? 当たり前のようで実は重要である.夜間人手のないときに,リスクが高く厳密な経過観察が必要とされる薬物投与は控えた方がよいかもしれない.情報量の少ない初診患者と情報量の多い再診患者,あるいは患者の重症度によって,投与される薬物は異なるだろう.また,処方医の専門性や経験が,処方の幅を大きく変えるはずである.薬物投与には具体的な目的がいつも必要であり,同じ疾患であっても目的によって投与すべき薬剤は異なるはずである.5W を用いていかに適切に薬物を選択したとしても,初期投与量や増量スピードが適切でなければ元も子もない.? このような5W1H を,循環器薬物治療において具体的に把握し,かつ叙述することは,実はたやすくない.しかし,クリニカルエビデンスを基本としながら,さまざまな経験を積み重ねていくうち,やがて自分なりの秘訣が生まれてくることになる.その秘訣こそが5W1H を叙述してくれる.この感覚が生まれたとき,循環器薬物療法は格段と異なるものに見えるはずである.(山下武志)C