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「薬局」2021年2月 Vol.72 No.2

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2021年2月 Vol.72 No.2
心不全の緩和ケア
チーム医療で求められる実践力を身につける

定価:2,200円(本体2,000円+税10%)

特集の目次

■特集にあたって(高井 靖)

■心不全患者に対する緩和ケアの現状と課題(佐藤 幸人)

■心不全緩和ケアにおける意思決定支援と倫理的葛藤(鳥崎 哲平 ほか)

■心不全緩和ケアで求められるコミュニケーションスキル(高井 靖)

■心不全/心外併存症治療薬について考えたいこと・できること
・心不全患者の心外併存症と随伴症状(大石 醒悟)
・治療抵抗性心不全における治療薬見直しの勘所(柴田 龍宏)
・心不全および心外併存症治療薬の薬物有害事象と処方カスケード(高井 靖)
・心不全患者における服薬アドヒアランス悪化の要因と向上・維持に向けたアプローチ(芦川 直也)

■心不全の身体的・精神的苦痛に用いる薬剤の実践マネジメント
・オピオイド(寺崎 展幸)
・鎮痛薬・鎮痛補助薬(工藤 浩史)
・抗不安薬・抗うつ薬(原田 桂作)
・漢方薬(志方 敏幸)

■悩ましい症例にどう立ち向かうか?! 押さえておきたい勘所
・カテコラミン離脱困難(土岐 真路)
・食欲不振/悪液質(櫻下 弘志)
・体液貯留(梶間 勇樹)

■薬剤師に求められる役割は何か? どう実践するか?
・心不全チームにおける薬剤師の役割(前田 朱香)
・心臓リハビリと在宅に向けた地域連携における薬剤師の役割(吉国 健司)
・在宅ケアにおける薬剤師の役割(中村 薫 ほか)

シリーズ

■フォーミュラリー道場 —医薬品の適正使用を目指して—
フォーミュラリー導入による薬剤経済効果について
(宮 美子/金井 紀仁/安藤 正純)

■薬剤師が三ツ星シェフ ?業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ?
経静脈栄養組成の立案に必要な情報
—これまでのおさらい—
(東 敬一朗)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
向精神薬服用患者に服薬指導を行うときの7つのルール
(坪内 清貴)

■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
すべての人々が兄弟となる!(Alle Menschen werden Bruder!)
〜ベートーヴェン作曲の交響曲第9番「合唱付き」をめぐって想うこと〜
(中野 重行)

■毒舌妻と統計家 —臨床試験論文を読んでみる— 第㈫回
ハザード比,信頼区間,統計学的に有意
(今井 匠/井出 和希)

巻頭言

 緩和ケアというとがんの終末期医療が一般的に想定される.しかし,世界保健機関(WHO)は,緩和ケアはがんだけでなく,生命を脅かすすべての疾患に対して考慮すべきものとし,身体的のみならず,心理・社会的な苦痛などの問題を早期に発見して,的確なアセスメントと対処を行うことによって,苦しみを予防し和らげ,QOLを改善することの必要性を提唱している.
 わが国の死因の第2位は心疾患であり,その内訳で最も多いのは心不全で約100万人とされている.2014年のWHOの研究によると,終末期に緩和ケアを必要とする疾患の第1位は38%で心血管疾患,第2位が31%でがんという結果が出ている.日本循環器学会/日本心不全学会『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』では,ステージD(治療抵抗性)の心不全患者の治療目標の一つに終末期ケアが明記された.そして,2018年の診療報酬改定では,緩和ケア診療加算の対象疾患に末期心不全が追加された.今後,心不全パンデミックという言葉が認知されているように,心不全患者は増加の一途であり,それに伴い,心不全緩和ケアも不可欠となる.2018年,厚生労働省の『循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について』で,医師,看護師,薬剤師等の多職種連携が必要と強調し,心不全多職種緩和ケアチームとして協働していく方向性を示している.さらに,がん患者の緩和ケアにおいて使用される薬物療法を,心不全患者に対して使用する際には,適切な投与量の違い,また有効ではない薬物療法も存在するなどの相違点に留意し,相違点に対する科学的知見を集積する必要がある,と記載している.薬剤師に求められることは,チームの一員として,薬物療法の専門家として,薬学的視点からの助言である.
 また,心不全緩和ケアでは,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実施が重要である.ACPとは,患者の意思決定能力が低下する前に,患者が「どのように生きたいか」「どのようにすれば納得できる人生を全うできるか」を,あらかじめ患者やその家族と一緒に考えておくことである.薬剤師も患者や家族の考えを情報共有して服薬支援をしなければならない.
 循環器疾患の治療は,地域の診療所や中小病院が提供することも多く,地域を主体に考える必要性がある.再発や再入院を予防するためには,治療だけでなく,生活や食事,服薬支援などの患者教育,運動療法など,管理すべきポイントはさまざまある.そのため,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,栄養士,医療ソーシャルワーカーなど多職種でチームを構成してお互いに連携をすることが不可欠である.特に,院内での緩和ケアチームと心不全チームの連携だけでなく,地域で連携する必要性もある.
 本特集では,心不全緩和ケアの基礎知識と実践ポイントについて,わが国を代表する第一線でご活躍の先生方にご解説をしていただいた.本特集を参考に,各施設でチーム医療の取り組みがさらに発展すれば幸いである.

三重ハートセンター 薬局 薬局長
高井 靖