バックナンバー

「治療」2019年7月 Vol.101 No.7

在庫状況:在庫あり

2019年7月 Vol.101 No.7
対話で深める プライマリ・ケア

定価:2,750円(本体2,500円+税10%)

今月の視点

 対話ってなんだろう.いまだに私もよくわからない.
 対話は英語で「ダイアローグ(dialogue)」という.「モノローグ(monologue)」に対比されて,二者の間のやりとりと勘違いされることもあるが,それは誤解である.むしろダイアローグは三者以上の間のやりとりを指すことが多い.dialogueの語源は,ギリシャ語の「dialogos」に由来し,dia(〜を通して)とlogos(言語,思想),つまり言葉や思想を通して意味のやりとりをすることだという.それでも,よくわからない.よくわからないのに,なんだか大事なことのような気がする.だから,この特集を組むことにした.
 これまで,いろんな「対話」活動を実践してきた.家庭医になって「患者中心の医療技法」という対話的なコミュニケーションがあることを学んだ.2010年からは,「みんくるカフェ」という市民と医療者の対話の会を始めた.2017年から「まちけんダイアローグ」という市民の困りごとを対話で緩和する活動を継続している.
 しかし,対話実践の広がりはもっと多岐にわたっており,さまざまな領域で行われている.対話の源流は,ソクラテスの「産婆術(問答法)」にまで遡る.哲学の世界では「哲学対話」という実践がある.教育の世界では,対話型教育を実践したフレイレの偉大な功績がある.1980年代から北欧で始まったのが,精神疾患患者を対話で癒す「オープンダイアローグ」である.また,福祉領域では「未来語りのダイアローグ」という方法も用いられている.
 マインドフルネスは対話と深い関係にあり,自己との内的対話といえる.演劇の世界では,平田オリザ氏が「対話」の重要性を説いている.即興劇を使ったプレイバックシアターは,やはり語り手と聞き手,さらに演じ手がいるというまさに対話の構造だ.
 こうした,医療・福祉分野に止まらず,哲学,教育,演劇,映画といったさまざまな分野において,対話(ダイアローグ)はどのように実践され扱われているのか,その実際と背景となる理論を知るため,それぞれの分野の第一人者に執筆をしていただいた.ここまで広範囲に「対話」を扱った雑誌や書籍は,わが国ではなかったのではないかと自負している.そして,読者のそれぞれが本書をきっかけに,ダイアローグという広い海原へと舟を漕ぎ出してもらえれば幸いである.

[編集幹事]
東京大学大学院医学系研究科 医学教育国際研究センター 医学教育学部門 孫 大輔

特集の目次

■プライマリ・ケアと対話
患者中心の医療における対話(草場鉄周)
家族志向のケアにおける対話(松下 明)
地域における対話:モバイル屋台を通したダイアローグ(守本陽一,他)
銭湯と対話:「裸の付き合い」というコミュニケーション(孫 大輔)

■対話の哲学
対話と哲学:哲学対話の実践より(西村高宏)
現象学からみた「対話」(西村ユミ)
対話と共感:ロジャーズ理論より(本山智敬)
対話と教育:フレイレの対話型教育より(竹端 寛)

■医療・福祉における対話
オープンダイアローグ ─対話を開く─(森川すいめい)
ダイアローグとリフレクティング(矢原隆行)
「早期ダイアローグ」と「未来語りのダイアローグ」について(岡田 愛)
対話とマインドフルネス(熊野宏昭)
患者と医療者の対話:医療人類学の知見より(菊地真実,他)

■対話:応用編
演劇と対話(菅原直樹)
プレイバックシアター:「心の景色」を引き出す対話スキル(小森亜紀,他)
映画とダイアローグ(孫 大輔)
市民と医療者の対話:みんくるカフェ/まちけんダイアローグ(孫 大輔)

連載

今月のお薬ランキング(40)
抗インフルエンザ薬(浜田康次)

症例×Q&A 超高齢社会シコウの利尿薬適正使用シコウ(1)
体液過剰状態を呈する高齢うっ血性心不全患者の入院(再入院)が繰り返される現状,なんとかならないのか?(杉本俊郎)

こちらつるかめ病院臨床倫理カフェ つるりん(2)
ムンテラする? ICする?(金城謙太郎,長尾式子,竹下 啓)

映画で読み解く医療 —シネメデュケーション(映画医療教育)—(7)
高齢化社会において,高齢者の再雇用の実際を考えてみる(宇井千穂)