慢性炎症と生活習慣病

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概要:
慢性炎症と生活習慣病

13.COPD・気管支喘息と慢性炎症1131313-1 COPD1COPDの定義 COPD は,タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる肺の炎症性疾患であり,呼吸機能検査で正常に復することのない気流閉塞を示す1).気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用することにより起こり,進行性である.臨床的には,徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳,痰を特徴とする. COPD は呼吸機能検査の異常が診断基準となっているように,呼吸生理学的に定義された疾患である.なお,臨床の場では,慢性気管支炎や肺気腫などの疾患名が汎用されている.慢性気管支炎は咳や喀痰などの症候により定義された疾患であり,喀痰症状が年に3カ月以上あり,それが2 年以上連続して認められることが基本条件となる.この病状がほかの肺疾患や心疾患に起因する場合には慢性気管支炎として取り扱わない.肺気腫は病理形態学的に定義された疾患であり,末梢の気腔が終末細気管支より肺胞壁の破壊をともないながら異常に拡大していて,明らかな線維化は認められない病変を指す.2疫学 COPD の病因として最も重要なものが喫煙であり,また,喫煙者におけるCOPD 発症率は年齢とともに増加する.1960 年代以降,わが国におけるタバコ販売量が増加し,現在も高水準にある.厚生労働省から公表された「慢性気管支炎及び肺気腫」による死亡率は1980 年代より急増しており,約20 年のタイムラグがある.高水準のタバコ販売量と人口高齢化という状況にあって,今後ますますわが国のCOPD 患者数は増加することが予想される. 欧米での疫学調査によれば,各国のCOPD 有病率は約10%と報告されている.一方,わが国の喫煙率は欧米諸国より高いにもかかわらず,COPD 有病率は明らかではなかった.そこで,わが国におけるCOPD 患者数の実態を明らかにするため,住民調査によるCOPD 疫学調査が実施された2).この調査は,NICE Study(Nippon COPD Epidemiology Study)として,2000 年度に全国の35 施設で行われた.これは,人口構成比にマッチするよう無作為に抽出された40 歳以上の一般住民に対して,健康調査表記入とスパイロメトリーの参加を募ったものである.対象は男性1383 人,女性1283 人の計2666 人(平均年齢58 歳)で,喫煙中の喫煙者30%,既喫煙者23%であった.スパイロメトリーで1 秒率(FEV1. 0/FVC)< 70%をCOPD と定義すると,対象者全体の8. 6%(男性13. 1%,女性4. 4%)がCOPD であった(図13 - 3).また,年齢別では,70 歳以上の高齢者において19. 6%,実に約6 人に1 人がCOPD とされた.この調査により得られたCOPD 有病率から類推すると,40歳以上では約530万人,70 歳以上の高齢者では約210 万人がCOPD 患者であると考えられる.NICE Study は, わが国のCOPD 有病率が欧米諸国と同様であること,また,COPD 患者の大多数が適切に診断されていない実態を明らかにしたものである.3病因と病態生理 COPD を特徴づける気流制限は,気道病変(とくに末梢気道病変)と気腫性病変(肺胞壁の破壊)とがさまざまの割合で起こった結果生じる.COPD の外因としては喫煙が最も重要であ