慢性炎症と生活習慣病

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概要:
慢性炎症と生活習慣病

9.動脈硬化と慢性炎症─血管内皮細胞─779組織因子やPAI- 1 は血液凝固を促進し,臓器血流の低下をきたす.このように,動脈硬化をはじめとする血管の炎症において血管内皮細胞のNF-κB シグナルの役割は重要と考えられる. 一方,個体レベルにおいて,NF-κB シグナルを中心とした血管内皮細胞の炎症がどのように臓器の慢性炎症に関与するかについては不明であった.しかし,H. Katagiri らのグループは,NF-κB を抑制する分子であるIκB を血管内皮細胞選択的に過剰発現することで,血管内皮細胞特異的にNF-κB 活性を抑制するマウスを作製し,血管内皮細胞自体の炎症の意義について個体レベルで解析を行ったところ,血管内皮細胞特異的にNF-κB を抑制すると肥満にかかわる脂肪組織の慢性炎症やインスリン抵抗性が抑制された4).すなわち,血管内皮細胞の炎症が肥満でみられる慢性炎症において重要な役割を果たし,結果として,インスリン抵抗性,糖尿病やメタボリックシンドロームなどの病態につながり,動脈硬化を促進する可能性を示した(図9 - 2).これは血管内皮細胞の炎症の意義を考えるうえで重要な知見であると思われる.さらに,このマウスは肥満させない状況下では老化が抑制され,寿命が延長した.この結果は,血管内皮細胞の炎症は老化の進展や寿命を規定していることが示され,注目された.また,Y. Oike らのグループは,血管新生にかかわる因子としてアンジオポエチン様因子2(ANGPTL2)を発見し,ANGPTL2がNF-κB を介して血管内皮細胞の炎症を誘導することを報告した.ANGPTL2が肥満やメタボリックシンドロームによる血管内皮細胞の炎症の重要な分子であり,動脈硬化の治療標的になる可能性が考えられる5)(第16 章 参照).図9 - 1 動脈硬化病巣の形成過程における脂質と炎症の役割血液中のLDL(低比重リポタンパク質)が血管内に入り,NADPH オキシダーゼやミエロペルオキシダーゼ,リポキシゲナーゼなどの酵素によって酸化LDL に変性する.酸化LDL や酸化の過程で増加するリゾホスファチジルコリン(LPC)は血管内皮細胞を活性化し,接着分子の発現を介して炎症細胞の血管内皮への接着,血管壁内への侵入を引き起こして炎症を惹起する.酸化LDL はマクロファージに取り込まれ,泡沫細胞となって粥腫を形成する.T リンパ球は樹上細胞から抗原提示を受け,動脈硬化の炎症を促進する.一方,制御性T細胞(Treg)は炎症や動脈硬化の進行に対して抑制的に働く.単球接着分子T細胞樹状細胞制御性T細胞活性化酸化LDLLPC酸化修飾NO NO合成酵素NO分化抗原提示?スカベンジャー受容体泡沫細胞NADPHオキシダーゼミエロペルオキシダーゼリポキシゲナーゼeNOSアンカップリングLDL血管内皮細胞サイトカインケモカイン血管内皮細胞の活性化マクロファージ