慢性炎症と生活習慣病

慢性炎症と生活習慣病 page 4/12

電子ブックを開く

このページは 慢性炎症と生活習慣病 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
慢性炎症と生活習慣病

2.2 型糖尿病と慢性炎症─インスリン分泌不全─212により膵島炎症が生じることがわかる.膵島炎症の膵β細胞機能障害に果たす役割を検討するには,炎症の抑制によるインスリン抵抗性の改善による二次的な膵β細胞への負荷軽減の影響を考慮する必要を生じるが,前述のパルミチン酸投与モデルは短期間で膵島炎症と膵β細胞機能障害を生じるため,その影響はきわめて少ないと考えられる.パルミチン酸負荷前にクロドロネートリポソームを投与すると,M1 マクロファージの膵島への集積は有意に抑制され,その結果,膵島内のIL - 1β,TNF-αといった炎症性サイトカインの発現誘導はほぼ完全に抑制される.同時に,膵島におけるinsulin,PDX-1 といった機能マーカー遺伝子の発現低下も有意に回復する.すなわち,M1 マクロファージの膵島への集積が膵島炎症と膵β細胞の機能障害を惹起していることが示された.同様の方法は,db/db マウスやKK-Ay マウスにおいても膵島での炎症性サイトカインの発現低下と膵β細胞機能の回復を生じ,2 型糖尿病モデルマウスにおいて,膵島でのM1 マクロファージへのポラリティーシフトによる膵島炎症が膵β細胞機能障害に寄与していることが示された3)(図2 - 2).2-6 抗サイトカイン抗体およびIL -1Raによる糖尿病治療の可能性 以上のように,膵β細胞機能障害においても膵島にマクロファージの浸潤と炎症性サイトカインの発現が生じていることが明らかとなり,サイトカインなどをターゲットとした治療法の開発が期待される. 関節リウマチへの有効性が確認され,すでに臨床応用されているリコンビナントIL - 1Raであるアナキンラ anakinra の2 型糖尿病患者への効果についての臨床研究により,アナキンラ群において耐糖能の改善が認められ,OGTT 時のC ペプチドの血中濃度の結果から,おもに膵β細胞機能の改善が寄与していると報告された15).2 型糖尿病モデル動物でのIL - 1Ra の効果の検討よりその分子メカニズムの検討を行うと,GK ラット16)や高脂肪食モデル17)においてもIL - 1Ra 投与により膵島とインスリン標的臓器の炎症マーカーの改善とともに,膵β細胞の機能マーカーの改善とインスリン感受性の改善が認められている.ただし,TNF 受容図2 - 2 M 1 マクロファージへのポラリティーシフトによる膵島炎症と膵β細胞機能障害膵β細胞において,パルミチン酸はTLR4シグナルを介してMCP- 1やCXCL1などのケモカインの分泌を生じ,Ly - 6C+のM1マクロファージを膵島内によび込む.M1マクロファージは,IL - 1βやTNF-αといった炎症性サイトカインを分泌して膵島炎症を惹起する.M1マクロファージの集積がはじまると,炎症性サイトカインはさらにケモカインの分泌を促進し,膵島炎症増悪の悪循環が生じる.以上のメカニズムで生じる膵島炎症が,すでに報告されている小胞体ストレスなどの細胞自律的なメカニズムと並行して膵β細胞機能障害を惹起する.パルチミン酸膵島炎症膵β細胞機能障害炎症性サイトカインM1マクロファージパルチミン酸単球M1型炎症性細胞のリクルートケモカインTLR4