慢性炎症と生活習慣病

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概要:
慢性炎症と生活習慣病

第Ⅳ部 慢性炎症の分子メカニズム146ANGPTL3,ANGPTL4,ANGPTL6 は糖・脂質代謝やエネルギー代謝に関与するなど多様な機能をもつ2 ~ 5).また,ANGPTL2 は細胞上のインテグリンα5β1 を介して,NF-κB 経路依存的に炎症性反応を活性化させ,small Rho GTPase であるRac1 の活性化により細胞の運動能(走化性)を亢進させる6)(図16 - 2).16-2 肥満,インスリン抵抗性,糖尿病とANGPTL2 筆者らは,ANGPTL2がヒトやマウスの内臓脂肪組織に豊富に発現していたため,肥満病態およびそれにともなう代謝異常症での意義について検討した6).ヒト血中ANGPTL2 濃度は,肥満の指標であるbody mass index(BMI)値や腹周囲長,炎症の指標となるC 反応性タンパク質C- reactive protein(CRP)値と正の相関を示した.糖尿病患者の血中ANGPTL2 値は健常者に比べ高く,MRI で評価した内臓脂肪量やインスリン抵抗性指数(HOMA-R)およびCRP 値と正の相関を,グルコースクランプ法により評価したインスリン感受性(M 値)と逆相関を示した.また,PPARγアゴニストであるピオグリタゾン内服や生活習慣介入による減量で血中ANGPTL2値は減少し,血中ANGPTL2値の減少率と内臓脂肪減少率は相関していた6, 11).以上の知見は,ANGPTL2 が肥満および関連する内臓脂肪組織の炎症や代謝異常に関連することを示唆するが,ANGPTL2 がこれらの病態に対して原因因子として重要なのか,それとも単なる結果をみているにすぎないのか不明であった.脂肪組織にANGPTL2 を持続発現するトランスジェニック(Tg)マウスやANGPTL2 が生体内に存在しないマウス[ ANGPTL 2欠損(KO)マウス]などの遺伝子改変マウスを用いた筆者らの基礎研究により,脂肪組織由来のANGPTL2 は体重増加や肥満誘導の原因とはならないこと,しかし,肥満の脂肪組織においてその発現が増し,慢性炎症を惹起し,動脈硬化性疾患のリスクを上昇させるインスリン抵抗性, 糖尿病発症を促進させる原因因子の1 つとして機能していることが示された図16 - 2 血管内皮細胞におけるANGPTL 2 の作用機序ANGPTL2は,インテグリンα5β1を介してRac による細胞の遊走やNF-κB 経路活性化による炎症関連遺伝子発現を促進する.核細胞質インテグリンα5β1p50 p65p50 p65炎症関連遺伝子 細胞走化性 炎症促進?/炎症抑制?ヒト LILRB2マウス PIRBANGPTL2NF-κBの核内移行IκB分解NF-κBRac活性化Rac1 IκB