ブックタイトル生体イメージングUpdate

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概要

生体イメージングUpdate

124第Ⅲ部 神経機能ダイナミクス─ 神経系の生体イメージングで見える脳・神経のはたらき─13-6 ミクログリアによるシナプスの機能的変化 生体内イメージングによって新たに多くのミクログリアの機能が明らかとなってきたが,詳細なシナプス機能の変化に対する影響や分子メカニズムを調べることは困難な場合も多く,これらのことを明らかにするには,生体外標本を使用した研究も重要である.たとえば,海馬スライス標本にリポ多糖lipopolysaccharide(LPS)を投与してミクログリアを活性化した実験において,興奮性シナプス後電流excitatory postsynaptic current(EPSC)の頻度が増加することが示されている.この応答経路は薬理学的に検討されており,活性化したミクログリアから放出されるATP がアストロサイトに発現しているP2Y 受容体を活性化してアストロサイトからのATP 放出を促進するとともに,アストロサイトからはグルタミン酸が放出される.放出されたグルタミン酸がシナプス前終末に存在する代謝型グルタミン酸受容体metabotropic glutamate receptor(mGluR)を活性化して,神経伝達物質の放出に影響を与えることが明らかとなった28)(図13 - 5). また,末梢神経障害による神経障害性疼痛においても,ミクログリアによってシナプス伝達が変化することが知られている.この場合,脊髄で神経細胞やアストロサイトから放出されたATP によってミクログリアから脳由来神経栄養因子brain derived neurotrophic factor(BDNF)が放出され,神経細胞のKCC2(K+-Cl- cotransporter 2)発現が減少することでCl-の恒常性が変化する.その結果,抑制性伝達の効率を減少させ,神経細胞の興奮性が増加することが知られている29), 30).以上の研究から,ミクログリアがシナプスの可塑性に対しても影響を及ぼすことが明らかとなっている.図13-5 ミクログリアによるシナプス機能の増強リポ多糖(LPS)によるミクログリアの活性化によってATP が放出される.これによりアストロサイトからグルタミン酸が放出され,シナプス前終末の代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR 5)に作用して,興奮性シナプス後電流(EPSC)の頻度が上昇する.ミクログリア(ラミファイド型)ミクログリア(アメボイド型) アストロサイトアストロサイトからもATPが放出され,より活性化するリポ多糖活性化ATPグルタミン酸ATPシナプス前終末EPSC頻度?スパインmGluR5グルタミン酸アストロサイトから放出されたグルタミン酸がシナプス前終末のmGluR5に結合することでEPSC の頻度が上昇する