ブックタイトルRp+2017年春号

ページ
10/12

このページは Rp+2017年春号 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

Rp+2017年春号

036 Vol.16,No.2どんな漢方薬? 漢方薬を大きく効能・効果別に分類したとき,体に不足したエネルギーを補充あるいは代謝を促す「補剤」と呼ばれる一連のグループがあります(詳細はp.33).その代表的な補剤の1つが補中益気湯です.医薬品の王者を意味する「医王湯」という別名もあります. 何らかの病気を患い体調が優れない場合はもちろん,単に寝不足,オーバーワークによる疲労の蓄積などにより,“疲れが取れない”“一時的倦怠感”といった状態には,補中益気湯の効果が期待できます.また補中益気湯は,一時的に体力が落ち,感染症の経過が長引いているとき,漠然とだるいときなどにも使用します.感染症治療では,抗菌薬,抗ウイルス薬などと併せて使用することもあります. 上記のなかには代謝が落ち,全身型の冷え症(全身が冷える,寒がり)を訴える場合も多く,補中益気湯はこのタイプの冷え症にも有効です.患者自身が冷え症であることに気付いていない場合もあり,「お風呂に入ると症状は改善しますか?」という問いかけも有効です.自覚症状のない患者には,さまざまな症状が冷えから生じていること,冷えを治すには生活習慣(常温以上のものを摂取する,厚着する)も大事なことをあわせて指導するとよいでしょう. さらに,補中益気湯の特徴として,人ニン参ジンと黄オウ耆ギを含む漢方薬「参じん耆ぎ剤ざい」であることがあげられます.参耆剤は“体全体を引き締める効果”と表現できます.参耆剤に含まれる人ニン参ジンは主に胃腸(内側)を,黄オウ耆ギは主に皮膚(外側)を調整と,体の内外に大きく役割分担されています.この2つの効果により,胃であれば胃下垂に,皮膚であれば汗腺に効いて多汗症(寝汗)に効果があります.少量の柴サイ胡コを含むことも重要で,抗ストレス作用・抗炎症作用で過剰な交感神経系の興奮を穏やかにする効果が期待できます. また,人参,黄耆に加え升ショウ麻マ(昇堤作用,下がったものを持ち上げる作用)の含有により,子宮下垂への効果が期待され,更年期以降の女性にみられる子宮下垂(軽度),そして産後の子宮下垂にも効果が期待できます.漢方薬を“みえる化”して「使える武器」にする補中益気湯体力を回復する「補剤」ホチュウエッキトウ