ブックタイトル治療 100巻 4月号

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概要

治療 100巻 4月号

Vol.100,No.4〈2018.4〉 373お母さんを守ろう 家庭医は産前家族の応援団てんかん薬を内服している女性は1日4mg,脊柱管閉鎖不全症の家族歴がある女性には,1日1mgなど,リスクに応じて補充を行う必要があり,リスクの低い女性には0.4mgが推奨されている.またこれらは保険適用外であるため,自費処方となる.0.4mgの葉酸を野菜で補充をするとなれば,1日約350gの摂取が必要となる.両手1杯分の緑黄色野菜が100gであり,350g分を現代の多忙な女性が毎日摂取をすることは容易ではないだろう.実際,食事のみで葉酸摂取推奨量を達成できているのは妊婦の13%にすぎない2).アメリカでは1996 年に穀類100g に葉酸0.14mg を添加する法律ができたことで,患者数が50%に減少した3). 葉酸のサプリメントを調べると,葉酸以外のビタミンも含むものが多く出回っており,脂溶性のビタミンAなどが過剰摂取になることが問題である.つわりの予防や治療にビタミンB6を含むマルチビタミンを摂ることもあるが4),葉酸のみを補充するサプリメント(ネイチャーメイドなど)では,1 日約10 円と経済的にもやさしい.補充期間について,妊娠1 ヵ月前?妊娠3ヵ月が標準だが,それ以降の継続期間については諸説あり明確な推奨基準はない.妊娠3 ヵ月以降継続をすると,児の気管支喘息発症率が増える報告がある一方5),児の自閉症発症リスク6)や母親の抑うつを減らす7)などの報告も出てきている. 総合診療医が葉酸の補充を勧める機会はどこにあるだろう? 筆者自身は健診で貧血を指摘され,精査目的に来院する若年女性をよく診療する.貧血と葉酸の関連から赤ちゃんへの影響に話題を広げる方法や,検査や処方前の妊娠確認をきっかけに挙児希望やその準備について話題を広げる方法もある.総合診療医が気軽に,そして当たり前に葉酸摂取を勧められる外来を増やしていけるよう心がけたい.妊婦と喫煙,飲酒 厚生労働省の「健康日本21」の調査では,妊婦の喫煙率は2013 年で3.8% にのぼる.表1に示すように,喫煙は妊婦や胎児,出生後合併症などさまざまな影響を及ぼす.妊娠中に喫煙をしている妊婦では,喫煙をしたことがない妊婦に比べて,新生児の出生体重が125 ?136g減少したという報告もある8).これらの知識は普及しつつあるかもしれないが,「妊娠をしたら自分はタバコをやめられる」と考える若年女性は多いのではないだろうか.禁煙治療を行うとき,ニコチンパッチ(ニコチネルR)などのニコチン代替療法やバレニクリン(チャンピックスR)を使用するが,妊婦授乳婦への効果は否定されており9),そⅡ表1 喫煙による影響疾 患母体への影響不妊,異所性妊娠,自然流産,胎盤剥離,前期破水,早産胎児への影響死産,新生児仮死,低出生体重児,先天奇形出生後児への影響SIDS,気管支疾患,アトピー,低身長,幼少時肥満妊婦の受動喫煙による影響胎児死亡,先天奇形