ブックタイトル治療 100巻 4月号

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概要

治療 100巻 4月号

Vol.100,No.4〈2018.4〉 363特別座談会デス(SLE)などはちょうど妊娠する年齢の女性に多いですけれど,その病態が落ち着いている状態で妊娠することが大切です.また健康面に問題がなくても経済面でとても困窮している状態で妊娠すると,必ず子どもの健康状態に影響します.妊娠しお母さんとなり得る人が,学校・家庭内で受けてきた教育,またその人がどういう生活習慣をもっているかということが,生まれてくる子どもたちを大きく左右するのです.「生活習慣が整っていること」,「教育をしっかり受けて,その教育をもとに行動できるライフスキルをもっていること」というのがとても大事ではないかと思っています.中山:困窮している人につながりやすいのは,やはり救急の医師だと思っています.困窮している人たちは必死で働いているため,病院に来られるのは夜間診療になってしまいます.たとえば救急で小児を診たときに,母子手帳をみるとワクチンを全然打っていないようなことがあり,まずい状態が目にみえてわかることがあります.でもそれを救急で何とかしようというのは難しく,そんなときに家庭医につなげてもらえれば,何かサポートができるのではないかと思います.吉澤:救急と家庭医が近い関係だったら,“こんなときは家庭医”と考えてくれるのではないかと思うので,私たちに何ができるかということを救急の医師に知ってもらわないといけないですね.そういう意味ではやはり他診療科との連携も含めてやっていかないといけないでしょうね.池田:ライフスキルの醸成についてもなんとかしたいので,産婦人科医がときどき学校へ出かけて行って性教育をしますが,それは長い人生のなかの,ほんの1 時間だけです.社会全体としてもっと妊娠するかもしれない女性たちを大事にする制度,仕組みがあったらいいなと思っています.吉澤:私たちのクリニックでも地域の学校から依頼を受けて健康教室をやらせてもらっています.今までは禁煙や飲酒,薬物などの依頼が多かったのですが,最近は性教育についての依頼が増えてきています.対象は中学生が主で,たまに高校からも依頼がきますが,それが彼らの礎にはなるかと思うものの,妊娠は彼らにとっては遠い先のことで,今まさに妊娠を考えている人たちに働きかける場が少ないなと思います. 一人ひとりでも外来で出会った人には情報提供をしたいと思っていますが,池田先生がおっしゃったように,本当はもっと広く世間の人たちがこうしたことを知っている環境が望ましいのだと思うのですが,それにはどうしたらよいか……というところですね. 先日,市の保健師さんたちと接点をもつ機会がありまして,彼らもすごく地域の健康度を上げたいと取り組まれていて,家庭医と親和性のある職種だなと思ったのですが,一方で彼らが何をやっているか私たちも把握しきれておらず,実際はそういった職種の方が地域にたくさんいるということを気づかされました.私たちはクリニックに来た人しか対応できないので,そのような人と協力できれば,クリニックに来ていない人たちに向けたアプローチもできて,地域全体の底上げになると実感しました.中山:私たちの地域では,産後うつの人たちへのサポートが手薄になっています.妊娠中・授乳中であると精神科の先生は「処方はできない」といわれ,うつ病の治療が進まず精神状態がどんどん悪くなるということがありました.家庭医として産前産後のメンタルサポートをしようと取り組んでいます.出産後の母子を診療し続けることは,母親の次の妊娠の相談にもつながるので,いろいろな苦しさを抱えているお母さんたちの受け皿としてサポートできれば思って仕事をしています.