ブックタイトル治療 100巻 4月号

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概要

治療 100巻 4月号

Vol.100,No.4〈2018.4〉 455お母さんを守ろう 家庭医は産前家族の応援団 一方で,患者の多くが薬剤により胎児に悪影響が及ぶ可能性を心配しており,約1/3もの人が「妊娠が判明したときには,医療者に相談せずに吸入ステロイドを中断するだろう」と回答した研究がある2).そのため,患者には喘息のコントロールを良好に維持する大切さを説明し,妊娠前から治療計画を立てておくことが重要だ.2 挙児希望のある人への喘息治療 結論からいうと,挙児希望があることを理由に喘息の薬剤調整を行う必要はなく,通常の管理で問題はない.上述したように,妊娠中の喘息治療の目標は,コントロール状態を良好に保つことで胎児・母体を低酸素状態にさらさないようにすることにあり,薬剤を継続するメリットがデメリットを大きく上回る1).また,妊娠中にコントロール状態が悪化する人もいるため,薬剤治療のステップダウンについては積極的には行わなくてもよい1). 副作用については吸入ステロイド,β刺激薬,ロイコトリエン拮抗薬のいずれも胎児奇形や低出生体重とは関連しないというメタ解析がある1, 2). 研究で最も安全性が示されているのは,吸入ステロイドはブデソニド(パルミコートR),β刺激薬はサルブタモール(サルタノールR),ロイコトリエン拮抗薬はモンテルカスト(シングレアR)であるが,その他の薬剤を使用している場合であっても無理に変更する必要はない1, 2). ステロイド全身投与については,早産,子癇前症,低出生体重と関連するという観察研究がある.口蓋裂については再現性のある結果が得られていない.しかしながら,急性増悪に伴う低酸素血症の方が悪影響を及ぼすため,適応のあるときには通常どおりステロイドを投与する1, 2).うつ病 うつ病は,それ自体が母体の健康, 胎児・新生児の発育,育児の質を少なからず悪化させる.そのため,うつ病を適切に診断することに加え,計画的な妊娠を促して妊娠前にできるだけうつ病を改善させておくことを目指すべきである.治療を行う際には抗うつ薬のメリット・デメリットを伝えるだけでなく,患者の年齢など個別性を十分考慮に入れたうえでshared decision makingに至るよう努める3).また,周囲から得られるサポートの有無を確認しつつ,産婦人科・小児科などの各専門医や行政と情報を共有して支援体制を整えていくことが重要となる.1 抗うつ薬の適応 うつ病が中等症以上であれば薬物療法の積極的な適応となる.寛解後も6 ヵ月程度は再燃予防効果があるため,維持療法として内服を継続するのが望ましい3).薬剤投与は原則として単剤で行う. 軽症のうつ病の場合,薬物療法や認知行動療法を行ってもよいが,ともに有用であるとⅡ