ブックタイトル薬物動態のイロハ

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概要

薬物動態のイロハ

では,トランスポーターの話に移っていきましょう.取り込みトランスポーターは言葉のとおり細胞の外から中へ薬物を取り込む際に働きます.排出トランスポーターは細胞の中から外に薬物を吐き出します( 図4-8 ).トランスポーターの話は吸収でもしていますが,基本的にトランスポーターは膜透過に働いており,消化管から体内への移行を吸収,血液から組織への移行を分布,胆汁や尿に移行することを排泄と区別しているにすぎません.この章は分布ですので,血液から組織への移行でのトランスポーターの働きについて解説します.前述しましたが,血管から組織への移行で大きな違いがあります.脳,胎盤,精巣といった重要な組織では血管の細胞が密に結合しており,水溶性の高い物質は脳へ移行しません.脳に移行するには,血管細胞を通過しなければなりません. 図4-9 に示すように,脂溶性が高い薬物は単純拡散で膜透過します.しかし,水溶性が高い薬物は膜透過できません.糖やアミノ酸も水溶性が高いので膜透過しませんが,トランスポーターにより脳に移行します.アミノ酸トランスポーターを介してL-DOPA やα - メチルドパといった薬物は脳へ移行します.血管内皮にトランスポーターが存在し,脳に運んだり,排出したりしています.血液側にP-gp やBCRP が発現しており,これらの排出トランスポーターの基質になる薬物は,脳へ移行しません.脳で効かせたい薬物は,脳に行かないと困りますので,P-gp の554 分 布図 4-8 トランスポーターの働き脂溶性細胞膜(脂質二重層)取り込み細胞外 排出細胞内取り込みトランスポーター排出トランスポーター