ブックタイトル図解 薬害・副作用学 改訂2版

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概要

図解 薬害・副作用学 改訂2版

190 血液系への代表的な副作用には,無顆粒球症・顆粒球減少症,再生不良性貧血,薬剤性貧血,血小板減少症,血栓性血小板減少性紫斑病,播種性血管内凝固症候群,血栓症・血栓塞栓症があり(図2-5),原因としては,薬剤が直接血液毒性をもつもの,免疫反応を介するものがある.ラテンアメリカの報告では,人口100 万人に対して無顆粒球症は約0.4 人,再生不良性貧血は約1.6 人とまれな合併症であるが,無顆粒球症の死亡率は3.5?16%と死亡率の高い合併症である.1. 無顆粒球症(agranulocytosis)・顆粒球減少症(granulocytopenia) 無顆粒球症は血液中の顆粒球が500/μL 以下の状態である.顆粒球症を起こす代表的な治療薬として,抗甲状腺薬,抗血小板薬,サルファ薬などが知られている.1)症状 当初,無顆粒球症による自覚症状はほとんどみられず,血液検査を行った際にまったく自覚症状がないか,あるいは感染症状が出て受診した時に血液検査を行って初めて発見されることが多い.薬剤開始後数日から数週で突然発症する.顆粒球数が500/μL 以下となると重症感染症罹患の確率が高まり,100/μL 以下となると重症感染症が必発する.重症感染の併発により,突然発症する高熱,悪寒,戦慄,発熱,咽頭痛などの症状が起こる.感染症の種類,感染部位によりそれぞれの症状を起こし,敗血症に進展すると,高熱に加えて意識障害や腎機能障害などの全身性の二次的臓器症状を起こす.薬剤性血液障害のうち,最も死亡率が高く,重症の合併症である.2)発症機序 顆粒球の破壊・崩壊亢進によるもの,特異的に顆粒球の産生を低下させる中毒性障害機序によるもの,免疫性障害機序によるものがある(図2-6).3)原因薬剤(表2-5)a抗甲状腺薬:プロピルチオウラシル,チアマゾールは,サイログロブリンのチロシン残基のヨウ素化を阻害して甲状腺ホルモンの産生を抑制する.薬剤による顆粒球減少症のうち7?23%を占め,投与例の0.2?0.5%に無顆粒球症が起こる.通常,治療開始3ヵ月以内に突然38℃以上の発熱,咽頭痛で発症することが多い.主に免2 薬剤性血液障害