ブックタイトル図解 薬害・副作用学 改訂2版

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概要

図解 薬害・副作用学 改訂2版

111 薬害の歴史的変遷 サリドマイド事件は,鎮静・催眠薬サリドマイドを服用した妊婦の胎児に四肢の先天異常を主徴とするサリドマイド胎芽病と呼ばれる障害が引き起こされた世界的な薬害である.この事件は,わが国の薬事制度の根幹を揺るがした大きな薬害事件であり,現在の薬事制度導入のきっかけとなった.医薬品に副作用があるということは,ペニシリン事件などで医学関係者や国民も知っていたが,医薬品の副作用として服用した本人ではなく胎児に先天異常を起こす例は知られておらず,医学関係者や国民にとっては極めてショッキングな薬害事件であった.1. サリドマイド胎芽病とは サリドマイド胎芽病では,子宮内でサリドマイドに曝露することによって,種々の先天異常を引き起こす.最も代表的なものは,上肢や大腿がなく肩から直接前腕や下腿が出ているあざらし肢症(フォコメリア)に代表される体肢部分欠損である(図1-2).その程度も無肢症,痕跡的体肢,小肢症までさまざまである.また,体肢部分欠損以外にも,外耳および内耳の欠損,心奇形,泌尿器系や消化器系の異常などもみられる.サリドマイドに対して最も危険な時期は受精後24?36 日であるが,この時期はヒトの体肢発生に極めて重要である.サリドマイドによる先天異常の発症機構については,現在になっても明らかになっていない.2. 事件の経緯(表1-3) サリドマイドは,旧西ドイツで開発され,鎮静・催眠薬「コンテルガン」としてサリドマイドによる胎児先天異常Ⅲ (サリドマイド事件)図1-2 サリドマイド胎芽病サリドマイド胎芽病の代表的症状は,上肢や大腿がなく肩から直接前腕や下腿が出ているあざらし肢症(フォコメリア)に代表される体肢部分欠損である.