ブックタイトル図解 薬理学

ページ
22/24

このページは 図解 薬理学 の電子ブックに掲載されている22ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

図解 薬理学

2222章 精神・神経系の薬理2239 パーキンソン病と治療薬 レボドパの副作用としては,末梢組織で変換されたドパミンやノルアドレナリンによって起こる心悸亢進や不整脈(頻脈),延髄のCTZ 領域(chemoreceptor triggerzone)に分布するドパミンD2 受容体の刺激よって起こる悪心・嘔吐,血管平滑筋のD1 受容体刺激によって起こる起立性低血圧などがあげられる(図2-85).重大な副作用としては,幻覚,妄想,せん妄などを呈するレボドパ精神症状や,不随意運動障害であるレボドパ誘発ジスキネジアなどがある.また,急な減量や休薬によって悪性症候群が誘発される場合があるので,注意を要する. さらに,レボドパ療法を長期継続した場合の問題点として,レボドパ効果の日内変動があげられ,Wearing-off 現象(薬効の持続時間が短縮する),On/off 現象(レボドパの投与時間に関係なく,症状が改善したり,悪化したりと,効果が変動する),Noon/delayed-on 現象(No-on:効果が現れない,delayed-on:効果発現が遅い)などが現れる場合がある(図2-85).これらの薬効発現の変動には,消化管におけるレボドパの吸収障害や,疾患の進行状態などが関与していると考えられている.2)芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)阻害薬 レボドパは通常,末梢性AADC 阻害薬であるカルビドパcarbidopa(メネシットR,ドパコールR,ネオドパストンR)あるいはベンセラジドbenserazide(イーシー・ドパールR,ネオドパゾールR,マドパーR)との合剤として使用される.これは,レボドパの脳への移行率が非常に低い(1%以下)ためである.カルビドパあるいはベンセラジドは,それ自身は血液脳関門を通過しないので,末梢組織においてのみAADC を阻害し,レボドパからドパミンへの変換を阻害する(図2-86).これにより,レボドパの末梢組織における消費を抑え,血中濃度を上げて,脳内への移行を促進することができる(エコノマイズ効果).もう1 つの利点は副作用の軽減であり,末梢組織におけるドパミンやノルアドレナリンへの変換を防ぎ,これに起因する悪心・嘔吐,起立性低血圧,不整脈などの副作用を軽減することができる(図2-86).配合比はレボドパ:カルビドパ= 10:1,レボドパ:ベンセラジド= 4:1で,製剤化されている.2.モノアミン酸化酵素-B(MAO-B)阻害薬 モノアミン酸化酵素monoamine oxidase(MAO)にはMAO-A とMAO-B の2 種のアイソザイムがあり,MAO-A は主としてセロトニンおよびノルアドレナリンを,MAO-B はドパミンを,酸化的脱アミノ化反応により代謝する.このため,パーキンソン病の治療においては,MAO-B 阻害薬が使用される.セレギリンselegilineはMAO-B に対する選択的阻害作用をもち,線条体でのドパミン代謝を抑制することによって,ドパミン作動性神経活動を促進する(図2-84,2-87).臨床的には,レボドパ含有製剤と併用され,レボドパから生成されるドパミンの分解を防いで,レボドパの治療効果を増強,延長する. 副作用としては,悪心・嘔吐,めまい,起立性低血圧のほか,重篤なものとして図2-87 MAO-B 阻害薬の特徴レボドパ治療において,十分な効果が得られないパーキンソン病症状嘔吐,めまい,起立性低血圧<重大>幻覚・妄想,錯乱,悪性症候群効 果副作用NCH3CH3Hセレギリン レボドパ含有製剤と併用図2-86 末梢性AADC 阻害薬およびCOMT 阻害薬によるレボドパ作用の増強起立性低血圧悪心・嘔吐不整脈レボドパドパミン3-O-メチルレボドパ ドパミンCOMTAADC脳末梢性副作用の軽減抗パーキンソン病作用末梢消費の軽減(エコノマイズ効果)レボドパ末梢性AADC 阻害薬カルビドパベンセラジド末梢性COMT 阻害薬エンタカポンAADCOCOOHNHHNNHHOHONH2H2NH3C芳香族L- アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬(AADC 阻害薬)カルビドパHOHOOHOHベンセラジド図2-85 ドパミン前駆物質の特徴通常,カルビドパあるいはベンセラジドとの合剤で使用筋固縮・無動に著効 振戦も改善消化器系:嘔吐,食欲不振循環器系:起立性低血圧,不整脈(頻脈)精神症状:<重大>興奮,不穏,不眠,幻覚,妄想神経症状:<重大>異常不随意運動(ジスキネジア),悪性症候群効 果副作用【長期使用時の問題点】Wearing-off 現象:レボドパの作用持続時間が短縮.投与間隔を短くしなければ,症状が悪化するOn/off 現象:投与時期に関係なく,症状が改善したり,悪化したり変動するNo-on/delayed-on:服用後に効果が見られなかったり,作用発現が遅かったりするレボドパHO COOHHONH2