ブックタイトル図解 薬理学

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概要

図解 薬理学

218 2199 パーキンソン病と治療薬A パーキンソン病の病態生理と薬物治療 高齢者に多い神経変性疾患にパーキンソン病がある.わが国では10 万人当たり100~150 人程度の有病率であり,50 歳前後より発症し,加齢に伴って増加する.パーキンソン病患者は錐体外路系神経路に関連する運動障害(錐体外路系運動障害)を呈し,代表的な症状には動作緩慢,無動,静止時の振戦,筋固縮(筋強剛),姿勢反射障害などがある(図2-81).パーキンソン病の症状は徐々に進行し,片側性から両側性へと運動障害が進み,Yヤールahr 重症度のステージⅢ以降では日常生活が著しく障害される(図2-81). パーキンソン病においては,中脳の黒質から大脳基底核の線条体へ投射する黒質-線条体系ドパミン作動性神経の変性が起こっており,これが錐体外路系運動障害の原因と考えられている(図2-82).このため,パーキンソン病では脳内のドパミンが枯渇状態にあり,疾患の進行に伴って,ノルアドレナリンなども欠乏してくる.パーキンソン病の病因は未だ不明であるが,α-シヌクレインやパーキンといったタンパク質の遺伝子異常や,内因性あるいは外因性毒素による神経障害が関与していると考えられている(図2-82). パーキンソン病における脳神経の活動変化を図2-83 に示す.大脳基底核に位置する線条体は錐体外路系運動機能を調節する中枢核であり,通常,黒質-線条体系ドパミン作動性神経によって抑制的な制御を受けている.一方,パーキンソン病では,ドパミン作動性神経の変性に伴って抑制制御が減弱し,線条体神経(GABA 作動性神経,アセチルコリン作動性神経など)の活動が亢進してパーキンソン症状が惹起される(図2-83).このため,パーキンソン病患者の線条体では,ドパミン作動性神経活動の低下とアセチルコリン作動性神経活動の上昇が起こっている.パーキンソン病の治療では,これらの病変を改善するために,ドパミン作動性神経活動を促進するドパミン神経促進薬,あるいは過剰に興奮したアセチルコリン作動性神経の活動を抑制する抗アセチルコリン薬が用いられる(図2-83).また,パーキンソン病の進行例では,脳内のノルアドレナリンの欠乏によるすくみ足や立ちくらみなどの症状が現れる場合があり,これらの症状に対してはノルアドレナリンの補充療法が行われる.B パーキンソン病治療薬の分類・種類 ドパミン神経促進薬としては,ドパミンの補充療法を目的に投与される ①ドパミン前駆物質のレボドパが繁用される.また,ドパミンあるいはレボドパの代謝を阻害してドパミン作動性神経活動を促進する ②モノアミン酸化酵素-B(MAO-B)図2-81 パーキンソン病の主な症状とYahr の重症度分類動作緩慢無動振戦(ふるえ)Yahr の重症度分類姿勢反射障害ステージ Ⅰステージ Ⅱステージ Ⅲステージ Ⅳステージ Ⅴ一側性障害(振戦,筋固縮)軽症例両側性障害(振戦,筋固縮,無動)明確な姿勢変化日常生活やや不便明確な歩行障害突進現象方向変換の障害日常生活動作の障害日常生活動作の著明な低下労働能力の消失車イスによる移動寝たきり,要介護状態筋肉のこわばり筋固縮図2-82 脳内ドパミン作動性神経とパーキンソン病黒質変性ドパミン作動性神経大脳辺縁系脳下垂体病因α- シヌクレイン,パーキンなどの遺伝子変異,神経毒素 ?錐体外路系運動障害( 無動,筋固縮,振戦など)大脳皮質 線条体② ① ③④パーキンソン病(黒質- 線条体系ドパミン作動性神経の変性)①黒質-線条体系経路 錐体外路系運動機能の調節 ⇒ パーキンソン病と関連 ②中脳-辺縁系経路③中脳-皮質系経路精神機能の調節 ⇒ 統合失調症と関連④隆起-漏斗系経路 プロラクチン分泌の調節脳内ドパミン作動性神経系(上図①~④の経路)パーキンソン病と9 治療薬