精神科臨床薬学

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精神科臨床薬学

292 向精神薬の分類と作用メカニズムの亢進が関与し,陰性症状や認知機能障害の発現には中脳皮質神経路のドパミン作動性神経機能の低下が関与していると考えられている(図1-5).抗精神病薬は,ドパミン作動性神経に存在するドパミンD2受容体を遮断することによって抗精神病作用(陽性症状の改善効果)を発揮し,臨床有効用量とドパミンD2受容体拮抗作用との間には相関性があることが示されている.PET(ポジトロン断層法)を用いた脳内ドパミンD2受容体占拠率に関する研究において,ドパミンD2受容体を65%以上遮断すると臨床効果が認められ,78%以上遮断すると副作用が発現すると考えられている.このドパミンD2受容体を約60~80%遮断する用量が抗精神病薬の至適用量と考えられており,クロルプロマジン換算量として約300~600 mgと推測されている. ドパミン受容体はD1ファミリーとD2ファミリーに分類され,D1ファミリーにはD1とD5,D2ファミリーにはD2,D3,D4がある(表1-15).D1ファミリーは興奮性グアノシン5’-三リン酸(GTP)結合蛋白質(G蛋白質)Gsを介してアデニル酸シクラーゼを促進的に制御し,D2ファミリーは,抑制性G蛋白質Giを介してアデニル酸シクラーゼを抑制的に制御している(表1-15).各種抗精神病薬の神経伝達物質受容体に対する親和性の一覧は表2-5(p.80)を参照のこと.図1-5 脳内ドパミン作動性神経路(総合失調症)中脳皮質神経路ドパミン活動低下陰性症状認知機能障害大脳皮質線条体黒質(A9)腹側被蓋野(A10)黒質線条体神経路正常中脳辺縁系神経路ドパミン過活動漏斗下垂体神経路陽性症状正常下垂体視床下部(A12)