ブックタイトルファーマシューティカルケアのための医療コミュニケーション

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ファーマシューティカルケアのための医療コミュニケーション

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ファーマシューティカルケアのための医療コミュニケーション

臨床編Ⅱ.患者理解202くから訪れ,次第に無理がきかなくなる.これまでふつうにできたことができなくなっていくという体験が積み重なって,活動範囲や日常生活が制限されるようになっていく.また,歳をとれば容姿が衰えて当然で何を今更と感じるかもしれないが,高齢期だからこそ自己像とのギャップを感じてしまう寂しさがあることを心得ておく必要がある.多くの人は加齢という現実を日々の暮らしの中で少しずつ受け入れていくが,日常生活に他人の手を借りなければならない機会が増えるに従い,ともすれば遠慮からの我慢や,弱みを見せまいと援助の手をことさら拒むこともある.外部に対するこうした「構え」の姿勢は,決して不思議なことではない.老いることのつらさを感じ取ることが,その人を大切にすることにつながる. ②関係性の喪失:「親しい人を失う」という体験は,どの世代においてもつらいものだが,高齢期においては心のよりどころの喪失,時には社会とのつながりの喪失を意味する.また,生活環境の著しい変化をもたらすため十分な配慮が必要となる. ③役割の喪失:人は役割を通して自分の存在意義を確認する事が多い.定年退職,子供の自立など,社会的な役割の変換を強いられた場合,順応する時間も要する.家族構成の影響 人間は社会的存在と言われ,自分以外の人々とふれあって生きており,中でも最も基本的な単位が家族である.平成24年,65歳以上の人がいる世帯(福島県を除く)は43.3%で,その内の30.3%が夫婦のみ,23.3%が高齢者の独居という構成になっており,核家族化や少人数化が進展していることがわかる(国民生活基礎調査).昭和30年には5人以上の家族が全体の半数であったことから,3世帯家族で育った高齢者も多く,家族への帰属意識は根強い.「子ども達の面倒にはならない」と言いながらも,「できれば身内に世話されたい」という葛藤を抱えている場合も少なくない. 家族構成の少人数化は在宅における介護の人手の足りなさにつながり,夫婦世帯であれば自分も病いを抱えながらの老老介護という状況に直面し,在宅介護の選択は家族に大きな負担を強いている.病状が不安定であればなおさらで,「夜中に何かあったらどうしよう」といった緊張感とも絶えず隣り合わせにある.このため,家族も話し相手を求めている場合が多い.時には,「介護が大変でつらい」と医療者に悩みを打ち明けられることもあるだろう.在宅医療で頑張っている家族は,住み慣れたわが家で過ごさせてあげたいという強い思いを持っている.医療サービスに不満をぶつけられても,自分が否定されたと構えるのではなく,率直に伝えてくれた感謝の思いで受け止める.もし親や兄弟が病気になったら何を望むかと,相手の立場に立って考えることも必要である.家族の思いを傾聴し,その頑張りに対して声をかけることが,明日の介護を支える活力となりうることもある.