ブックタイトルファーマシューティカルケアのための医療コミュニケーション
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ファーマシューティカルケアのための医療コミュニケーション
7.言語・非言語コミュニケーション49立つ.そのため両者のそれぞれの文化的な背景により言語の解釈が異なるため,誤解,食い違いが生じる可能性がある.例えば,薬剤師が「この薬は食間にのんでください」と説明したところ,患者は食事中に薬をのまなくてはいけないと勘違いした事例など,言語を理解する能力による間違いは少なくない.「少々お待ちください」といわれた時の「少々」は,大多数の人が1?5分程度と認識しつつも,実際には1時間以上も待たされうんざりした経験も少なくないであろう.このように「多めのお水でおのみください」など主観的な言語の使用は,人によって誤解を招きやすい言語表現となる. 国立国語研究所「病院の言葉」委員会では,医療者の説明の言葉がわかりづらく,患者の理解と判断の障害となっていることを指摘し,わかりやすく伝えるための工夫を提案している.患者に言葉が伝わらない理由は, ①患者に言葉が知られていない(例:イレウス,誤嚥,MRSAなど) ②患者の理解が不確か(例:インスリン,ウイルス,ステロイドなど) ③患者に理解を妨げる心理的負担がある(例:悪性腫瘍,治験,化学療法など) がある.図1に具体的な対応策を明示したが,特に薬の説明の場合には,患者が理解しづらい用語であるかどうかを確認し,わかりやすい説明を心掛けたい. 患者に用語の意味が伝わりにくい例として「ステロイド」がある.「ステロイド」は,言葉自体の認知率は93.8%であるが,意味を理解している人は44.1%とかなり低下する.患者に多くみられるステロイドの誤解は,①筋肉増強に使用する「蛋白(たんぱく)同化ステロイド」である(13.1%),②塗り薬の場合,一度使うとやめられなくなる(13.8%),③吸入ステロイド薬のように副作用が極めて弱いものにも,ステロイド剤の注射やのみ薬のときと同程度の副作用がある(18.3%)ことが挙げられる.「ステロイド」のように理解度の低い言葉の場合には,単に「ステロイド」と伝えるだけでは相手に伝わらないため,「炎症を抑えたり,免疫の働きを弱めたりする薬で,もとは人間のからだの中で作られるホルモン」と補足説明するなど,相手の理解度に合わせた説明が望まれる.図1 「病院の言葉」をわかりやすくする工夫の類型 (国立国語研究所「病院の言葉」委員会)言葉が伝わらない原因分かりやすく伝える工夫①患者に言葉が知られてい ない②患者の理解が不確か(1)意味がわかっていない(2)知識が不十分(3)別の意味と混同類型B 明確に説明する(1)正しい意味を(2)もう一歩踏み込んで(3)混同を避けて③患者に心理的負担がある心理的負担を軽減する言葉遣いを工夫する類型A日常語で言い換える類型C重要で新しい概念を普及させる