ブックタイトル処方Q&A 循環器疾患

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概要

処方Q&A 循環器疾患

97 第3 章 心不全?強心作用と末梢の血管拡張作用があるため,inotrope(強心薬)+dilator(拡張薬)=inodilatorと呼ばれることがある.PDEⅢ阻害薬はカテコラミンと異なり,β1受容体を介さず強心作用を発揮し,薬剤耐性が生じにくく,しかも,心筋酸素消費量を増加させることなく心拍出量を増加させる特性を持つ.心不全で強心薬(カテコラミン,PDE Ⅲ阻害薬)が必要な理由一般的に,急性心不全の程度が重症でなければ利尿薬や血管拡張薬,hANPを併用することにより病態の改善が期待できる.レニン―アンジオテンシン―アルドステロン(RAA)系などの増悪因子の悪化で陥ったクリニカルシナリオ(CS)1の急性心不全やCS2程度の症例であれば,十分な酸素化を図り,一時的にhANPや利尿薬を追加すれば改善に導くことができる.しかしながら,CS3に分類されるような急性心不全症例,特に収縮能が低下した重症心不全症例には,型通りのhANPや利尿薬の追加では症状が改善しないことが多い.極端に収縮能が低下した心臓では,増悪因子の悪循環を断つために使用するhANPや利尿薬投与で,かえって血圧低下や末梢循環不全を招いてしまい,治療介入と裏腹に状態が悪化するケースも少なくない.よって,このような収縮能が低下した心不全症例に対して強心薬が必要となる.強心薬の心不全治療における位置づけ強心薬は,心筋の収縮能を上げて心拍出量を増加させる働きを持つ.一方では心筋酸素消費量を増加させ,不整脈を誘発する副作用を併せ持つ.また,長期の強心薬使用はさらなる心筋障害をもたらしてしまい,心不全患者の長期予後を大きく損なってしまう可能性がある.強心薬は,いわば諸刃の剣であるといえる.このことが原因か,あるいは重症心不全領域の臨床試験の複雑さからか,急性心不全治療において,末梢低灌流の改善や血圧カテコラミンβ1受容体への親和性(Kd,nM)β2受容体への親和性(Kd,nM)α1 受容体への親和性(Kd,nM)イソプロテレノールを1とした時のβ1作用の強さドブタミン470 570 130 0.5アドレナリン20 20 160 1.0ノルアドレナリン20 400 200 1.0イソプロテレノール20 20 >10,000 1.0表1 カテコラミンの薬理学的特徴ドブタミンアドレナリンノルアドレナリンイソプロテレノールミルリノン心拍数・収縮性増加高用量で軽度増加高用量で軽度増加増加増加心拍出増加増加全身血管抵抗の変化により変動増加全身血管抵抗の変化によるが基本増加全身・肺血管抵抗低下著明に上昇著明に上昇低下低下血圧上昇もあれば低下もある上昇上昇基本上昇全身血管抵抗の変化によるが基本増加心筋酸素消費量増加増加増加増加変化しない表2 代表的な強心薬・昇圧薬の心・血管への作用