ブックタイトル処方Q&A　糖尿病

概要

処方Q&A　糖尿病

157第5 章　その他の糖尿病治療薬?糖質吸収を遅延させ，食後高血糖を改善する薬剤です（詳細はQ48参照）．グリニド薬と異なりインスリン分泌には直接作用しないため，単独での低血糖リスクは低く，体重を増加させないこと，食後の高インスリン血症を抑制することが特徴です．ただし，α-グルコシダーゼ阻害により未消化の糖質が大腸に達した結果，腹部膨満，放屁増加，下痢などの腹部症状がしばしばみられます．したがって，開復手術や腸閉塞の既往のある場合には注意が必要となります．このように両者は作用機序が異なるため，グリニド薬とα-グルコシダーゼ阻害薬を併用することで，さらなる効果が期待されます．α-グルコシダーゼ阻害薬内服中の症例にミチグリニドを追加投与することにより，食後血糖のほか，空腹時血糖，HbA1cやグリコアルブミンの低下が認められました（図1, 2）4）．また，グリニド薬を増量した場合と比較して，α-グルコシダーゼ阻害薬との併用療法では体重増加作用が少ないことも報告されています5）．したがって，単剤で食後高血糖の改善が不十分な場合には，併用療法による効果が期待できる可能性があります．（橋本直子／田中知明／横手幸太郎）　文献1） Decode Study Group, t.E.D.E.G., Glucose toleranceand cardiovascular mortality : comparison offasting and 2-hour diagnostic criteria. Arch InternMed, 161 : 397-405, 2001.2） Nakagami T, et al : Screen-detected diabetes, hypertensionand hypercholesterolemia as predictors ofcardiovascular mortality in five populations of Asianorigin : the DECODA study. Eur J Cardiovasc PrevRehabil, 13 : 555-561, 2006.3） Kawamori R, et al : Efficacy and safety of repaglinidevs nateglinide for treatment of Japanese patientswith type 2 diabetes mellitus. J Diabetes Investig,3 : 302-308, 2012.4） Ono Y, et al : Mitiglinide/voglibose fixed-dose combinationimproves postprandial glycemic excursionsin Japanese patients with type 2 diabetes mellitus.Expert Opin Pharmacother, 14 : 361-370, 2013.5） Katsuno T, et al : Comparison of efficacy of concomitantadministration of mitiglinide with voglibose anddouble dose of mitiglinide in patients with type 2diabetes mellitus. J Diabetes Investig, 2 : 204-209,2011.図2 ミチグリニドとボグリボースの併用療法の効果＊ P ＜0.05 VS ベースラインとの比較P ＜0.05 VS ミチグリニド単独との比較 （文献4より引用，一部改変）1201401601802002202400 30 60 90 120 180（mg/dL）（分）＊＊＊ ＊＊＊＊＊＊＊204060800 30 60 90 120 180（μlU/mL）（分）＊＊0血糖値血中インスリン濃度ベースラインミチグリニド単独投与ミチグリニド＋ボグリボース併用療法図1 食事負荷試験における血糖とインスリンの変化（文献4より引用，一部改変）＊ ＊＊120140160130150（mg/dL）＊6.87.27.67.07.4（%）＊＊1517191618（%）＊20ベースラインミチグリニド単独投与ミチグリニド＋ボグリボース併用療法2週間ミチグリニド＋ボグリボース併用療法6週間血糖値グリコアルブミンHbA1c