ブックタイトル処方Q&A 糖尿病

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概要

処方Q&A 糖尿病

9035 速効型インスリンと超速効型インスリンの使い分けを教えてください.はじめに1922年から臨床応用が始まり,多くの1型糖尿病患者を救ったインスリン製剤は,当初は速効型インスリンのみでした.効果の持続が長いインスリンは1946年に開発された中間型インスリンからです.インスリンは当初,ウシの膵臓から抽出されていましたが,抗インスリン抗体の問題を生じ,よりヒトに近いブタから純度の高いモノコンポーネントインスリンを得る時代を経て,1980年代に遺伝子組み換え法によるヒトインスリンが誕生しました.1990年代には,皮下からの吸収を早めた速効型インスリンアナログ(超速効型インスリン)が開発されました.速効型インスリンと3 種類の超速効型インスリンとの構造の違いヒトインスリンはアミノ酸が鎖状につながったペプチドで,A鎖が21,B鎖が30の計51のアミノ酸から構成されています.このアミノ酸残基の一部を置換し,ヒトインスリンと同等の生理作用を有しながら異なる薬物動態を呈する超速効型インスリンが開発されました.これは,アナログすなわち“似せたもの”と呼ばれています.インスリンは,注射される時は六量体を形成し,皮下で2量体,単量体と変化して吸収されていくと考えられています.ヒトインスリンのアミノ酸のうち,B鎖28位のプロリンと,その前後のアミノ酸はインスリン分子同士が重合する2量体形成に関与していることが知られています.実際,IGF-1分子はインスリン分子によく似ていますが,28位と29位のアミノ酸残基の配列はインスリンと逆(Lys-Pro)で2量体を形成しにくくなっています.この特性を取り入れたインスリンアナログがインスリンリスプロであり,皮下注射後は速やかに単量体のインスリンへと解離し吸収されることで,皮下投与から血中移行までの時間が短縮されました.これに追随して,インスリンアスパルト(28位のProをAspに)が開発されました.さらにインスリングルリジンは,28位を変更するだけでなく,六量体形成に関与する3位のアミノ酸残基も変更しています(図1)1).インスリンアナログは,皮下投与から血中移行までの時間を短縮することでより速やかな作用発現を実現したため,わが国ではヒトインスリンの“速効型”に対して“超速効型”と呼ばれています.ただし,海外ではrapid analogue(RA)とされています.インスリンアナログはヒトインスリンと比較して下記のような薬理的特性があります.①効果発現が早い(皮下投与後10 ~ 20分)② 血中インスリンのピーク形成が早い(30 ~3時間)③血中からの消失が早い(3~5時間)以上の特徴より,ヒトインスリンと比較して生理的な食後の末梢血中でのインスリン追加分泌動態により類似したパターンを得ることができると考えられています.